投信王1位「もりた」さんへの伝言山崎元の時事日想(2/2 ページ)

» 2008年10月23日 07時00分 公開
[山崎元,Business Media 誠]
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非凡な運用をする「もりた」さん

 「もりた」さんの運用は、相場が下落局面だと読んでおられたようで、現金比率を高めながら、リバウンドを取りにいったようだ。ディフェンシブ株(下げ相場で下がりにくい業績の安定した株)を中心に買ったというのは、タイミングを失敗したときのことも考えてのことだろう。もっとも相場全体のリバウンドを当てた場合は、ディフェンシブでない株の方が反発が大きいことが多いので、この作戦の可否は微妙だ。

 非凡なのは成功した後のリードの守り方だ。中盤で1位に躍り出た後、彼は、ほかの上位者の運用方法を分析して、「日々の値動きから、上位者がどの銘柄を持っているか大体分かった」という。そして上位者の保有銘柄と同じような銘柄を組み入れて“相対的”に負けないポートフォリオを構築し、逃げ切りに成功したというのだ。

 これは現実の運用会社もよく使う手だ。例えば、1年間で当面のライバル会社に対するリードを作れた場合、その後1、2年大きな賭けをせずに、相手と似たポートフォリオを持つ。その間、顧客には「過去3年間の平均パフォーマンスは当社が勝っています」と言える、という仕掛けである。

 ゲームとして考えると、確かにそのようにするのがいいという戦略に割合簡単に行き着くかもしれないが、自分を過信したり、日々の相場を見て方針が揺らいだりすると、安全運転による逃げ切りが上手くいかないことも多い。この点、「もりた」さんは大人であり、感覚が既にプロ的でもある。

 この種のイベントは、1位になるのとそうでないのとでは価値が大きく違う。上位のライバルたちは、彼のポートフォリオをもっと研究して、大きなリスクを取って勝負に出るべきだったかもしれない。

「投信王」夏の陣の表彰式(10月14日撮影)

仮に筆者が参加すれば「ボロ株」狙い

 仮に、筆者が参加するとすればどうするだろうか。参加者の中で1位ないしは、それに近い成績を取ることに価値があるというゲームの性質を考えると、たぶん、50円額面なら100円割れ、ないしは100円前後くらいの株価に下落した、いわゆる「ボロ株」を集中的に集めて、リバウンドを狙うだろう。ゲームの性質にぴったり適応するには、銘柄数は少ない方がいいのだろうが、現実の運用でも“おかしくないように”という意思が少しは働くので、銘柄数は多くなりそうだ。ただいずれにしても、株式の組み入れ比率を高めて勝負するタイミングが重要になる。率直に言って、好成績を収める自信は全くない。

 3カ月の運用で、1銘柄10%に近いところまで集中投資できる、ということになれば、トップを取れるかどうかは大まかには運だろうが、今回の「夏の陣」の優勝者である「もりた」さんには、既にプロであってもおかしくない成熟を感じる。好感の持てる若者に「おめでとう!」と言いたい。

 実現した「運」は、既に君の財産だ。これを生かして、張り合いのある人生を歩んでほしい。将来、運用に関係のある世界に身を置いてくれるなら大変嬉しい。

 →「中2でApple株を買った」――投信王1位の東大生に運用の極意を聞いてきた

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