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» 2008年10月09日 07時00分 UPDATE

郷好文の“うふふ”マーケティング:ホームレス向けのクルマから新たな生き方を見いだした (1/2)

ミシガン大学の学生が快適にホームレス生活を送れるようなクルマ、HUV(ホームレス・ユーティリティ・ビークル)を開発した。できるだけモノを持たずに生活できるよう設計されたHUVを見て、新しい時代を生き抜くためのヒントをもらった気がした。

[郷好文,Business Media 誠]

著者プロフィール:郷 好文

マーケティング・リサーチ、新規事業の企画・開発・実行、海外駐在を経て、1999年より2008年9月までコンサルティングファームにてマネジメント・コンサルタントとして、事業戦略・マーケティング戦略、業務プロセス改革など多数のプロジェクトに参画。 2008年10月1日より独立。コンサルタント、エッセイストの顔に加えて、クリエイター支援事業 の『くらしクリエイティブ "utte"(うって)』事業の立ち上げに参画。3つの顔、どれが前輪なのかさえわからぬまま、三輪車でヨチヨチし始めた。著書に「ナレッジ・ダイナミクス」(工業調査会)、「21世紀の医療経営」(薬事日報社)、「顧客視点の成長シナリオ」(ファーストプレス)など。中小企業診断士。ブログ→「マーケティング・ブレイン」


 人類はどうやらノマドに向かいつつある。

 ノマド(nomad)とは“遊牧民”のこと。フランスの元大統領補佐官ジャック・アタリ氏が著書『21世紀の歴史』で用いたキーワードだ。メソポタミア時代に遊牧民から定住民になった人類が、1万年を経て21世紀に再び遊牧民になるという。確かに社会を見渡せば、インターネットの普及、国境越えの就業者の増加、企業の多(無)国籍化、フリーアドレスに正社員削減など、すでに遊牧は始まっている。

 私も先日、会社員生活に別れを告げ、ノマドになった。企業に属さず、興味と契約で働く都会の遊牧民。明日をも知れぬ我が身に不安がないわけではない。どんな場所でも自在に力を発揮できる“超ノマド”になれる保証はなく、“下層ノマド”――ホームレスになることもありうる。

 「そうならないように生き抜きたい」と決意を固めていたある日、米国ミシガン大学Stephen Millsさんの卒論テーマ、“Homeless Utility Vehicle (ホームレス・ユーティリティ・ビークル=HUV)”を知った。これ、まさに下層ノマド御用達のアイテム!

ah_medium.jpg Homeless Utility Vehicle (ホームレス・ユーティリティ・ビークル=HUV)

“快適”なHUV

 HUVは一言でまとめると、移動・居住可能なホームレスのためのクルマ。Millsさんが自作したHUVでは、鉄パイプを溶接して後輪に26インチタイヤ、前輪には台車のタイヤを装着。寝起きもできるように合板を敷きつめ、鉄のフレームを上部にも立てた構造だ。

 フレームを黒いビニールで覆い、プライバシーにも配慮しつつ、上部は透明の折りたたみ式風防を装着。雨風をしのげ、夜は囲って眠れるデザインだ。こんなHUVのアイデア、どこから来たのか? 狙いは何か? Millsさんにインタビューしてみた。

ah_medium2.jpg HUVに乗るMillsさん

 「ホームレスをめぐる米国内の複雑な状況に問題提起をしたかったんです。だからボクのHUVは構造とデザインでイノベーションを狙いました」

 当時、アート系の工業デザイン科の学生だったMillsさん。コンセプト創りだけではなく、カタチを作るクラフトマンとしての挑戦でもあった。

 Millsさんは製作したHUVに自ら乗り込んで、その快適性を確かめた。ミシガン大学があるアナーバーは五大湖近くの温暖な地域だが、Millsさんの過酷な実験は真冬に行われた。雪が降っていてマイナス4度だった夜も、HUVの中で眠った。「ジッパーで締めれば寒くなかった」と話す。

 大きな視点からHUVを眺めると、さまざまな“問題提起”を感じる。HUV=移動車としての道路交通上の扱い、駐車すれば都市計画や土地占有権の問題など。所持品の運搬ができるシェルター(一時避難所)と見れば、自治体の災害装備品とも言える。

ah_sleep.jpgah_moving.jpg 家でもあり移動車でもあるHUV。押すも可、引くも可。所有物も運搬できる

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