NFCケータイはFeliCaを揺るがすか 「スマートポスター」の実験が日本で始動突撃! ユビキタス空間(2/3 ページ)

» 2008年10月01日 08時41分 公開
[藤村能光,ITmedia]
NTTデータの余伝道彦氏 NTTデータの余伝道彦氏

 NFCはQRコードを代替する技術としても期待がかかる。QRコードの読み取りには、携帯電話のカメラを起動し、ピントを合わせ、撮影する――といった工程を踏む。だがこうした手間を面倒と考えるユーザーも少なくない。QRコードは、「結果として(携帯電話の操作の)リテラシーが高いユーザーだけが使う」(余伝氏)技術と化している。

 NTTデータは、こうした技術をユーザーに使ってもらうべく、NFCの開発を進めている。“ヘビーユーザー”以外をNFCケータイのコンテンツに誘導できるインタフェースを開発すれば、企業はスマートポスターなどにも広告を打ち始める。「広告主の出稿にも弾みがつき」(余伝氏)、新たな収益源として見立てられる。

10分の1程度のコストで、FeliCa以上の販促が実現

 スマートポスターを活用した同実験は国内では初の取り組みだ。木下氏は「NFCは来年以降にヨーロッパなどで採用が進み、日本ではその数年後に普及するだろう」と、国内市場への浸透には時間がかかるという見解を示す。

 今後NFCの技術が幅広く使われるようになるために必要な要素は何か。木下氏は「(NFCの技術を使って)コストを削減したいという企業の要望に応えられるか」にあると強調する。

 NFCに対応するICタグの最大の優位点は価格にある。木下氏によると、「FeliCaに対応したICタグの価格は1枚300〜500円程度が一般的だが、NFC対応のICタグは50円程度、もしくはもっと安価に抑えられる」という。FeliCaなどの非接触IC技術を販売促進に取り入れる場合、FeliCaと同程度の性能を持つNFC対応のICカードの導入コストは、10分の1程度にまで抑えられる試算だ。

 また、取り扱いや設置が簡単にできるという点も差別化要因に挙がる。NFCケータイ対応のICタグの厚さは1ミリ程度。これをプラスチックケースなどに入れてポスターの裏にテープで貼るだけで、スマートポスターが出来上がる。「映画館のスタッフなどでも簡単に扱える」(木下氏)など特別な技術や専門知識は必要としない。また折り曲げても壊れない作りで、「FeliCa対応のICタグよりも耐久性がある」(同氏)。

ポスターを読み取りプラスチックケースに入れたICタグ ICタグはプラスチックのケースに入れて、テープなどでとめるだけでよい(右)

 こうした特性は、ICタグの原材料だけでなく、設置や運営などの管理費のコスト削減にも寄与する。商用化への具体的な動きはまだ見られないにもかかわらず、「映画館や小売店舗からの引き合いも出ている」(木下氏)ことが、企業の期待の高さを証明している。

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