第10話 データを生かすか殺すかの分かれ道――パネル分析とは? Webビジネス小説「中村誠32歳・これがメーカー社員の生きる道」(1/3 ページ)

» 2008年10月29日 20時00分 公開
[眞木和俊,Business Media 誠]

この物語は……?

 中村誠、32歳。静岡県出身、東京の中堅私立大学を卒業し、彼女いない歴3年。加工食品メーカー「アイティフーズ」に入社してちょうど10年目を迎える中堅社員です。誠が社会人として働いてきた10年間は、日本経済が停滞し“失われた10年”といわれた時代。年功序列制度が成果主義に代わり、後輩が入らず今までずっと下っ端として働いてきた誠も、そろそろ「中堅社員」と呼ばれる年代になってきました。

 これまでマネジャーとすら呼ばれたことがない誠は、ある日突然、社内プロジェクトのリーダーに登用されます。ビジネスリーダーの心構えとは? 部門横断型のプロジェクトを成功させるコツとは? 本連載では小説形式で、誠が奮闘しながら成長していく姿を描いていきます。

前回までのあらすじ

 中村誠は、アイティフーズで新製品開発プロジェクトのリーダーを務めている。消費者調査を行い、どのような商品にするかを決定することになったが、調査結果の分析方法を聞いていなかったことに気付く。しかし、頼みの綱のコンサルタント・星野仙八は海外出張中で……(登場人物一覧は記事の最後にあります)


 予備調査データを集計した翌日、中村誠は朝から落ち着かない気分で、飲料開発部の同期・坂口賢二からの連絡を待っていた。しかし待ちかねた誠にかかってきた電話は、コンサルティング会社ジェイネックスの橋下という人物からだった。

橋下 アイティフーズの中村さんでしょうか? 初めまして、私、星野と同じ会社の橋下悟(はしもとさとる)と申します。突然のお電話で申し訳ありません。

 あの、どういったご用件でしょうか?

橋下 昨日中村さんから星野あてにメールでご相談いただいた件です。星野が出張中で対応できませんので、代わりに私が対応するように言われました。もしお急ぎであれば、今日の午後にでもそちらに伺ってご相談にのりたいと思いますが、いかがでしょう?

 師匠……もとい、星野さんの代理の方ですか。それは、わざわざご連絡ありがとうございます。ただ、ご質問した内容については社内でなんとかなりそうなんです。今、その連絡を待っているところなんですが、まだはっきりしなくて。

橋下 もしご不安があるようなら、せっかくの機会ですからご説明に伺いますよ。私もアイティフーズさんの別のプロジェクトチームを担当していて、そちらのフォローもありますから。いずれにせよ、中村さんも早く分析を進めたいとお考えでしょう?

 もちろん、そうしてもらえれば助かりますけど。

橋下 では、午後2時に御社に伺います。アイティフーズ商品企画室の中村さんをお訪ねすればいいんですよね?

 橋下は星野よりも若い感じだが、丁寧でしっかりとした口調だったと誠は思った。

 ひょっとして僕と同世代のコンサルタントなのかもしれないな。それにしても坂口のやつ、いつになったら連絡してくるんだろ。

 その坂口から電話がきたのは、昼前になってからだった。

坂口 連絡が遅くなってごめん。主任が朝から会議で捕まらなくってさ。でも、例の分析のやり方は大体分かったぞ。ただし飲料開発部にある統計処理ソフトはライセンスの使用期限が切れてて、すぐに使えそうにないんだ。もっとも主任に言わせれば、「俺たちが若い頃には、このぐらい電卓叩いて計算したもんだ」だってさ。

 いや、分析方法が分かっただけでもありがたいよ。実はさっき師匠の会社の人から電話をもらって、午後こっちにきてくれることになったんだ。きっとその人ならPCやソフトも使えると思うから、坂口もこちらに合流して一緒にやってもらえないかな?

坂口 OK。その人は何時に来るんだい?

 午後2時に来るって。山口さんも時間を取れるみたいだから、一緒に入ってもらうつもりだよ。

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