第11話 お客様の声にはワケがある――データ収集の注意点Webビジネス小説「中村誠32歳・これがメーカー社員の生きる道」(1/3 ページ)

» 2008年11月04日 23時00分 公開
[眞木和俊,Business Media 誠]

この物語は……?

 中村誠、32歳。静岡県出身、東京の中堅私立大学を卒業し、彼女いない歴3年。加工食品メーカー「アイティフーズ」に入社してちょうど10年目を迎える中堅社員です。誠が社会人として働いてきた10年間は、日本経済が停滞し“失われた10年”といわれた時代。年功序列制度が成果主義に代わり、後輩が入らず今までずっと下っ端として働いてきた誠も、そろそろ「中堅社員」と呼ばれる年代になってきました。

 これまでマネジャーとすら呼ばれたことがない誠は、ある日突然、社内プロジェクトのリーダーに登用されます。ビジネスリーダーの心構えとは? 部門横断型のプロジェクトを成功させるコツとは? 本連載では小説形式で、誠が奮闘しながら成長していく姿を描いていきます(登場人物一覧は記事の最後にあります)。


 中村誠がリーダーを務める部門横断プロジェクトチームでは、高濃度イソフラボンを使った新商品の方向性を決めるため、社内の予備調査を行った。コンサルタントの橋下悟からデータ分析の手ほどきを受けた誠たちは、外部機関に依頼する本調査に向けて調査内容を見直すために、プロジェクトチームで討議することにした。その準備の最中、 “I2プロジェクト推進事務局”から、誠に1通のメールが届いた。I2プロジェクト推進事務局とは、アイティフーズ内で進められている全社業務活性化活動4プロジェクトの推進取りまとめを行っている事務局だ。誠たちのプロジェクトも、この4プロジェクトの1つである。

事務局メール リーダーの皆様、プロジェクト遂行お疲れ様です。さて活動キックオフから早4カ月が経過しました。そろそろ結果が出始めたチームもいくつかあると伺っております。ついては、当初の計画にあるとおり、小石川社長を含めた全役員向けの「プロジェクト成果報告会」の開催日程を決定したいと思いますので、各リーダーはご確認をよろしくお願いします。

 うへえ、もう結果が出てるチームもあるんだ。僕たちなんか、まだ現状分析を始めたばかりなのに……。そうでなくてもウチはいわゆるコスト削減活動じゃないから、そうすぐに結果は出ないんだよな。今のところどんな成果を報告できるかなんて、とても想像がつかないや。

 成果報告会の日程を確認してみると、約2カ月後に迫っている。推進事務局からのプレッシャーを感じて、思わず誠は呻いてしまった。

 次の定例討議の日、誠は今までの検討内容の整理を兼ねて、最初の仮説を再確認することから始めることにした。

 今日は、本調査を始める前に予備調査結果から得た仮説を整理しておきたいと思います。なぜなら本調査の目的は、お客様に直接意見を聞くばかりでなく、新商品の具体的な方向性を検証するためでもあるからです。

 ここで誠は、以前ホワイトボードで星野と一緒にまとめた資料(下図)を示しながら続けた。

新商品企画のための仮説

 今回の分析で分かったことは、対象者全体にとって影響が大きい条件が「包装容器」と「販路」で、それぞれ「紙パック」と「通販」が好まれるということです。これらが現時点での仮説になるのですが、この点についてどう思いますか?

 一同を見回しながら誠が質問を投げかけると、浜崎が答えた。

浜崎 以前リーダーが作ったこの図の横軸で考えても、狙う方向性に合っていますし、ウチの類似する健康食品の場合でも同様の傾向があります。

       1|2|3 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.