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» 2008年12月01日 08時06分 UPDATE

藤田正美の時事日想:押し寄せる世界経済失速の“荒波”……どうなる日本丸の進路

かつて世界経済を引っ張ってきた国といえば、米国、ドイツ(EU)、そして日本。しかし米国の金融不安が世界経済に広がり、「グローバルな対応をすべき」という声がある中で、第二次補正予算案を先送りする日本は大丈夫なのだろうか?

[藤田正美,Business Media 誠]

著者プロフィール:藤田正美

「ニューズウィーク日本版」元編集長。東京大学経済学部卒業後、「週刊東洋経済」の記者・編集者として14年間の経験を積む。1985年に「よりグローバルな視点」を求めて「ニューズウィーク日本版」創刊プロジェクトに参加。1994年〜2000年に同誌編集長、2001年〜2004年3月に同誌編集主幹を勤める。2004年4月からはフリーランスとして、インターネットを中心にコラムを執筆するほか、テレビにコメンテーターとして出演。ブログ「藤田正美の世の中まるごと“Observer”


 過去、世界の景気を引っ張ってきた“機関車”ともいえる国と言えば、米国、日本、そしてドイツ(あるいはEU)といった顔ぶれだった。しかし今や、その3両の機関車とも前に進むことができなくなって“修理工場入り”している。日米欧がこけても、中国やインドといった新興国があるという期待も、インドのムンバイで起きたテロで、萎(しぼ)んでしまったかのようだ。

 金融市場がこけていることから、ほぼ全世界の企業はキャッシュを求めて、戦略を見直しているのだという。年間売上高630億ドルを誇るインドのタタグループ、ラタン・タタ会長はグループ各社の幹部に宛てたメールで「キャッシュフローとビジネスプランを見直せ」という指示を出したそうだ。グループのタタ製鉄は欧州でコーラスグループを買収、あるいはタタ自動車はフォードからジャガー・ランドローバーを買収した。そのためにタタ製鉄は銀行借り入れが2008年現在で15倍に膨れ上がったという。また、経営上極めて重要な買収案件以外は中止という指示もあったと報じられている(関連リンク)

「グローバルな対応」をすべき「グローバルな危機」

 塹壕(ざんごう)に入って暴風雨をやり過ごそうとする経営姿勢ということだろうが、過去急成長を遂げてきたタタグループだけの特殊なケースというわけではない。すでに米国のビッグ3は、国の支援を求めている。この融資については、まだ米連邦議会も慎重な姿勢を崩していないが、バラク・オバマ次期大統領は、首席補佐官ともども地盤がイリノイ州であることもあり、ビッグ3への支援について積極的な姿勢を示している。また欧州でも自動車会社に対して、環境に優しいクルマを開発するためと称して6兆円ほどの低利融資を行うと報道された。

 英エコノミスト誌の最新号(11月29日号)では、世界経済を回復軌道に乗せるためには、各国政府が大胆な財政支出による景気刺激を行うことが必要だと主張している(関連リンク)

 金利の引き下げは、欧米の中央銀行がかなり大幅な引き下げを行ってきたが、それによって経済活動が刺激されているとはいえない。むしろ金融収縮がなかなか収まらない中で、金融機関は融資を抑えているために、金利の引き下げ効果が出にくいからだ。企業の支出も家計の支出も抑えられる格好となっているために、景気は上向くどころか、どのあたりで下げ止まるかの兆候も見えないのである。

 こうした中で、エコノミスト誌は米国の次期大統領オバマ氏に期待している。

 「ここ1週間の記者会見を見ていると、現在の課題の本質を他の指導者たちよりうまく位置付けてみせた。オバマ次期大統領は言う。これは、『グローバルな対応』をすべき『グローバルな危機』だ」とも。

 オバマ氏は米国がどの程度の財政支出をすべきか数字は明らかにしていないが、米民主党内では、5000億〜7000億ドル(50兆〜70兆円)、GDP(国内総生産)の約3〜5%という数字がささやかれているという。これほどの巨額の支出は、他の国では中国の4兆元(約60兆円)ぐらいだ。欧州各国は概して慎重である。世界をデフレスパイラルに落ち込ませないためにも、世界はオバマ次期大統領にならうべきである。

 日本では麻生太郎首相が第二次補正予算案を来年(2009年)の通常国会に提出するという意思を明らかにした。民主党の小沢代表からは、「政局よりも景気」といいつつ、第二次補正予算案を先送りするのは筋が通らないと攻め立てられた。世界が一致して動かなければならないときに、日本丸の進路が定まらないわけで、日本丸に乗り組むわれわれはとても不安だ。

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