時給で見る、どんなところに住むかという考え方山崎元の時事日想(1/2 ページ)

» 2008年12月11日 07時00分 公開
[山崎元,Business Media 誠]

著者プロフィール:山崎元

経済評論家、楽天証券経済研究所客員研究員、1958年生まれ。東京大学経済学部卒業後、三菱商事入社。以後、12回の転職(野村投信、住友生命、住友信託、シュローダー投信、バーラ、メリルリンチ証券、パリバ証券、山一證券、DKA、UFJ総研)を経験。2005年から楽天証券経済研究所客員研究員。ファンドマネジャー、コンサルタントなどの経験を踏まえた資産運用分野が専門。雑誌やWebサイトで多数連載を執筆し、テレビのコメンテーターとしても活躍。主な著書に『会社は2年で辞めていい』(幻冬舎)、『「投資バカ」につける薬』(講談社)、『エコノミック恋愛術』など多数。ブログ:「王様の耳はロバの耳!


 住居の選択には経済的な損得だけでなく、趣味やライフスタイルなど幅広い問題が関わるので、一律の答えが出るものではない。しかし経済的な観点から、若いビジネスパーソンの住居選択について検討する。

 なぜこのようなテーマを取り上げるかというと、30代前半くらいのビジネスパーソン(女性を含む)が、マンションなどを買って、結果的に「損だ」と思えるケースを周囲で多々見るからだ。なお、ここでは「若い」とは20代、30代を指している。

持ち家、賃貸の損得は「割高か割安」かで決まる

 住居の選択では、(1)持ち家か・賃貸か、(2)立地、(3)マンションか一軒家か、といった3点が大まかに問題になる。

 持ち家か、賃貸か、という問題に対して、筆者は若いビジネスパーソンには、どちらかというと賃貸を勧める。

 持ち家と賃貸の損得に関しては古くから議論があるが、その損得は、住宅の価格次第であり、価格が高ければ賃貸の方がいいし、低ければその逆だ。基本的には、同等の物件の家賃を「配当」あるいは「利益」と考えたときに、その家の価格を株価として評価して「割高か割安か」という考えによって、持ち家・賃貸の損得は決まる。「自分が住む家は特別だ」と思い込む人もいるが、自分が住む家でも基本は同じだ。

 あえて違いを探すと、自分が住んでいる限り、店子がいなくなって空室になるリスクが小さいという点が違う。しかし勤務先が変わったり、家族構成が変わったりすることがあるから、自分の将来とて100%確実とはいえない。

 市場原理が十分に働くと、家賃(大家の利益分も含まれている)と家の価格(家の売り手の利益やローンを組んで買う場合、金融機関の利益も含まれる)の関係は、リスクや家の老朽化を考慮した上でも、損得があまりない状況になるはずだが、当面の需給関係や景気など、多くの要素で損得が変化する。日本の場合は、今後、人口が減っていくので、住宅価格に需給要因からの過剰な高値は付きにくくなることが予想されるが、価格と家賃を比較して損得をじっくり考えてほしい。筆者の個人的な感覚からすると、想定される年間家賃の12〜3倍くらい(家賃利回り※で8%くらい)なら「まあまあ」ではないかと思っている(もちろん個人差はあっていい)。

※年間の家賃収入÷物件価格

 いずれにせよ「賃貸の場合は家賃を払っても自分のモノにならないが、持ち家はローンを払い終わると自分のモノになるから(持ち家がいい)」という点で思考を停止させずに、損得をしっかりと考えたい。

 経済的な損得に加えて、持ち家を検討している若いビジネスパーソンには、賃貸暮らしの方が「身軽」であることのメリットを強調しておきたい。先にも述べたように、勤務先だって変わるかもしれないし、家族構成が変わる可能性もある。また将来の子どもの事情(学校など)や、親の健康状態などによっては、場所も家の間取りも変えた方が都合がいいこともある。こうした場合に、マンションなどを持っていると不自由な場合が多い。納得できる価格で売却することは、マンションのセールスマンが言うほど簡単ではない。

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