明日からあなたの親を介護することになったら?――老人ホーム“以外”の選択肢大出裕之の「まちと住まいにまつわるコラム」(2/2 ページ)

» 2008年12月22日 11時03分 公開
[大出裕之,Business Media 誠]
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アロー建物管理の挑戦

アロー建物管理の柿本登代表取締役

 今回、高専賃の開発・管理のパイオニアであるアロー建物管理代表取締役、柿本登氏に話を聞くことができた。アロー建物管理は高専賃だけでも40棟以上を企画開発してきた実績を持っている。

――高専賃物件を手掛けるようになったきっかけを教えてください。

 現在のシニアレジデンス事業は、6年前に始めました。最初は医療法人の理事長から「老人ホームの入居で待機している人がいるから、高齢化社会に向けて高齢者向け住宅を作りましょう」と要望されたのです。

 最初の物件は社員寮をコンバージョン(改装・用途変更)したもので、賃貸市場の飽和を背景とした時代の変化・社会の年齢構成の変化を象徴していると思い手掛けました。当初は仕組みそのものが理解されずに入居者募集に苦労し、半年かけてようやく満室になりました。

 当時まだ高専賃制度もなく、金融機関は懐疑的でアパートローンの審査がおりないこともありましたね。金融機関にしてみれば、ちゃんと収益が出るか見当がつかなかったのでしょう。仕方なく国民生活金融公庫(現日本政策金融公庫)の10年ローンで、オーナーに建ててもらったりしました。すると、7年で投資資金が回収できる物件も出てきたことから、風向きが変わってきました。

――どんな方が入居されていますか?

 私たちの物件の入居者の平均年齢は、72〜73歳です。老人ホームなどの施設の平均が84歳ですから、約10年は入居されても問題はないのではないでしょうか。

 ちなみに、私たちの高専賃入居者の9割が食事サービスを利用されています。基本3食利用し、たまにキャンセルする感じです。また、訪問介護を利用するお客さまは6割くらい。もちろん頻度はさまざまで人によります。そのほかにも、散髪、歯医者、介護用品のレンタルサービスなどが利用できるようにしています。潜在ユーザーが100%住んでいるので、逆にサービス事業者がどんどん売り込みに来るという一面もありますね。

 私たちの高専賃の相場は家賃が月4〜7万円、管理費(建物管理費、生活管理費、修繕積立金)が月3〜4万円、入居一時金が25〜40万円です。食費は3食全部食べると月4万2000円になります。お客さまは一度入居するとたいてい引越ししません。引越しするとしたら常時要介護状態になった時です。ですので、入居率は90〜100%近くで推移します。

――シニアレジデンス事業で大切に考えていることは?

 都市部のボリュームゾーンをターゲットに開発を進めています。良いサービスを継続するには、ニーズがきちんとあり、高い入居率が想定できるような施設を目指すことが重要です。

 また、自前では介護サービスの提供はしないことにしています。自分たちでやると計算上は利益が増えるかもしれないのですが、多様なサービスを管理するのは難しいのです。それに新規に物件を開発する場合、もし自前主義でやっていると、その地域で既に信頼のあるサービス事業者から反感を買ってしまう。すると、クチコミでの集客がまったく期待できなくなってしまう。そこで地域ごとの信頼あるパートナー、医療法人、介護事業者、食事業者などと組むことにしています。

田舎の両親が気になる方は

 それではこうした高専賃を探すにはどうすればいいだろうか?

 これまでの物件検索サイトでは、老人ホームや高齢者向け物件を探すことはできなかった。老人ホームを探すのは、チラシだったり、医者やケアマネージャーからの紹介だったりと、多様な選択肢の中から自分の状況にフィットするものを探すことは難しかった。

 そこで手前味噌で恐縮だが、HOME'Sでは2008年7月に老人ホーム・介護施設及び高専賃を検索できる専用サイトHOME'S介護をオープンした。現在全国2万件以上の施設・物件を検索することができ、介護や施設についてのQ&Aや施設探しのノウハウなどのコンテンツを充実させている。田舎に残してきた父親や母親が頭の片隅で気になるなら、是非一度ごらんあれ。

HOME'S介護
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