日興アセットマネジメントが主催するバーチャルトレード選手権「投信王」(参照記事)。10億円の仮想資金を日本株で運用し、成績を競うというものだ。投信王では期間ごとに優秀な成績を収めた人を表彰しており、夏の陣(7〜9月)の表彰式が10月14日、東京ミッドタウンで開催された。
夏の陣が開催された7月から9月、日本市場は大荒れだった。7月には日経平均株価が12営業日続落、8月には不動産大手のアーバンコーポレーション、9月には米リーマン・ブラザーズがそれぞれ破たんしたため、市場の不安心理が悪化した。夏の陣期間中の日経平均株価騰落率は、マイナス16.48%だった。
そんな厳しい相場環境下、2358人の参加者の中で最も優れたパフォーマンスを叩き出したのがHN(ハンドルネーム)「もりた」さん。3カ月間でプラス34.53%という驚くべきパフォーマンスを記録したのだ。日興アセットマネジメントのビル・ワイルダー社長も、「運用経験が長いファンドマネージャーでも苦労するような相場環境で、こんな数字を出せるのは“天才”と言える」と絶賛した。
もりたさんは東京大学文科二類の2年生(経済学部に進学予定)、同大学の投資サークル「Agents(エージェンツ)」のメンバーでもある。好成績の理由を尋ねられたもりたさんは「購入した銘柄が翌日に15%上げたりと運が良かった」と謙遜するが、この下げ相場をプラス収支で終えられたのは2358人のうち、わずか33人。もりたさんは、いったいどのような運用をしていたのだろうか?
かなり市況が悪いと感じていたもりたさんは、積極的に株式を購入することは控え、現金比率を高める作戦に出た。購入する銘柄はAgentsのメンバーたちと相談して決め、ポートフォリオ※はディフェンシブ銘柄※が中心だったと振り返る。「リーマン・ショックで暴落した時でも、戻してくるところを短期売買で取っていって好成績をあげられた。投資信託の運用としてはあまり良いことではないですが……」
夏の陣中盤で1位に躍り出ると、もりたさんはほかの上位者の運用方法を分析。「日々の値動きから、上位者がどの銘柄を持っているか大体分かった」(もりたさん)ため、上位者の保有銘柄と同じような銘柄を組み入れて“相対的”に負けないポートフォリオを構築、逃げ切りに成功した。
もりたさんが株式投資を始めたのは、中学2年生の時。お年玉などを貯めて、26万円ほどでスタートした。
しかし当時(2001年ごろ)の日本株は、26万円だと最低売買価格でも購入できない銘柄が多かった。そこでもりたさんが目を付けたのが、少ない元手でも投資できる米国株。米国の証券会社に口座を開いて、Apple株を購入した。「途中で売ったため、もうほとんど残っていませんが、買った値段の10倍ほどになっています」ともりたさんは言う。
そして東京大学入学後、株式投資サークル「Agents」に加入。定例会でさまざまな企業を研究したことが、投信王での銘柄選択でも役に立ったという。ちなみに夏の陣では学生団体対抗部門も設けられており、Agentsが1位を獲得している。
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