3人の“セルフコーポレート”――私の起業物語郷好文の“うふふ”マーケティング(2/2 ページ)

» 2008年11月13日 18時00分 公開
[郷好文,Business Media 誠]
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ビジネスモデルとは“心の通り道”

 経営の教科書に、ビジネスモデルとは「もうけを生み出す具体的な仕組み」とある。

 ある人から“看板管理の請け負い”という事業アイデアを聞いた。ビルの屋上や壁面にトコロ狭しと並ぶ看板。数年に一度、設置場所や契約期間など管理状況を自治体に報告する義務がある。その報告業務を代行するビジネスだ。看板数の多さと管理報告が法令で必須という条件から、確実な収益が見込めるナイスアイデアだと直感した。

 だが生来の看板好きならともかく、「お金の通り道が見える」だけでヤル気になれるだろうか? 「会社のために3年がんばれ」と言われてもツライだろう。まして独立するきっかけにはなりえない。

 思うに、事業を始めるには「市場機会」と「自分の情念」の2つが重要ではないか。タイミングはマストだが、それだけではダメで、情念がなければ続かないように思う。市場ニーズだけで商売を始めると、いずれ痛い目に遭うだろう。お客さまの「いいね!」の心と、事業をする自分たちの「いいな!」の心を通わせる。ビジネスモデルとはそんな“心の通り道”を創ることだと思う。

“アラティーン”の原点

 情念とは何だろうか? Cherryさんの原点は料理だ。先日頂いたお手製のロールケーキは、しっとりとしたスポンジのまん中に焼きリンゴのフィリング(詰め物)、さらっとした生クリームが絶品だった。

Cherryさんお手製のロールケーキ

 “さらっとしていた”理由はラム酒。リンゴを煮る時にラム酒を使う。それなら「クリームにもラムを入れたら」と発想する。彼女にとって創作の原点は料理にある。

 noirさんは絵が上手かった。小・中学生のころの絵はことごとく入選して、公共施設に飾られてしまいほとんど手元にない。かく言う私は何時間も美術館を漂う文化系のネクラだった。

 やりたいことの芽はたいてい10代、20代前半までにある。やりたくても、やろうとさえしなかった夢がそこにある。情念からの事業とは“アラウンド・ティーンへの原点回帰”でもある。

3人のよさ

 「3人だと落ち着きますよ」

 ある人が言った。2人だと議論の収拾がつかないが、3人なら「まあまあ」と合いの手も入る。

 事業の名は“utte”とした。ネーミングのきっかけは、Cherryさんのひと言からだ。ちょっとアバンギャルドな名前だが、私は瞬時に賛成した。Webサイトデザインのある部分を私が変えたとき、noirさんは最初反対した。でも私はこう言った。

 「ごめん、これは議論の余地なしなんだ」

 「じゃあしょうがないな」とnoirさん苦笑。

 Cherryさんが振り出し、私が広げ、noirさんが引き取って実行する。サッカーに例えればセンタリング、ポストプレー、シュート。役者がうまくそろった。理性も感性も体力も鍛えられる新事業のスタートである。

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