北海道に交通ICカード登場――Kitaca旋風どこまで続く?神尾寿の時事日想・特別編(2/2 ページ)

» 2008年11月21日 20時50分 公開
[神尾寿,Business Media 誠]
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Kitaca開始後は、予想を上回る普及ペース

 JR北海道の当初の予想では、目標普及枚数の9万5000枚は「JR東日本との相互利用と電子マネー開始が始まる、来年春以降に達成できるのではないかと考えていた」という。しかしその予想に反して、Kitaca開始後の“滑り出し”は極めて順調だ。

 「サービス開始から3週間弱という段階ですが、発行枚数は6万枚を突破しました。定期券の切り替えはお客様の更新時期にあわせて徐々に進むと考えていましたが、予想以上のペースで普及したのがプリペイド乗車券です。こちらは当初の目標普及枚数を超えています。このペースならば、2009年中に当初目標の9万5000枚の突破は確実でしょう」

 もうひとつ注目すべきは、Kitaca対象駅での利用率だ。取材時はサービス開始から3週間も経っていなかったが、すでに通勤通学時間帯ではKitaca利用者をよく見かける。実際の利用率も「(対象駅の利用率は)すでに20%を超えています。これも予想を上回るペースです」

 「札幌圏のお客様が、Kitacaをお待ちいただいていることは、モニター試験の時から手応えを感じていました。やはり首都圏における『Suicaの成功』が、全国的に認知されていることが大きい。それにしても、これほど早いペースで普及するというのは予想外でした」

 最近の地方都市における交通ICカード導入では、福岡の西日本鉄道「nimoca」など、早期に普及・利用促進に成功するケースが増えてきた。全国的なSuicaの認知度向上、さらに地方でも都市部では“クルマから鉄道・バス利用へ”の公共交通回帰がトレンドになっている。Kitacaの初動の良さも象徴するように、地方都市の交通ICカードや交通系電子マネーには追い風が吹いていると言えそうだ。

電子マネーと相互利用化への姿勢は?

 まずは交通ICカードとして順調な立ち上がりを見せるKitaca。来春にはJR東日本「Suica」との相互利用化と電子マネーサービスも開始し、普及枚数拡大と利用率の向上に拍車をかけたい考えだ。

 まず他事業者との相互利用は、すでにJR東日本の「Suica」との利用が決定している。

 「首都圏と札幌は人の交流がとても多い。ですから、まずSuicaと相互利用するだけでも、多くのお客様に利便性を感じていただけると思います」

 地元札幌では札幌市営地下鉄が2009年1月から「SAPICA」を導入するが、同じFeliCaベースの交通ICカードながら利用する仕様がKitacaなどJR系で主流の仕様と異なるため、「現状ではシステム的に相互利用化が難しい」という。

 「(SAPICAとの)相互利用については2005年の段階から協議しており、今も相互利用化に向けた検討は行っています。しかし仕様上の違いから、その実現時期は分かりません」

 一方、電子マネーは駅周辺を軸に加盟店を増やし、早期に利用率向上を図る交通系電子マネーの“王道を行く”考えだ。

 「電子マネーは、まずは駅ナカと駅ウエの店舗を中心に加盟店開拓をいたします。その後は駅周辺にKitaca電子マネー対応店舗を増やしていきたい。

 他の電子マネーとの共用化については、駅ナカは(JR東日本と同じく)Kitaca電子マネーのみで展開する計画です。駅ウエや駅周辺施設については、共用化は加盟店の判断に任せるというスタンスです」

 また、すでにJR東日本が導入する「Suicaポイントクラブ」のような電子マネー連動のポイントシステムについては、「今のところ(ポイントシステム導入の)計画はない」という。当面はポイントのお得さではなく、交通ICと連携するという便利さで、Kitaca電子マネーを訴求していくという。

 交通系電子マネーについては、他地域を見ても手堅く成功を収めている。Kitaca電子マネーで見ると、すでにイオングループなどで導入が進むSuica用共用端末の利用も可能になるため、街中展開もしやすい。Kitacaが成功する可能性は高いと言えそうだ。

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