住宅ローンの返済が滞ったとき……銀行への対処法は?(中編)著者インタビュー(2/3 ページ)

» 2008年10月15日 07時00分 公開
[土肥義則,Business Media 誠]

住宅の取得を勧めてきたのは日本政府

『日本版サブプライム危機 住宅ローン破綻から始まる「過重債務」』の著者・石川和男氏

 生活費を考慮せずに住宅ローンを組ませようとする住宅業者は、果たして“悪”なのだろうか。「戦後の日本で、住宅の取得を強く国民に勧めてきたのは住宅業者ではなく、日本政府だ」と石川氏は指摘する。家を建てるためには、まず土地が必要になる。そして分譲地の開発が行われ、家を建てるために木材などの需要が発生。家を購入した国民は、家電製品や家具などを購入するため、個人消費が拡大する。このほかにも金融機関は住宅ローンの金利で稼ぐことができ、最終的には日本の税収が増加するという“仕組み”になっている。

 「日本では家を購入することを“正しい”こととして、政府が推奨していることが問題だ」と批判する石川氏。たしかにバブル崩壊前までは、資産価値が上昇していたため、住宅ローンを組んで家を買った方が“正解”だったかもしれない。もし住宅ローンの返済に滞っても、家を売却すれば完済することができ、うまくいけば“おつり”が返ってきたケースも多かった。

 しかしバブル崩壊後は状況が一変した。これまで経験したことがないデフレに直面、資産価値が下落し、収入も少なくなったのだ。「住宅ローンの金利が低いから『今がチャンス』と考えるのは早合点だろう。資産価値が減少する状況では、過剰にお金を借りて家を購入することはリスクが大きい」という。

住宅ローンを組む場合、リスクを減らすことが大切

 それでは住宅を購入する際、どのぐらいの価格であれば適正なのだろうか。政府が1992年に策定した「生活大国5カ年計画」によると、「大都市圏でも、平均年収の5倍程度で良質な住宅が買えるようにする」と掲げている。しかし「年収5倍ほどで首都圏の……しかも良質な住宅を購入するのは難しい」と感じる人は多いだろう。

 バブル崩壊後、住宅価格は安くなった。しかし高額であることに違いはない。過剰な借金をしてまで、何が何でも家を持つことは必要なのだろうか。もちろんきちんと返済していける見通しが立っていれば、住宅ローンを組んでもいいだろう。残念ながら「年収の何倍までならお金を借りてもいい」といった正解がないことも確か。金利のタイプ、返済期間、借入額、収入、家族構成、老後のプランなど、人によって事情は違ってくるからだ。

 「住宅ローンを組む場合には、できるだけリスクを小さくすることが大事。自衛策の1つとして、固定金利を選択すること。変動金利の方が当初の金利負担が安いため選びたくなる気持ちは分かるが、『負担の上限が見えない』ことに気を付けた方がいい。いい家が欲しいからできるだけたくさん借りたい、と考えるのではなく『返せる額』を基本にすることが大切」という。

住宅ローンが滞った場合の対処法

 もし住宅ローンが返済できなければ、どのような事態に陥ってしまうのだろうか。何らかの理由で返済ができないと、翌日には金融機関から電話がかかってくる。そして、返済することができなかった理由や入金日などを聞かれる。「ちょっと遅れてもいいかな」と安易に考えていても、金融機関側からは「1日約定遅れ1回」という扱いにされるので注意が必要だ。

 次の約束の日に入金できなければ、再び金融機関から電話がかかってくる。金融機関の口調は強くなり、担保となっている自宅を見に来たり、会社に電話がかかってくることもある。そして返済が3カ月も遅れると、頻繁に電話がかかってきて、話す内容も生々しくなる。例えば「6カ月遅れると、保証会社へ代位弁済請求(債務者本人以外に対する請求)させていただくことになります。その後は保証会社と交渉してもらうことになりますが、すぐに競売になります。そうなれば自宅を失うことになるので、住宅ローンを返済してください」といった具合だ。

 6カ月以上遅れると、金融機関から配達証明が付いた内容証明郵便が届く。これは金融機関が保証会社へ代位請求を行ったことを通知したもので、その後は裁判所から差し押さえ通知が届く。また裁判所の命令により、執行官が調査に来て、家の外観や中の写真を撮影し、担保物件の価格を算定。裁判所が最低入札価格を設定して競売が行われるのだ。そして落札者から連絡があり、家から立ち去らなければいけなくなる。しかし競売で落札された価格が住宅ローンの借入残高より低ければ、その差額を保証会社へ支払う必要があるのだ。

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