マンション価格の底値はどこ?――不動産鑑定のプロに聞いてみた大出裕之の「まちと住まいにまつわるコラム」(1/2 ページ)

» 2009年01月09日 07時00分 公開
[大出裕之,Business Media 誠]

「まちと住まいにまつわるコラム」とは?

「HOME'Sまちと住まいの研究室」編集長、大出裕之氏が“まちと住まい”をテーマに執筆するコラム。気になるニュースや事柄、新商品や新サービスなどを取り上げ、住まいの専門家ならではの視点で語ります。

大出裕之(おおいでひろゆき):情報媒体や、PC・IT系メディアの編集を長年勤める。ついでにボランティアとして、東京商工会議所のプロジェクトXSHIBUYAを手伝い中。途中ネットベンチャーの起業などを経て、現在は住宅・不動産情報ポータルサイトHOME'Sにて、まちと住まいについてのWebメディアの運営や冊子の刊行などを行っている。「HOME'Sまちと住まいの研究室」編集長。


 不動産不況が深刻化している昨今、「御社も大丈夫ですか?」とよく聞かれる。不動産業界ではない人に正確な表現で現状をお伝えするなら、「不動産業界のいくつかの分野では大変なことになっていますし、弊社も部分的には影響を受けていますよ」ということになる。

 しかしながら、賃貸や中古売買の手数料、賃貸物件の管理料が収入のほとんどを占めている不動産会社であれば、今回の不況の影響はそれほど大きくはない。もちろん、中古物件取得者のローン審査を心配する必要はあるだろうが。

 もし、Business Media 誠読者のみなさんが1人暮らしの賃貸ユーザーであれば、逆にメリットを享受できるかもしれない。地価が下がれば固定資産税も下がるので、家主は家賃を下げやすくなるからだ。ただ、家族向けの賃貸に住んでいる場合は、新築購入予定層が中古や賃貸を選択するようになるので、良い条件の物件は少々競争が激しくなることは考えられる。

 不況であることは間違いないので、政府は史上最大の住宅ローン減税を打ち出して景気浮揚に躍起になっている。個人消費という観点で言えば、住宅は多くの人にとって人生最大の買い物であるため、影響力は小さくない。だが、優遇措置がとられるとしても、消費者としてより気になるのは「買い時が来ているのか?」「来ていないとすると、いつごろ来るのか?」といったことだろう。

 そこで今回は、中古物件や土地の価格の鑑定業務、市場動向調査などを行っている東京カンテイ市場調査部の中山登志朗上席主任研究員に話を聞いてみた。現在、新築分譲マンションの在庫が積み上がっており、売り出し価格より成約価格が下がっているという声も聞こえてくる。不動産価格はどこまで下がるのだろうか? そしていつごろ底値になると想定されるのだろうか?

不動産市況の底値は?

東京カンテイ市場調査部の中山登志朗上席主任研究員

 「首都圏では2007年の新築マンション平均分譲価格から、2008年の10月までに約1割値下がりしています。しかし、2007年は2006年より約2割値上がりしているので下値余地(したねよち)があり、マーケット全体では今後も緩やかに値下がりしていくものと思います。ただ、2006年までの4、5年は新築分譲マンションの価格がほぼ横ばいだったので、その価格帯が大底圏だと考えています」

 新築マンションの売れ行きが悪くなるにつれ、中古マンションを購入する動きが出てきているのも事実。中古マンションの市場はどうなっているのだろうか。

 「中古マンションの流通価格は、新築マンションの分譲価格と連動しています。そのため、新築同様に価格は下がり始めています。新築のマーケットが底を打てば、続いて底を打つのではないでしょうか」

 2009年の新築マンションは首都圏で約4万5000戸分譲されるのに対し、中古マンションは首都圏で年間のべ23万〜25万戸流通している。将来的に売却することを考えると、どういった物件が値下がりしにくいのだろうか。

 「都心なら築30年以上の物件でも、高値で売られています。古いものでもそれなりの価値がついて流通するわけです。1981年の建築基準法改正以前の耐震設計基準で建てられた物件だと一抹(いちまつ)の不安がありますので、地盤やマンションの形状と合わせて1981年6月以降の建築確認申請物件であることを確認すれば良いでしょう」

 「かつては“終(つい)の住み家”という意識で家を購入していましたが、現在では特にマンションで、ライフスタイルや家族構成が変わるタイミングで買い替えたり貸したりといった用途転換をする人が増えてきています。その際、いかに売りやすいか、または貸しやすいか、といった出口戦略的な要素が重要となるでしょう」

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