住宅バブルは再来する? “日本版サブプライムローン”の危険性(後編)著者インタビュー(2/2 ページ)

» 2008年10月22日 08時30分 公開
[土肥義則,Business Media 誠]
前のページへ 1|2       

“緩め過ぎ”と“締め過ぎ”政策が問題

日本版サブプライム危機 住宅ローン破綻から始まる「過重債務」の著者・石川和男氏

 日本版サブプライム危機を引き起こす原因となりうるのは、果たして住宅ローンだけなのだろうか。「景気を刺激するために住宅ローンの審査基準などを甘くしたことは、“緩め過ぎ”の政策。その一方でコンプライアンス強化という名目で、消費者ローンの貸し出しを厳しくしたことは“締め過ぎ”の政策だ」と批判する。

 石川氏が指摘する“締め過ぎ”の政策とは、消費者ローンやクレジット、信販などへの規制を強化する改正貸金業法のこと。改正貸金業法の目玉は上限金利の引き下げと、借金の総額を年収の3分の1までに抑える総量規制の設けたことだ(2010年6月までに行われる予定)。これまでの上限金利は29.2%だったが、改正貸金業法が施行されると上限金利は15〜20%に引き下げられる(ほとんどの貸金業者はすでに貸出金利の上限を引き下げている)。

 総量規制を設けたことと上限金利の引き下げにより、貸金業者の融資審査が厳しくなったため、借り手側はこれまでと同様に融資を受けることが困難になったのだ。そして融資を断られた借り手は、超高金利のヤミ金融に走る可能性も指摘されている。「多くの人が誤解しているが、借り手にとっては金利が高いことより、必要なときに必要なお金を借りられないことが問題。住宅ローンの返済に困って、消費者金融などからお金を借りる人も少なくない」。“緩め過ぎ”と“締め過ぎ”、この両方の政策に苦しめられ、最終的にヤミ金融に頼ってしまう人に適切な対処法を教えていくことが不可欠だろう。

 とかく複数の貸金業者から借金をする「多重債務」がやり玉に挙げられるが、1社から返済能力を超えた借入をする場合も含めた「過重債務」の方が問題だ。住宅ローンの甘い審査基準により、返済能力を超えてお金を借りていれば、それはまさに「過重債務」。これについてはあまり問題視されていないが、いくつもの貸金業者からお金を借りている「多重債務」ばかりを取り上げることは「借金問題の本質を隠しているだけのこと」と指摘する。

 最後に石川氏はこう語った。「過重債務に陥った発端には、住宅ローン破たんが多いのではないか。“緩め過ぎ”と“締め過ぎ”の政策による犠牲者が増える前に、貸し手・借り手双方の責任を明確にしなければならない。そして政府は、犠牲者を立ち直らせる手立てを早急に着手することが必要だ」

 →今、そこにある“日本版サブプライムローン”の危機(前編)

 →住宅ローンの返済が滞ったとき……銀行への対処法は?(中編)

 →住宅バブルは再来する? “日本版サブプライムローン”の危険性(後編)

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.