コラム
» 2008年12月04日 07時00分 UPDATE

山崎元の時事日想:なぜダフ屋は儲かるのか? ダフ屋規制の代替案を考える (1/2)

コンサート会場の近くで、しばしば見かけるダフ屋。警察の取り締り対象となるダフ屋行為だが、売る人・買う人にとってメリットがあることも確か。このままダフ行為を規制するのであれば、いっそのことビジネスとして認めてみてはどうだろうか?

[山崎元,Business Media 誠]

著者プロフィール:山崎元

経済評論家、楽天証券経済研究所客員研究員、1958年生まれ。東京大学経済学部卒業後、三菱商事入社。以後、12回の転職(野村投信、住友生命、住友信託、シュローダー投信、バーラ、メリルリンチ証券、パリバ証券、山一證券、DKA、UFJ総研)を経験。2005年から楽天証券経済研究所客員研究員。ファンドマネジャー、コンサルタントなどの経験を踏まえた資産運用分野が専門。雑誌やWebサイトで多数連載を執筆し、テレビのコメンテーターとしても活躍。主な著書に『会社は2年で辞めていい』(幻冬舎)、『「投資バカ」につける薬』(講談社)、『エコノミック恋愛術』など多数。ブログ:「王様の耳はロバの耳!


 筆者は東京ドームの近くを通りかかることが多い。ドームは自宅からも、借りているオフィスからも徒歩圏内だし、ドームの隣にある後楽園ホールに行く機会もある(時々ボクシングの試合を見に行く)。コンサートなどのイベントがある時にドームの近くに行くと、いわゆるダフ屋の取り締まりをやっていることが多い。警察官とおぼしき人たちが、チケットの売り買いはしないで下さい、と訴えている。「警察官は仕事なのだから、ご苦労なことだし、仕方がない」と思いつつも、いつも違和感を覚えつつ彼らの側を通る。

 違和感を覚える理由は簡単だ。ダフ屋の行為には直接の被害者はいないし、チケットを売る人にとっても、買う人にとっても、むしろメリットになっていると思うからだ。

 チケットが急に不要になった場合、多少なりともお金に替わるなら売り手に取ってはありがたい。期日に余裕があれば、ネットのオークションなどで売ることもできるが、急にチケットが余るという事態は十分起こりうる。また、どうしても行きたいコンサートのチケットがその場で手に入るのだから、ダフ屋の商売は買い手にとっても喜ばしい。どうして邪魔をする必要があるのだろうか。

ダフ屋行為を邪魔する理由

 警察がダフ屋行為を邪魔する理由の1つは、ダフ屋はその収益に対して、たぶん税金を払っていないからだろう。ダフ屋の立場に立つと、ダフ屋行為が違法とされているわけだから、隠れてビジネスをする必要があるし、せっかく隠れてやっているのだから、収益を申告せず脱税しようという「気持ち」は理解できる(それでも払わなければ行けないのが税金のルールだが)。

 それならば、いっそのことチケットの買い取りと再販売をビジネスとして認め、登録制にして課税したらどうだろうか。取り締まりが不要になるし(なにがしかコストが浮く)、税収が増えることになるから、国や自治体にとっても好ましい。

 もう1つの理由として、ダフ屋との取引をするなというポスターなどから推察すると、ダフ屋は反社会的な勢力と結び付いていて、チケットの売り買いが反社会的な勢力の資金源になるからという理由があるらしい。

 それが問題なら、自治体などの公的機関が自らチケットの買い取り・再販売を行えばいいだろう。この場合にも、収益は自治体のものになる。利用者側としても、正式な窓口があれば、チケットが買いやすいから、既存の私的ダフ屋に対する競争力は十分あるのではないか。

 また、かつての禁酒法下の米国でマフィアが栄えたがごとく、中途半端な規制は、かえってアンダーグラウンドのビジネスを行う者に収益機会を与えてしまう。ダフ屋を反社会勢力の資金源にしない、という目的のためには、ダフ屋行為を公認して公的な管理下に置くのがいい。

「被害者のいない自由な取引」を公明正大に行うことが大切

 ところで、ダフ屋は商売としてどうして儲かるのだろうか。

 1つには「チケットが余った人の供給」と「チケットが欲しい人の需要」を仲介しているからだろうが、このほか最前列(好条件)の席やイベントの開催直前に、通常の料金よりも高い価格が成立するからだろう。

 一般的に、価値の曖昧なモノの売買では、大きな利益を得ることができる可能性がある。チケットに対するプライシングは、買い・売り両方にあってダフ屋の腕の見せ所に違いない。もちろん、いきなりやってうまくできるというものではなさそうだ。新規公開企業の株価を会社の創業経営者には安く、投資家には高く説明して鞘を抜く証券マンのような手腕が必要だろう。

 ところで、好条件の席などに関するチケットの買い取り・再販が収益をもたらすのは、こうした席のチケットの価格がもともと低く設定され過ぎているからではなかろうか。コンサートの主催者は、本来得られるはずの利益を十分に得ていない可能性が大きい。

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