ラジオDJのよろこびとは――ラジオパーソナリティ・齊藤美絵さん(前編)嶋田淑之の「この人に逢いたい!」(4/4 ページ)

» 2008年12月20日 12時00分 公開
[嶋田淑之,Business Media 誠]
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齊藤美絵さんという生き方、その1――仏教哲学由来の「主客一如」

 プロフェッショナルな仕事術で人気パーソナリティとしての立場を揺るぎないものにしている齊藤美絵さん。そんな彼女にインタビューをさせていただいた私は、その過程でとても不思議な体験をした。

 インタビュー取材というのは、初対面の方に対して、様々な角度から質問を発し、本音を聞き出す仕事なので、それなりに気を使うし、充実感とともに、かなりの疲労感を伴いがちである。ところがその日、体調が優れず、取材の延期を真剣に考えるほどの状況だった私は、齊藤さんにインタビューを行ううちに、逆に元気を回復した。取材終了時にはとても穏やかな心になり、その心的状態が終日続いたのである。

 実はこの点にこそ、齊藤美絵さんという女性の社会的成功の本質が隠されているのではないか、と私は考えている。彼女の発する言葉はもちろん、彼女という存在そのものが人々の心を癒し、人々に元気や希望を与えると言ったら良いだろうか。

 彼女をそういう存在にしている要因は、彼女自身の人生観にある。それは、ずばり「生きとし生けるものへの感謝、謝罪、愛情」だ。自分は、自分を取り巻く森羅万象によって「生かされている」存在であると見なし、周囲の人々や自然や生き物への感謝や愛情の中で生きるというスタンスである。

 こうした生き方をしていると、それは周囲に対する「目配り、気配り、心配り」が自然にあふれ出る生活態度となって現れ、他の人々とは異なる空気感が醸し出されることになる。“プラスのオーラが溢れ出ている”と言い換えても良いかもしれない。

 本稿冒頭で描いたイベント会場での「ステージ上の人々に対する愛情や慈しみにあふれた彼女の後姿」とは、まさに、そうした空気感のなせる技であろう。あるいはまた、コンディションの悪かった私を元気にし、心を穏やかにしてくれたのも、そうしたプラスのオーラゆえであろう。

 彼女のこういう人生のスタンスは、以前本連載の大塚玲奈さんの回で詳述した「主客一如(しゅきゃくいちじょ)」の思想であり(参照記事)、幾多の戦乱や天変地異を乗り越え、数百年にわたって繁栄を続けてきた日本の老舗企業が有する価値観である。

 現代の新興企業においても、例えば以前本連載で取り上げた「くふ楽」グループでは、「ハッピー&サンクス」という制度を設け、アルバイトを含めた全スタッフが、その日一日に起きた「うれしかったこと」「感謝したいこと」を発表し合い、それを日々、共有し合っている(参照記事)。これを通じて、来店客との心の交流が生まれ、若いスタッフが活性化するとともに、企業としての業績が急上昇している。経営論的に見るならば、齊藤美絵さんの生き方やスタンスは、日本古来の「商い(あきない)の心」を体現していると言えよう。

齊藤美絵さんという生き方 〜その2 ハワイ伝統の「ホ・オポノポノ」

 また、「ありがとう」「ごめんなさい」「愛しています」という、森羅万象への彼女の姿勢は、彼女が愛してやまないハワイの伝統的な教えとも見事に合致している。

 最近、ハワイ好きの間で話題となっている、イハレアカラ・ヒューレン著の『みんなが幸せになるホ・オポノポノ』という本がある。自分と相手との関係において、どんなことが起きても、常にそれは自分に起因すると考え、「ありがとう」「ごめんなさい」「許してください」「愛しています」という言葉を心の中で唱えることで、自己の潜在意識層がクリアな状態になり、本来、人間に備わっている「直観」が働くようになり、人生を良い方向へと導いてゆくことができるとする内容だ。博士号を持ち、医大の学長などを経験したヒューレン氏が「ホ・オポノポノ」と出逢ってから、実際に病院などで実地検証をした上で書かれたものであり、納得させられるところの多い主張である。

 齊藤さんは、ホ・オポノポノとは知らず、それを長年、実行していたのであり、だからこそ結果的に、非常に前向きなエネルギーに満ちた人生を成功裏に歩むことが出来ているとも考えられるのである。換言するならば、彼女は、巧まずして、ハワイ古来の「アロハスピリット」を身につけ、実践してきたと言ってよいかもしれない。

 では彼女は、どういう生い立ちを経てこうした人生観を形成し、現在のような輝きを手にすることが出来たのだろうか? 後編ではそれを見てみたいと思う。

 →モットーは「前代未聞のことをする!」――ラジオパーソナリティ・齊藤美絵さん(後編)

嶋田淑之(しまだ ひでゆき)

1956年福岡県生まれ、東京大学文学部卒。大手電機メーカー、経営コンサルティング会社勤務を経て、現在は自由が丘産能短大・講師、文筆家、戦略経営協会・理事・事務局長。企業の「経営革新」、ビジネスパーソンの「自己革新」を主要なテーマに、戦略経営の視点から、フジサンケイビジネスアイ、毎日コミュニケーションズなどに連載記事を執筆中。主要著書として、「Google なぜグーグルは創業6年で世界企業になったのか」「43の図表でわかる戦略経営」「ヤマハ発動機の経営革新」などがある。趣味は、クラシック音楽、美術、スキー、ハワイぶらぶら旅など。


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