第10話 データを生かすか殺すかの分かれ道――パネル分析とは? Webビジネス小説「中村誠32歳・これがメーカー社員の生きる道」(2/3 ページ)

» 2008年10月29日 20時00分 公開
[眞木和俊,Business Media 誠]

 こうして、誠、坂口、山口の3名で午後から橋下悟を迎えることとなった。実際に会った橋下は星野よりずっと若そうで、すらりとして背が高く、よく見ると少し髪を茶色に染めているようだった。

橋下 初めまして、ジェイネックスの橋下と申します。星野から話は伺っていますが、今日が初めてなのでよろしくお願いします。

 わざわざ来てくださって、ありがとうございます。早速ですが、星野さんに教えていただいたパネル分析をやるために、予備調査データは集まりましたが、その後の分析処理方法が分からないので教えてもらえますか? データはこのUSBメモリに入れてあります。

橋下 承知しました。それでは、そこにあるプロジェクターで投影しながらご説明したいと思います。

 橋下は、会議室に置いてあるプロジェクターを指差すと、慣れた手つきでノートPCを立ち上げ、USBメモリ内のデータを取り出した。プロジェクターで映し出された画面には、誠が見たことのない統計処理ソフトが立ち上がっていた。

橋下 このソフトは、皆さんが使っている表計算ソフトのデータをそのままコピーして使うことができます。ちなみに今回のパネル分析では、7つの条件で各2レベルの組み合わせ表を使っていますね。こうすれば、まったく同じ表を作ってくれます。

 橋下は、ソフトを器用に操作しながら、誠たちがパネル分析設計に使った表を作り出した。

橋下 それから、このように表の右側に山口さんが作った調査結果のデータを貼り付けます。これで後はソフト上でいろいろな分析が可能になります(下表参照)。

予備調査の入力結果

山口 でも、これだけでは私たちが作った表と何も違わないように見えますが?

橋下 そのとおりです。でもここからが、このソフトの面白いところなんですよ。

 そう言うと橋本は別のプルダウンメニューを操作した。新しいウィンドウを開いていくつか設定を行うと、瞬時に画面に複数のグラフが表示された(下表参照)。

予備調査結果の主効果図分析

坂口 あ、これは主任が説明してくれたグラフだ。「主効果図※」っていうんですよね。

※主効果図……各条件のそれぞれのレベルの(得点)結果の平均をプロットして、グラフで比較したもの。結果に対してどの条件による影響が大きいかを、グラフの傾きで見ることができる。

橋下 坂口さん、よくご存じですね。では、説明ついでに図の見方も紹介してもらえますか?

坂口 いいですよ。主効果図を見るポイントは2つで、それぞれのグラフの傾きの大きさとグラフのどちらのレベルの点数が高いのか、ということで判断します。一般にはグラフの傾きが大きいほど結果に与える影響が大きく、同じ条件内の点数が高いほうのレベルが回答者に好まれていることを示しています。

 ということは、女性の意見では「包装」「販路」「単位」という条件の影響度合いが大きくて、それぞれ「紙パック」「通販」「1本」の方が好まれるわけですね。

山口 男性の意見でも「包装」「販路」「単位」の条件が影響しているけど、選ばれるレベルは「ビン」「通販」「箱(6本)」で女性とは違っていますね。どうしてなのかな?

橋下 しかも男女合わせた全員の意見だと「単位」の影響が少なくなって、「包装」「販路」だけになりました。選ばれるレベルは女性の意見と同じのようですね。

 ええと、橋下さん。主効果図の意味は分かりましたけれど、どうして男女とも同じ条件に影響されるのに選ぶレベルは異なるのでしょうか?

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