インタビュー
» 2008年12月10日 07時00分 UPDATE

山口揚平氏が教える“会社の本質”:よいベンチャーを見抜く4つのポイント (1/2)

一般に、1000社あるベンチャーのうち、中堅企業まで育つのは1社といわれる。成長するベンチャー企業には、共通する特徴があるのだろうか。ブルー・マーリン・パートナーズの山口揚平氏は「良い会社かどうかは、従業員3人と話をすれば分かる」と話す。その理由とは……。

[土肥義則,Business Media 誠]

山口揚平(やまぐち・ようへい)

早稲田大学政治経済学部卒。トーマツコンサルティング、アーサーアンダーセン、デロイト トーマツ コンサルティング、アビームM&Aコンサルティング シニア・ヴァイス・プレジデントを経て、現在はブルー・マーリン・パートナーズの代表。主な著書に『株M&A大化け相場に乗り遅れるな!』(日本実業出版社 2005年)、『なぜか日本人が知らなかった新しい株の本』(ランダムハウス講談社 2005年)、『世界を変える会社の作り方』(2008年、PDF)、『デューデリジェンスのプロが教える 企業分析力養成講座 会社の本質を見抜く9つのポイント』(日本実業出版社)など。Business Media 誠では2007年4月〜12月まで連載「時事日想」を執筆


 未上場の企業が新規に株式を証券取引所に上場し、取引所を通じて自由に売買できるようにする「IPO(Initial Public Offering)」※1。IPO人気が高まっているときには「IPO株を購入することができればもうけることができる」といったムードになり、抽選倍率が100倍を超えることも珍しくはない。ただ2006年1月のライブドアショック以降、新興市場※2の低迷で初値(新規上場して最初についた株価)が公募価格(新規上場する株式を投資家が購入する際の価格)を下回る銘柄が増え、投資家の“IPO株離れ”が進んだ。

※1:株式上場の前に、株主が保有している株式を売り出すこと。これらの株式は証券会社を通じて、投資家へ配分される。
※2:ベンチャー企業などが多く上場している市場のこと。ジャスダック市場、東証マザーズ、大証ヘラクレスなどの市場がある。

 新興市場への上場時には、その企業の将来を夢見る投資家が多いため、高い株価をつけることが多かった。しかしその後の株価は低落していくことが多く、ブルー・マーリン・パートナーズ代表の山口揚平氏は「企業が次の一手を打たなければ、株価は二度と上がらないという危険性がある」という。

 さらに山口氏は「もはや新興市場は、投機のための“カジノ場”と化している」と皮肉る。新興市場=カジノ場とまで言い切る背景として、企業価値に対する知識不足の個人投資家と、IPOによって利益を得ようとする金融業者の思惑を挙げる。

 すでに新興市場は「無知な個人投資家から、市場のプロが資金を巻き上げる場でしかない」という山口氏。大切なお金を守るためには、どのようにすればいいのだろうか。今回はベンチャー企業への投資ポイントなどを聞いた。

 →スターバックスに“死角”はあるのか? ポイントは米国本社との関係(前編)

ベンチャー企業への投資ポイント

 山口氏は「ベンチャー企業への投資は難しい」ことを強調する。その理由として「最初のビジネスが成功するのか、判断することが難しい。もしうまくいっても、二の矢、三の矢のアイデアがなければ、企業を拡大することができないからだ」。そして、もしベンチャー企業に投資をするなら、4つの点に着目する必要があるという。

ベンチャー企業への投資のポイントは4つ

1.ビジョン(志)が大きいこと

2.いろいろな価値観を吸収できていること

3.お金の使い方が上手なこと

4.事業が安定していること

yd_yamaguchi.jpg ブルー・マーリン・パートナーズ代表の山口揚平氏

 1つめの「ビジョン(志)が大きいこと」について、「結局のところ、会社のトップが考えることしか事業は実現しない。なので『この人はどんなことを達成しようとしているのか?』を見極める必要がある」。トップのビジョンが大きいかどうか、どのように判断すればいいのだろうか。この点について山口氏は、上場時の目論見書を見ることが大切だという。「目論見書を見れば、上場することが『ゴール』なのか、次への『ステップ』なのか、分析することができる。もちろん『上場がゴール』というような会社は、事業を拡大させることは難しいだろう」

 2つめの「いろいろな価値観を吸収できている」。ベンチャー企業は“豪腕”なトップが君臨しているところも多いが、多様な価値観を受け入れるということも大切だ。例えばシステム、営業、財務などの担当者が、経営陣のメンバーに1人ずついるかどうか。「ベンチャー企業のトップは“王様”タイプの人が多く、あまり人の意見を聞かない。しかし会社を大きくするためには、いろいろな価値観を受け入れなければならない。そのためには経営陣の経歴をチェックした方がいい」としている。

 3つめは「お金の使い方が上手なこと」。ベンチャー企業は事業に注力する一方で、資金繰りなどに困っているケースが目立つ。そのため金融機関から高い金利でお金を借り、リストラをしなければならないという“負の連鎖”に陥りがちだ。また「株主を無視した増資や安易な株式分割を行う企業は注意が必要。きちんとした資本政策(株式の増資などを計画すること)を行っていて、経営陣の中に財務面を支える人物がいることが理想だ」

 4つめの「事業が安定していること」について、山口氏は一定の条件を設定している。3年間の平均フリーキャッシュフロー(会社が自由に使えるお金)がプラスで、社歴が10年以上――。なぜこのような条件を設けているのだろうか。「赤字を垂れ流し続けている会社は、価値を生み出すモデルを作っていない可能性が高い。たまたまある商品がヒットしただけで、利益に関心が低い会社への投資は注意しなければならない」という。

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