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» 2008年11月27日 07時00分 UPDATE

郷好文の“うふふ”マーケティング:男のファッションは生きざま (1/2)

スーツと寝間着の中間、ビジネスカジュアルの服を持っていないことに気付いた私。その背景には、男性社会特有の“ファッション無監視社会”があったのだ。

[郷好文,Business Media 誠]

著者プロフィール:郷 好文

マーケティング・リサーチ、新規事業の企画・開発・実行、海外駐在を経て、1999年より2008年9月までコンサルティングファームにてマネジメント・コンサルタントとして、事業戦略・マーケティング戦略、業務プロセス改革など多数のプロジェクトに参画。 2008年10月1日より独立。コンサルタント、エッセイストの顔に加えて、クリエイター支援事業 の『くらしクリエイティブ "utte"(うって)』事業の立ち上げに参画。3つの顔、どれが前輪なのかさえ分からぬまま、三輪車でヨチヨチし始めた。著書に「ナレッジ・ダイナミクス」(工業調査会)、「21世紀の医療経営」(薬事日報社)、「顧客視点の成長シナリオ」(ファーストプレス)など。中小企業診断士。ブログ→「マーケティング・ブレイン」


 「郷さん、けっこうカジュアルですよね」

 相棒のcherryさんが私の仕事姿を見て言った。ヘンリーネックのシャツを、ジーンズにたくしこまずにだらりとたらす。皮のジャケットに、ウールのリバーシブル・マフラーをぐるりと巻く。足元はビブラムソールのブーツ、頭にはハンチング帽。仕事場には“too カジュアル”ですか?

 仕事もドレスコードも割と堅めの会社に属していたころ、毎日きちんとスーツとワイシャツにネクタイを締めて通勤した。それが今は、ネクタイは干瓢(かんぴょう)のようにハンガーに連なり、ワイシャツのクリーニング代は激減。

 以前同僚が「スーツの次の服はジャージですよ」と自嘲(じちょう)していたが、私もスーツの次はこうしたtoo カジュアルな服か、寝間着しかない。中間地帯の服、いわゆる“ビジネスカジュアル”をほとんど持っていないのだ。

私がビジネスカジュアルができないワケ

 クローゼットをガサゴソすればチノパンツの1本くらいは見つかるだろうし、“カタギ”のシャツもあるはず。

 しかし改めて探してみると、ゴルフ用のズボンやジャケットしかなかったりする。靴下はビジネス用かジョギング用のどちらか。靴も同じで、黒革靴かジョギングシューズ。ハンカチでさえ葬式モノか柄モノしかないのだ。

 バリエーションはなくても、せめて昨日と同じ服は着ないように気を付けないといけない。ところが朝の眠気マナコだと、昨晩タンスに脱ぎ捨てたばっかりの服を取り出してしまったり。う〜ん、これじゃだめだ。

 我が装い、人の振り見て直そうか。今夏、クールビズはすっかり浸透し、秋でもノーネクタイの人が増えた。ビジネス現場のカジュアル化は進行中だ。

 そうしたカジュアル化の原動力となっているのは流通の変化だ。ネクタイレスでいられる、襟高のドゥエボットーニのシャツが、スーパーの衣料品売場でも買えるようになっているのだ。

 先日、新橋を歩いていて見つけた「KONAKA THE FLAG」。5センチメートル刻みの身長別スーツ販売、という店舗だ。背の高い人は3階、普通なら2階、低い人は地階となっている。

ah_PICT0057.jpg 新橋の「KONAKA THE FLAG」

 大多数の男には「オレって何センチメートルだったっけ?」と考えるだけでいい“吊るし購買”が良く似合う。でも、そうして楽をすると、服選びの感度や自己表現する意識がなくなり、ますます服から興味が離れそうだ。「寝間着」か「スーツ」か、「MEN'S NON-NO」か「MEN'S SAMUE(作務衣)」か。そんな二極化した服しか持てないかもしれない。

 だから中間地帯の開拓はファッション業界のテーマ。ユニクロもH&Mも、寝間着とスーツの間のぽっかり空いた巨大需要を狙っている。

 スーツ業界にも深慮遠謀がある。クールビズやビジネスカジュアルというルールに協力しているのは、エコや親切心からだけではない。業界はスーツから一気にtooカジュアルに走られたくないのだ。そして、普通のスーツ人間で成り立っていた会社組織も、急に社内がジーンズだらけになって風紀を乱されたくない。両者の狙いは合致した。

 だが、ビジネスカジュアルが普及している女とは違い、男に普及するには問題がある。女に普及した背景には、男にない習慣があるからだ。

 それは女の“監視社会”。派遣さんの派遣先での最初の洗礼は、仕事のプレッシャーではなく、女性社員やほかの派遣さんから“全身チェック”だという。出勤初日、頭のてっぺんからつま先まで、ずずいっとエックス線照射のように瞬間チェックが入る。

 ヘアカラーやスタイル(「ちょっとぉ、茶、強すぎじゃない?」)、化粧スキルや化粧品レベル(「見た目は及第。でも、下地はどうかしら」)、アクセサリー趣味(「あのイヤリング、下品よね」)、服のラベル(「あの年でこのブランド! いつまでお嬢様気分?」)、姿勢や歩き方(「オバサンぽさ、隠すのうまいわね」)、ヒールの高さ(「仕事の場で7センチヒールなんてNG」)、ネイル(「どこのお店かしら」)などなど。

 自分たちと同じか、違うのか。女には長い長い同性チェックリストがある。女は互いを監視し合う攻防があるから、否応なくファッションセンスが磨かれるのだ。

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