5分で分かる正しい会社の辞め方山崎元の時事日想(1/2 ページ)

» 2008年11月06日 07時00分 公開
[山崎元,Business Media 誠]

著者プロフィール:山崎元

経済評論家、楽天証券経済研究所客員研究員、1958年生まれ。東京大学経済学部卒業後、三菱商事入社。以後、12回の転職(野村投信、住友生命、住友信託、シュローダー投信、バーラ、メリルリンチ証券、パリバ証券、山一證券、DKA、UFJ総研)を経験。2005年から楽天証券経済研究所客員研究員。ファンドマネジャー、コンサルタントなどの経験を踏まえた資産運用分野が専門。雑誌やWebサイトで多数連載を執筆し、テレビのコメンテーターとしても活躍。主な著書に『会社は2年で辞めていい』(幻冬舎)、『「投資バカ」につける薬』(講談社)、『エコノミック恋愛術』など多数。ブログ:「王様の耳はロバの耳!


 “サブプライム不況”の中とはいえ、転職を決める人はいる。先日も筆者の本の読者から、「転職が決まった」というお便りを頂いた。この便りの中で、会社を辞めるまでの日々の過ごし方についてご質問があった。今回は、彼の転職のお祝いを兼ねて、転職で会社を辞める場合の一般的な注意事項について述べておこう。

 私見によると、どのように会社を辞めるかは、その後の人生に影響するため「大事」だ。会社を辞めるときのあれこれは、おそらくずっと記憶に残る。

 転職が理由で現在勤めている会社を辞めるプロセスは、かつては会社とのトラブルの可能性も覚悟する一大イベントだった。しかし近年は会社自身も、他社から中途採用者を採用するようになったし、社員が転職で辞めるケースも増えた。会社側は、意識の上で「転職」を罪悪視することが少なくなったし、手続きの上でも社員に「辞められ慣れた」。転職が異例で、上司そのほかの慰留の説得に手こずったり、それでも「辞める」と言った場合に嫌がらせを覚悟することは減った。

 かつてであれば「退職の意思は金曜日の午後くらいに上司に切り出すといい」といった細かなテクニックがあったが、最近はすんなり行くことが多い。ちなみに「辞表を出すのは金曜日の午後」という意図は、慰留の説得に対して「大事な問題なので、週末にじっくり考えます」と言って、週末に「水入り」を作ることができる効果にあった。

 いずれにせよ、退職手続きに関しては、次の職場との関係も考えて自分で決めた日程を守ることが大切だ。

退職の意思を伝える順番は大切

 昔も今も大切なのは、退職の意思を伝える手順だ。直属の上司によほどの恨みでもあるのでなければ、直属の上司に最初に辞意を伝えるべき。噂が先行したり、直属の上司をとばして上司の上司に先に話したり、人事部に対する手続きを先に行ったりすると、直属の上司との関係が気まずくなる。これは、後で冷静になってから、「大人げなかった」と気付くことが多いし、周囲もそう見るので、後悔の元となりがちだ。転職による退職手続きの時には、精神が過剰に高揚する場合があるから気を付けよう。

 会社を去るまでの日々全般に言えることだが、後から考えて精神的な「負い目」になるようなことをするべきでない。

 よくあるのは、小さな嘘。例えば転職先が決まっていて辞めるのに、これを言うと面倒だからと「留学したいので辞める」などと誤魔化すケースがある。しかし、小さくても嘘は嘘だ。余計な嘘をつくと、気まずい相手が世の中に増えて、それだけ自分が弱くなる。

 行き先を聞かれた場合は、「転職先は決まっています。ただ、どこに行くかは、あなた(上司など)には関係ないので、退職の日まで申し上げません」と堂々と言うのがいい。行き先を言う言わないは半分は好みの問題だが、行き先を早く明かすと、これに何となくケチを付けたがる同僚が現れたり、場合によっては転職自体に邪魔が入ることがあるので、迷った場合は最終日まで言わないことをお勧めする。ただし最後のあいさつの際には、行き先をはっきり述べておくのがいい。

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