アイドリングストップ機能搭載で、「smart」はどう変わった?

» 2008年12月03日 08時15分 公開
[吉岡綾乃,Business Media 誠]

 トヨタの「iQ」が2008年のカー・オブ・ザ・イヤーを受賞するなど(参照記事)、市街地で乗ることを意識した小さいクルマに対する注目が高まっている。

 しかし、街乗り用の小さなクルマといえば、本家本元といえるのが「smart(スマート)」だ。大人2人乗り、全長3メートル未満のコンパクトサイズで、乗り心地の良さと安全性を兼ね備える「マイクロカー」というコンセプトを最初に形にしたスマートは、欧州で1998年にデビューした。

 スマート誕生から10年。メルセデス・ベンツ日本は2008年12月2日から、「スマート フォーツー mhd」の販売を開始した。スマート フォーツー mhdは、従来のスマートにアイドリングストップ機能を搭載。燃費の良さと環境適合性を高めた新型車だ。輸入車では初めて、アイドリングストップ自動車購入補助金制度※の対象となっている。

※アイドリングストップ自動車購入補助金制度…財団法人省エネルギーセンターの指定を取得した、アイドリングストップ機能を持つ車両を対象として、そのベース車との価格差の半分を上限に補助金を受けられる制度。

 アイドリングストップ機能が付くと、スマートはどう変わるのか? そして「mhd」とはどういう意味なのか? スマート フォーツー mhdについて紹介しよう。

ドライバーが意識しなくても、自動でアイドリングストップ

 スマート フォーツー mhdの最大の特徴は、上記の通りアイドリングストップ機能にあり、同社では「スタート/ストップ機能」と呼んでいる。これは、ドライバーのブレーキ操作に連動して自動的にエンジンのオフ/再起動を行うもので、ドライバーは意識しなくても、減速・発進(加速)操作を行うだけで自動的にアイドリングストップを行えるのだ。

 もう少し具体的に説明しよう。ドライバーがブレーキペダルを踏んで減速し、車速が時速8キロメートル以下になるとエンジンが自動的に停止する。その時点ではまだクルマは動いているが、ブレーキを踏み続ければ停止するし、ブレーキを離せばクルマが「進む意志がある」と判断してエンジンを再び動かし、クルマは再び加速していく。

 ブレーキペダルを離してから再起動までにかかる時間は0.35秒。記者も試乗してみたのだが、ドライバーが普通に運転しているだけで自動的にエンジンオフ/再起動が行われる感覚が面白い。ブレーキから足を離して、アクセルを踏む前にエンジンがかかるので、再起動を待たされる感覚はまったくない。

 バックに進むときにはスタート/ストップ機能が働かないので、車庫入れなどの場合は自動でエンジンがオフになることはない。低速で何度も切り返すときなどエンジンがストップしては困る場合は、スタート/ストップ機能をオフにすることもできる。

 メルセデス・ベンツによれば、アイドリングストップ機能を搭載したことにより、燃費はリットルあたり23.0キロメートルと従来モデルより24%向上。CO2排出量も1キロメートルあたり101グラムを達成したという。

メーターの右横にある「ECO」ランプ。走り出した直後は写真のようにオレンジ色だが、これが緑色に光ったらスタート/ストップ機能が利用できるようになる(左)。シフトレバーの前の「オフ」ボタンを押せば、スタート/ストップ機能をオフにできる(右)

5秒以上アイドリングするなら、エンジンオフの方が省エネ

メルセデス・ベンツ日本商品企画部商品企画2課課長の新道学氏

 同社によれば、クルマが市街地を走行している時間のうち、35%は停止しているという。この時間のエンジンを切ることができれば、燃費削減とCO2排出量の低減につながる、というのがスマート フォーツー mhdの基本思想だ。

 とはいえ、交差点や信号に差し掛かるたびにクルマは停止と発進を繰り返す。そんなに頻繁にエンジンオフ/再起動を繰り返していては、返って燃費がかかったり、CO2の排出量は増えてしまうのではないだろうか?

 メルセデス・ベンツ日本商品企画部商品企画2課課長の新道学氏によれば、「アイドリングを5秒以上続けるのであれば、1回エンジンを切ってかけなおしたほうが省エネ効果がある」という(図)。

市街地を走るクルマの走行時間を分析すると、65%は走行時間、35%は停止している時間だという(左)。エンジン始動時に必要になる燃料消費量は、アイドリング5秒分に相当する(右)

 スマート フォーツー mhdの「mhd」とは、“micro hybrid drive”の略だ。新道氏によればクルマを「フルハイブリッド」と呼ぶために必要な要素は、大きく分けて(1)アイドリングストップ機能、(2)回生ブレーキ、(3)電動アシスト機能、(4)電動走行、と4つある。このうち、最も簡単に実現できるのが(1)のアイドリングストップ機能であるため、現行のスマートに大きく変更を加えずに(1)を実現し、「マイクロハイブリッド」と呼ぶことにしたという。「例えば170万円のスマートを240万円にすれば、フルハイブリッドカーが作れるでしょう。でも、(車体を)重く(値段を)高くしてフルハイブリッドを作ったとしても、それはスマートのコンセプトとは違うと思う」(新道氏)

 mhd化するために、どこを変更したのだろうか。「従来のスマート フォーツーから、基幹部品を3つ変更しました。1つはスターターとオルタネーター(発電機)。2つ目はエンジンの頻繁なオン/オフにも耐えられる高性能なバッテリー。3つ目はECU(エレクトロニック・コントロール・ ユニット)の変更です」(新道氏)

 メルセデス・ベンツ日本では今後、日本で販売するスマートを、すべて「スマート フォーツー mhd」に変更する方針だ。価格は「クーペ mhd」が184万円、「カブリオ mhd」が213万円で、従来のスマート フォーツーよりも8万円高い値付けになっている。スマート フォーツー mhdは「アイドリングストップ自動車購入補助金制度」の対象モデルであるため、クーペとカブリオのいずれも、最大3万5000円の補助金を受けることができる。

スマート フォーツー クーペ mhd
スマート フォーツー カブリオ mhd

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