連載
» 2008年10月23日 13時25分 UPDATE

郷好文の“うふふ”マーケティング:日本は“少子・多ペット社会”? ワンコを増やして街おこし (1/2)

犬と猫の数は合わせて約2500万匹、15歳未満の子どもは1750万人――。すでに日本は子どもより、ペットの方が多いのだ。ならばどうやって“共生”すればいいのか。そのヒントはお風呂にある……?

[郷好文,Business Media 誠]

著者プロフィール:郷 好文

マーケティング・リサーチ、新規事業の企画・開発・実行、海外駐在を経て、1999年より2008年9月までコンサルティングファームにてマネジメント・コンサルタントとして、事業戦略・マーケティング戦略、業務プロセス改革など多数のプロジェクトに参画。 2008年10月1日より独立。コンサルタント、エッセイストの顔に加えて、クリエイター支援事業 の『くらしクリエイティブ "utte"(うって)』事業の立ち上げに参画。3つの顔、どれが前輪なのかさえわからぬまま、三輪車でヨチヨチし始めた。著書に「ナレッジ・ダイナミクス」(工業調査会)、「21世紀の医療経営」(薬事日報社)、「顧客視点の成長シナリオ」(ファーストプレス)など。中小企業診断士。ブログ→「マーケティング・ブレイン」


 私の母はかつて自宅でトリマー、犬の美容師をしていた。ちっちゃいトイプードルもでっかいスタンダードプードルも我が家にやって来た。お風呂場に連れ込み、トリマー専用台にのせる。犬は早々に観念する。専用の浴槽もシャワーもなく“人犬兼用”。濡れ犬にすると体毛がペタンとして、想定外に細いカラダになる。ヨソの家での寂しさも手伝って、キャイ〜ン……とかぼそく鳴くワンコもいた。

yd_dog.jpgyd_dog1.jpg トリミング前のプードル(左)、トリミング後のプードル(右)

 でも濡れ犬もドライヤーでふかふかになり、良い匂いになると元気に吠えだす。やがて飼い主に「○○ちゃん! キレイになったねぇ!」と抱きしめられてクンクンと鳴いて帰っていく。『お風呂、気持ちいいワン』と、犬も感じていることだろう。トリマーは結構重労働だが、飼い主にもペットにも喜ばれる仕事なのだ。

ペット入浴施設付きマンション

 そんな幼少の記憶を呼び覚ましたのは、ペットマーケット会社のペイクが展開する「ペット入浴施設付きマンション」。賃貸マンションにペット専用の入浴施設「PeikuBATH」を設置することで、ペットを飼う入居者がいつでもシャンプーやカットができる。また設備は、近所のペットオーナーに有料で解放できる。ペット好きを満足させることで、マンションの付加価値をアップさせる好企画である。

yd_PeikuBATH.jpg PeikuBATH

 大型犬がすっぽり入る浴槽には、小型犬用にせり上がる台座もあり、ブラシ付きシャンプーや乾燥機能、使用後の自動洗浄機能を備える。利用は携帯電話またはPCでネット予約し、暗号解錠で入室、料金は提携先のオリコカードで支払う。無人運用が可能で、料金制度も居住者には無料(賃料に含むなど)、外部者には有料などオーナーの意向などに合わせられる。

 トリマーに頼めば4000円から5000円するシャンプー、財布の事情を考えて月に1回くらいが平均。しかし無料なら月に2.7回は洗ってあげたいと飼い主は考えているそうだ(いずれもペイク調べ)。駐車場1台分のスペースで設置できるペット共生システム(初期費用500万円)を考えたのはペイクの野中英樹社長。事業のきっかけは不動産だった。

不動産開発からペット事業モデルへ

yd_nonaka.jpg ペイクの野中英樹社長

 「家主のお父さん、お母さんを何とかしてあげたいと考えたんです」

 野中社長は1980年代後半まで、不動産開発会社の営業として土地の仕入れや企画提案で活躍した。バブル崩壊以後は賃貸マンションの営業に転じて、これも成功。だが不動産不況が深まり、賃貸マンションは空室率が増え、借金をして建てたオーナーのお父さん、お母さんたちが苦境に立たされた。マンションの付加価値を上げるにはどうすべきか? そんな時代の曲がり角で、野中社長は仮説を立てた。

 自らの経験(賃貸住宅に入居しようとしてペットを断られた)から、ペットと住宅がテーマだと感じた。預貯金80万円をはたいて、ペット先進国である米国に行き、ペットビジネスについて調べた。

 そこではペットが家族の一員であり、まさに生活の一部となっていた。ドッグラン(犬をつながせずに遊ばせることのできる広場)で面白いビジネスモデルに出会った。電気料金の領収書を示せば、ドッグラン施設を無料で楽しめるというものだった。それは電力料金の徴収促進や高騰した電力料金を補てんするためのサービスだった。電力会社+ペットオーナー+ドッグラン施設を結びつけるビジネスモデルにうなった。

 いずれ日本でもペットブームがやってきて、こんなビジネスモデルが可能になるはず。それには何が足りないだろうか? ボトルネックは住宅だ。賃貸住宅のペット可の比率は、東京都区部で8%(不動産経済研究所調べ)。ペットと共生できるマンションを造ろう。生来の犬好きも手伝って、事業の軸が定まった。

 ペイクの前身となる事業体でフットシャワー(散歩後の足の洗浄)、うんちダスト(砂利や小石とうんちを一緒に流せる)などを備えた賃貸不動産を開発。集合住宅の8割がペット可になる貢献をしてきた。日本のペット数は犬・猫だけで約2500万匹。なんと子どもの数より多い(15歳未満の子どもの数は1750万人)。日本はすでに“少子・多ペット社会”に突入しているのだ。

       1|2 次のページへ

Copyright© 2017 ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

新着記事

注目のテーマ