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» 2009年01月06日 07時00分 UPDATE

山口揚平氏が教える“会社の本質”:ミクシィの株は高い? 安い? 企業価値で考える (1/2)

2006年9月に上場したミクシィは売上を一気に増加させ、2008年3月31日の時価総額は約1500億円。この価格を見て高いと思うか? それとも安いと思うか? ブルー・マーリン・パートナーズの山口揚平氏は「それを判断するのには、ミクシィの企業価値を見極める必要がある」と指摘する。

[土肥義則,Business Media 誠]

山口揚平(やまぐち・ようへい)

早稲田大学政治経済学部卒。トーマツコンサルティング、アーサーアンダーセン、デロイト トーマツ コンサルティング、アビームM&Aコンサルティング シニア・ヴァイス・プレジデントを経て、現在はブルー・マーリン・パートナーズの代表。主な著書に『株M&A大化け相場に乗り遅れるな!』(日本実業出版社 2005年)、『なぜか日本人が知らなかった新しい株の本』(ランダムハウス講談社 2005年)、『世界を変える会社の作り方』(2008年、PDF)、『デューデリジェンスのプロが教える 企業分析力養成講座 会社の本質を見抜く9つのポイント』(日本実業出版社)など。Business Media 誠では2007年4月〜12月まで連載「時事日想」を執筆


 2006年9月にマザーズ市場に上場したミクシィ。ご存じの人も多いだろうが、国内最大のSNS「mixi」と求人Webサイト「Find Job!」を運営している。売上の対前年比は2007年度が177%増、2008年度が92%増と一気に伸ばしており、2008年3月期(3月31日時点)の時価総額は約1500億円。

 この1500億円の時価総額は高いのか、それとも安いのか? それを判断するため、ブルー・マーリン・パートナーズの山口揚平氏はミクシィの企業価値を分析した。

 →スターバックスに“死角”はあるのか? ポイントは米国本社との関係(前編)

 →よいベンチャーを見抜く4つのポイント(中編)

ミクシィの企業価値を2つの点から算出

yd_yamaguchi.jpg ブルー・マーリン・パートナーズの山口揚平氏

 ミクシィのようなネット新興企業を分析する際には、どのような点に注意しなければならないのか。この点について山口氏は、「収益拡大の源泉は何かを把握する必要がある」と強調した。ミクシィの場合は収益の9割弱がmixi事業による広告収益と会員収益で、その価格を決めるのはページビュー(PV)。PVとは、そのページが閲覧された回数のことを指す。広告を掲載する場合、どれくらいの人の目に広告が触れたのかをPVで測るため、PVが伸びることはとても重要だ。「ミクシィだけではなく、多くのネット新興企業にとって、収益源の中心は広告収入。PVが多ければ多いほど、広告料が高くなり、収益が高くなるという仕組み」という。

 mixiの2008年3月時点の月間PVは、PC用サイトが2007年度の69億PVから54億PVへと減少させたものの、携帯電話(モバイル)用サイトが40億PVから83億PVと倍増した。国内ではYahoo! に次いで第2位であり(2007年ネットレイティングス調べ)、総じてメディアとしての価値は高まっているといえるだろう。

 ではミクシィの企業価値は、どのようにすれば評価できるだろうか。

(1)将来生む利益から評価する(フロー)から評価する

(2)同業の価格と比較して評価する

 以上、2つの点から企業価値を算出してみる。将来生む利益からの評価では、収益構造を分解して、将来どのくらいのキャッシュインが見込めるかを考える。次に同業の価格との比較では、類似している企業の株価と比べ、ミクシィの価値を算出するという。

 ミクシィの時価総額1500億円は、どのような成長を織り込んでいるのだろうか。「1500億円は利益率が変わらず、年間約50%増のペースで、今後5年間売上が成長するとした場合の株主価値(DCF法※1で算出)に一致する」。ミクシィの対前年成長率は92%だが、電通総研によると広告市場全体におけるインターネットの広告の割合は6%に達していることや、mixiのPVが2位であることを考えると「現状のビジネスモデルの成長だけでは50%の成長が5年も続くのは難しいかもしれない」と分析する。

※1 企業価値などを評価するための1つの方法。
※2 山口氏・注:計算はあくまで「ざっくり」したもので、収益は単純にPV数に比例するわけではない。
yd_mixi1.jpg ミクシィのユーザー数とモバイルのPV数が順調に推移(出典:ミクシィ)

株価が企業価値からかけ離れてしまうことも

 次に同業他社と比較して、ミクシィの株価の妥当性を検証してみる。国内ではミクシィと肩を並べるような企業が存在しないため、米国のMySpaceを対象とする。MySpaceは米国でSNSサービスを運営しており、2005年8月にニューズコーポレーションによって696億円で買収された。買収されたときのMySpaceの月間PVは、現在とほぼ同じ。さらにユニークユーザーを見ると、mixiは1400万人で、MySpaceの5860万人の約4分の1。しかし買収価格は、ミクシィの時価総額の約半分である。

 もちろん単純には比較できないが、なぜミクシィの時価総額はMySpaceの買収価格を上回っているのだろうか。「一般的に株価は、相場の『機嫌』と企業の『価値』によって決まるのだが、米国の株式市場と比べると、日本の株式市場(特に新興市場)はまだ未成熟。新興企業のバラ色の将来を予想して、株価が企業価値からかけ離れてしまうことがあるので、注意することが必要だ」としている。

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