どうなる、こうなる首都圏の鉄道網――未来編近距離交通特集(3/5 ページ)

» 2008年11月14日 16時00分 公開
[杉山淳一,Business Media 誠]

【22】東京臨海高速鉄道臨海副都心線の建設及び羽田アクセス新線(仮称)の建設(2)

東京臨海高速鉄道Webサイトより

 東京臨海高速鉄道りんかい線東京テレポート駅から分岐し、羽田空港へ延伸する計画。後述するようにすぐにでも実現可能だと思われる。しかし進展はない。

 りんかい線はもともと千葉方面と大井埠頭(ふとう)の東京貨物ターミナルとをつなぐ貨物専用線として国鉄時代に建設された。しかし鉄道貨物輸送の停滞と貨物列車の運行計画の変更により未使用のままだった。国鉄が分割民営化された時に同路線は第三セクターの旅客鉄道「東京臨海高速鉄道」として転用された。

 すでに計画通り東京テレポート駅と大井埠頭を結ぶトンネルは完成しており、現在は東京貨物ターミナルに隣接してりんかい線の車両基地が設けられている。ここから東海道貨物線に乗り入れが可能だ。東海道貨物線は羽田空港の西側、京浜急行電鉄と東京モノレールの天空橋駅付近を通過する。ここに駅を設けるか、分岐して羽田空港ターミナルに接続させる、という路線が18号答申で示された。

 既存の路線を活用すれば比較的少ない費用で建設できる路線だ。しかし、進ちょくしていない。東京臨海高速鉄道はJR東日本が出資しており、現在羽田空港に乗り入れている東京モノレールもJR東日本の子会社である。このことからJR東日本が競合に難色を示しているという見方もある。また、近年になって社会的に貨物鉄道が見直されており、東海道貨物線の乗り入れが得策かという議論もあるからだろう。

 18号答申もJR東日本も、東京モノレールとりんかい線が接続する天王洲アイル駅を整備し、乗り換えを容易にする案がある。現在の天王洲アイル駅は両路線の駅が接続しておらず、乗り換えのためには道路を横断歩道で渡る必要がある。東京モノレール側の乗り換え改札は羽田方面にしかなく、羽田からりんかい線方面に向かう客は何度も階段を上下しなければならない。エスカレーターは上りにしかなく、大きな荷物を持った空港利用客に乗り換えを推奨できる状態ではない。もしこの計画が棚上げされたままならば、天王洲アイル駅を大改造し、乗り換えルートを整備する必要がある。

 羽田空港への鉄道アクセスで、JR東日本系列の東京モノレールと京浜急行電鉄は競争している。勝負は五分五分という話だ。京浜急行電鉄は東京だけではなく、横浜からの利用客も獲得している。JR東日本陣営はりんかい線の延伸か天王洲アイル駅の改修で、千葉方面の利用客をもっと獲得できるはず。手をつけていないとはもったいない話である。

赤字がりんかい線(点線は入出庫線)、青地が東海道貨物線

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