新聞の経済記事はどこがダメなのか?山崎元の時事日想(2/2 ページ)

» 2008年10月30日 07時00分 公開
[山崎元,Business Media 誠]
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 また、時には取材される身でもあるので少し言いにくいが、市場関係者の年末の株価予想を一覧表にしたようなデータは何の役にも立たない。他人の予想を見て、後からその外れ具合を楽しむ大人の読者が少々いるかもしれないが、専門家を過剰に信じる読者へのミスリードの方が心配だ。

 金融機関のエコノミストやストラテジストといえども、特段に優れた予測能力を持っているわけではない。金融マン本人の口からは、商売上そうだとは言えないが、通常、彼らの予測にニュースバリューといえるような価値はない。まして、金融市場の知識が不十分なファイナンシャルプランナーの予測やお勧め金融商品まで載せることがあるのはいかがなものか。記者自身がよく分かっていないこともあるのだろうし、それゆえに書くことがないという事情があるのだろが、この種の一覧表を見ると、筆者は「記者の手抜き」だと思わずにはいられない。

「紙」を中心に考える新聞社

 それにしてもネットの情報に比べて(テレビの情報にさえも)、紙の新聞の情報がスピードの点で大きく劣ることの不利度合いは、ネットの情報の充実とともにますます広く明らかになるだろう。スピードで劣っても紙の媒体の提供する情報が「情報としての価値」を持つには、内容的に相当に「深い」情報なり分析なりがあるのでなければならない。媒体としての競争力を考えると、紙の新聞は「情報の新しさ」の点で大きく劣っているのだから、記事の内容は、せめて現在の週刊専門誌並みである必要があると思う。

 しかしネットでも「深い」情報は提供可能だし、さらに紙にはない、過去の記事も含めた「検索」や「関連付け」の利便性もある。

 新聞は既に「紙」が重荷になっている。紙ならではの強みとは何か? そこを考えて打ち出さない限り、「紙」を中心に考える新聞社は衰退するだろう。

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