先月発表された、「牛丼チェーンの吉野家が電子マネー「WAON」を導入する」というニュースに驚いた方は多いのではないだろうか。吉野家では2009年春から導入を開始し、全店でWAONを利用できるようにする予定だという。
記者もこのニュースに驚いた1人だ。ここ1年、大手コンビニチェーンでのFeliCa電子マネー導入が進み、カードや携帯を“かざして”買い物をしている人を見かけることが増えた。コンビニの次に電子マネーが多く利用されるであろう場所として注目していたのが、自動販売機と単価500円前後のファストフードだ。自動販売機の電子マネー対応は進みつつあるし(参照記事)、ファストフードとしてはマクドナルドがiD決済とFeliCa対応の「かざすクーポン」を組み合わせた店舗を増やしつつある(参照記事)。
この流れに呼応するように、吉野家が電子マネーの導入を表明したことは注目に値する。しかし、1つだけ引っかかったことがあるのだ。それは、「数ある電子マネーの中から、吉野家はなぜWAONを選んだのか?」という疑問である。
まず、WAONについて簡単におさらいしておこう。
WAONはイオングループが運営するプリペイド電子マネーサービスで、単体のカードのほか、イオンクレジットのクレジットカードやイオン銀行のキャッシュカードにも搭載されている。また、おサイフケータイで利用することもできる。8月末時点で、累積発行数は約560万件(カード、おサイフケータイの合計)、1カ月の利用回数も1000万件以上と、好調に伸びている電子マネーの1つだ。
イオン広報部によれば、WAONの利用単価は約1600円※で、ユーザーは女性が中心だという。日銀の調査によれば、2007年に利用された電子マネーの平均利用単価は696円だから(参照リンク)、ほかの電子マネーに比べてWAONの利用単価がかなり高いことが分かるだろう。
WAONの利用単価が高く、しかも女性ユーザーが多いのは、使える主な場所がイオン系のスーパーやショッピングセンター(SC)だから、という理由に由来している。実施しているポイントキャンペーンを見ても「毎月10日に利用するとポイント2倍」※のほか、「セルフレジを利用するとWAONポイントが2倍」など、スーパー向けのキャンペーンが人気となっている。
これらの情報から思い浮かぶWAONのユーザー像は、“イオン系列のスーパーやショッピングセンターで買い物をし、WAONで支払いながらポイントをためる女性客”だ。同グループのコンビニ「ミニストップ」でもWAONを利用できるが、利用単価が高いことから、コンビニよりもスーパー・SCでの利用が中心と見ていいだろう。
実はこれ、ほかのFeliCa電子マネーと比べるとかなり異色のユーザー像といえる。例えば同じ流通系電子マネーでも、セブン&アイグループの「nanaco」の場合は、ユーザーの男女比は6:4で、コンビニ(セブン-イレブン)を中心に利用されていることもあり、利用単価は「1000円は超えない」(セブン&アイHLDGS広報部)。
また、ビットワレットの広報部にも「Edy」の利用ユーザーについて問い合わせたところ、「男女比は出していませんが、半分よりは男性の方が多いです」という回答を得た。利用単価は「(日銀調査の)690円よりは高いが、1000円は超えていない」という。
電子マネー名 | Edy | nanaco | Suica | WAON |
---|---|---|---|---|
事業者 | ビットワレット | セブン&アイ | JR東日本 | イオン |
累計発行数(カード+携帯) | 4250万 | 624万 | 2591万 | 560万 |
加盟店数 | 7万8000店 | 2万0371店 | 3万9270店 | 2万6000店 |
ユーザー男女比 | 半分以上は男性 | 6:4(来店比率は7:3) | 半分以上は男性(編集部推定) | 女性中心 |
利用単価 | 1000円未満 | 1000円未満 | 非公開 | 1600円 |
利用エリア | 全国 | 全国 | 東日本中心(首都圏、仙台、新潟) | 全国 |
多く利用される場所 (編集部推定) |
コンビニ、ドラッグストアなど | コンビニ(セブン-イレブン)など | 駅ナカのコンビニ、駅ビルなど | イオン系スーパー、SC |
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