ラジオDJのよろこびとは――ラジオパーソナリティ・齊藤美絵さん(前編)嶋田淑之の「この人に逢いたい!」(3/4 ページ)

» 2008年12月20日 12時00分 公開
[嶋田淑之,Business Media 誠]

齊藤美絵流“3つの仕事術”

取材当日に放送した番組の元原稿。放送前には原稿を読み込み、自分の言葉として話せるよう心がけるという

 5時間の長時間番組が5年間も継続する長寿番組となっているのは、彼女の仕事ぶりが、リスナーからも制作サイドからも高く評価されているからに他ならない。

 そんな彼女の仕事術の特徴を探ってみた。第1に挙げられるのは、「現場情報を大切にしつつ、それを自分の心で咀嚼し、自分の言葉で語ること」だろう。

 「できるだけ自分で現場に足を運び、自分の言葉で話したいと考えています。ディレクターさんや構成作家さんが書いた元原稿も、自分なりの言葉にしてから、その場その場の状況に即応してしゃべるようにしています。その情報の何が面白いのかを、自分なりに把握して伝えることが大切だと思います」と、スタンスは明確だ。

 そのこととも関連するが、第2に彼女の情報は「裏づけがしっかりとしていること」が挙げられようか。その一例が「フードマエストロ」という資格取得だ。

「フードマエストロ」とは、いわば“食べ手のプロ”の資格。さまざまな食材について、生産から消費までを学ぶ

 湘南やハワイはもとより各地の「今」を伝える場合、当然のことながら「食」に関する情報は大きなウェイトを占める。現代の日本では、食について膨大な情報がちまたに溢れている。しかしそういう中にあって、きちんと専門的な知見に基づき、適切な言葉でそれを表現できている人は少ない。齊藤さんは、もともと料理を得意とし、学生時代から、彼女のレシピがホテルやレストランで実際に採用されるなど、非凡な才能を発揮してきた。したがって、食についての彼女の主張には、説得力があるわけだが、それをより強化するとともに、それが一個人の感想というに留まらず専門家の意見として世の中から重用されるようにするために、あえて、「フードマエストロ」という資格を取得したのである。

 「もともと野菜ソムリエの資格は持っていたのですが、このフードマエストロの資格を取るために、1年間勉強しました。シェフから和洋中伊の食文化についての知識を学び、塩のテイスティングをしたり、酢の醸造について勉強したり、築地の場内で課外授業があったり……そうした学びを通じて、例えば調味料を例にとっても、本物とそうでないものの違いを痛感するようになりましたし、伝統的な匠の技の素晴らしさ、食材への愛情の大切さ、そしてそういう要素がもたらす料理の味の違いがどれほど大きいかを知りました」

 齊藤さんの仕事術、第3の特徴としては、「密なコミュニケーション」が挙げられよう。「ラジオのお仕事というのは、あくまでも人間の心と心のやり取りです。ですから、大組織のパーツとしてルーティンに日々の業務を消化してゆくようではいけません。番組の制作サイドが、チームとして一体化していることが何よりも大切で、そこに少しでも隙間風が吹いていると、リスナーさんはすぐに感じ取ります。同じ原稿に基づいて同じ内容を喋っていても、その差は歴然としているのがラジオの特性とも言えるのでは……。だからこそ私も、本番前のすり合わせなど、チームでのコミュニケーションを何よりも大切にしています」と熱く語る。リスナーの立場に立って、リスナーとの心の交流を促進するためには何が必要なのかを正しく理解し、それを実現するために最善の努力をしている。

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