どうなる、こうなる首都圏の鉄道網――未来編近距離交通特集(5/5 ページ)

» 2008年11月14日 16時00分 公開
[杉山淳一,Business Media 誠]
前のページへ 1|2|3|4|5       

そのほかの「今後整備について検討すべき路線」

【06】東京急行電鉄東横線の複々線化及び目蒲線の改良(2)

 東急目黒線の日吉−大倉山延伸については、東急、相模鉄道、JR東日本の相互乗り入れ計画「神奈川県東部方面線」に組み込まれた。同路線は2019年に開通する目標である。

【14】東京10号線の複々線化

 京王電鉄京王線の笹塚−調布を複々線化する計画。混雑区間であり、早期着工が望まれる。しかし残念ながら複々線化についての進ちょくはない。ただし、輸送改善と東京都の連続立体交差事業により、国領−布田−調布の地下化工事が進行中だ。京王電鉄によると完成は2012年度となっている。この事業により、多数の踏切が解消されるほか、調布地下駅の二層構造によって、京王電鉄京王線と京王電鉄模原線の平面交差が解消される。列車ダイヤに制約がなくなり、スムーズな運行ができるという。

【16】東京急行電鉄田園都市線の複々線化及び大井町線の改良(3)

 東急大井町線を延伸し、東急田園都市線の複々線部とする計画。二子玉川−溝の口は2009年6月完成予定。18号答申ではさらに鷺沼駅までの複々線化を提示している。現在のところ、東急からも沿線自治体からも具体的な情報はない。

 該当区間ではないが、鷺沼駅の1つ先のたまプラーザ駅は駅ビル再開発の一環として改良工事が行われた。従来の対向式ホーム※2本、線路2本の構造から、島式ホーム※2本、線路4本となっている。ただし、これが将来の複々線化の布石であるか、あるいは複々線化されるまでの輸送力改善のためであるかは明らかにされていない。

※対向式ホーム……片側のみが線路に接したホームを向かい合わせにしたもの
※島式ホーム……両側が線路に接したホームのこと

【18】東京12号線の建設及び延伸(2)

 都営地下鉄大江戸線を大泉学園駅まで延伸する計画をさらに発展させ、JR武蔵野線方面へ接続させる計画。東所沢駅へ接続される案が有力とみられている。新座市、清瀬市、練馬区、所沢市が都市高速鉄道12号線延伸促進協議会を結成して関係各方面への働きかけを行っている。現在のところそれ以上の進ちょくはない。

【21】区部周辺部環状公共交通(仮称)の新設(2)

 18号答申ではエイトライナーのうち、田園調布駅以北が「整備に着手すべき」路線だった。田園調布駅以南の羽田空港への路線は「整備を検討すべき」とされている。しかし、エイトライナー自体が進ちょくしていないため、こちらも当分は動きがなさそうだ。

【30】多摩都市モノレールの延伸(2)

 多摩センター駅から八王子駅、多摩センター駅と町田駅を結ぶ路線。最終回で紹介したように、計画はあっても進ちょくはない。多摩都市モノレールの経営基盤の整備と自治体の道路整備にかかっている。

【32】東西交通大宮ルート(仮称)の新設

 大宮−さいたま新都心−県営サッカースタジアムを結ぶLRT路線。発端は2002年のサッカーの日韓ワールドカップ開催に向けたスタジアムアクセス構想だったという。しかしこの路線は実現することなくワールドカップは終了した。さいたま市ではその後も検討を続けており、同市の鉄道新線整備検討調査によると、営業区間は13キロメートルで11駅を設置。概算事業費は1040億円、想定開業時期は2015年となっている。

 この構想のもと、その後のさいたま市の議会でもたびたび議員質問で提案、経過報告が求められている。さいたま市は「重要な取り組み」と捉えているようではあるが、事業主体も決まっておらず、これ以上の具体的な動きはない。ちなみに、2005年に埼玉県が設置した「埼玉スタジアムアクセス改善検討委員会」でも県営サッカースタジアムの試合開催日の混雑対策について検討している。しかし提言には東西交通大宮ルートには触れられていない。

【33】幕張地区の新しい交通システムの新設

 JR京葉線海浜幕張駅と総武線方面を結ぶ中量交通システムの整備案。こちらも事業主体がなく、具体的な進展はない。

 元々は千葉都市モノレールが運行する予定だったという。新交通システムは幕張新都心利用者の要望が高く、「幕張新都心まちづくり協議会」の交通アクセスに関するアンケート調査でもJR線の増便などと並び上位になっている。千葉市は2007年11月に「千葉市総合交通ビジョン −交通政策の基本指針−」を策定しており、そこには「連節バスの利便性向上、新しい交通システムの導入可能性検討」と記されている。

 この区間の現在の公共交通機関は京成バスである。乗客が多い区間であり、バスを増便すると渋滞を起こし、それがバスの運行を妨げかねない。京成バスでは幕張本郷−幕張メッセ・千葉マリンスタジアムに大型の連接バスを投入して対応している。その京成バスは2008年8月、千葉市に提案して千葉市幕張新都心公共交通活性化協議会を発足させた。協議会の内容は公表されていないが、新交通システム、バスレーンの強化など、何らかの新たな提案が行われたようである。

 →どうなる、こうなる首都圏の鉄道網――(1)横浜エリア編

 →どうなる、こうなる首都圏の鉄道網――(2)東京エリア編その1

 →どうなる、こうなる首都圏の鉄道網――(3)東京エリア編その2

 →どうなる、こうなる首都圏の鉄道網――(4)東京駅周辺編

 →どうなる、こうなる首都圏の鉄道網――(最終回)成田新線・新交通編

 →どうなる、こうなる近畿圏の鉄道網(前編)

 →どうなる、こうなる近畿圏の鉄道網(後編)

前のページへ 1|2|3|4|5       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.