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» 2008年09月17日 14時00分 UPDATE

Webビジネス小説「中村誠32歳・これがメーカー社員の生きる道」:第4話 紛糾するチーム討議を上手に進める「グラウンドルール」とは? (1/3)

食品メーカー・アイティフーズで、部門横断プロジェクトのリーダーに抜てきされた誠。新商品を開発するため、初めてのチーム討議を行うが、個性的なメンバーの勝手な発言で会議は紛糾。困り果てる中村誠に、星野仙八が出した助け船とは……。

[眞木和俊,Business Media 誠]

この物語は……?

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 中村誠、32歳。静岡県出身、東京の中堅私立大学を卒業し、彼女いない歴3年。加工食品メーカー「アイティフーズ」に入社してちょうど10年目を迎える中堅社員です。誠が社会人として働いてきた10年間は、日本経済が停滞し“失われた10年”といわれた時代。年功序列制度が成果主義に代わり、後輩が入らず今までずっと下っ端として働いてきた誠も、そろそろ「中堅社員」と呼ばれる年代になってきました。

 これまでマネジャーとすら呼ばれたことがない誠は、ある日突然、社内プロジェクトのリーダーに登用されます。ビジネスリーダーの心構えとは? 部門横断型のプロジェクトを成功させるコツとは? 本連載では小説形式で、誠が奮闘しながら成長していく姿を描いていきます。

前回のあらすじ

 加工食品メーカー・アイティフーズに入社10年目の中村誠は、新商品開発プロジェクトのリーダーに抜てきされた。キックオフの日、ミーティングをうまくかじ取りできず途方にくれる誠に、社長はベテランコンサルタント・星野仙八を紹介した。誠は星野を師匠と仰ぎ、プロジェクトリーダーとして成長するために必要なことを学んでいく決意をする。


 キックオフミーティングから1週間後、再びプロジェクトメンバーの中村誠、坂口賢二、仲居貴一、浜崎しほ、小栗旬の5人が会議室に集まった。コンサルタントの星野仙八も少し離れた席から誠の様子を見守っていた。

 それでは、1回目のチーム討議を始めたいと思います。メールでご案内したとおり、本日は各メンバーの持つ情報を発表してもらいます。発表時間は1人15分で、残りの30分はとりまとめ討議に当てたいと考えています。なんとか2時間で会議を終わらせたいと思いますので、皆さんご協力お願いします。

 この場を待ちかねたように、勢いよく坂口が立ち上がった。

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坂口 まず私から説明させてもらいます。先日も申し上げたように我が飲料開発部が誇る大豆イソフラボンは高濃縮なので、トクホ(特定保健用食品)ドリンクには最適です。ご存じのとおり、大豆イソフラボンは骨粗しょう症など女性向けの効能が広く認められていて、最近いろいろな健康食品が出回っていますが、ドリンクにすれば誰にでも飲みやすくなります。無論100ccあたりイソフラボン60ミリグラムも摂れることも大きな魅力になるはずです。当社のヒット商品である「豆乳ちゃん」は、サラッとした飲みやすさが評判なので、同じ路線がいいと思って、さっそく何種類かの試作品も作りました。これから具体的な試作品の中身についてご紹介します。

 坂口は、ぎっしりと数字が書き込まれた表と英文の学術誌のコピーを付けた資料一式を配って、イソフラボンの特性を説明し始めた。しかし、あまりにも専門的で退屈な内容に思わず誠はあくびをしてしまった。30分以上の独演会を終えた坂口は、得意げにこう付け加えた。

坂口 ……というわけで、後は販売部に頑張ってもらえば、成功間違いなしです。誠、きっとこのプロジェクトは楽勝だよ。

 坂口は誠にニヤリと目くばせしながら、席についた。

 う〜ん、坂口がそういうなら、そうかもな。では次に山口さん、販売部の状況を説明してください。

山口 はい、中村リーダーからとりあえず分かっていることを話してほしいと言われたので、説明します。販売の立場で言うと、正直いって商品力だけでは売れないと思います。もちろんいい商品であることは重要ですが、ウチはどうも保守的っていうか、パッとしない商品が多いんです。ライバルで最大手の「NB加工食品」なんて、何でもかんでも「ダントツ!」ブランドで押してますし、宣伝も派手だし、人手やお金のかけ方も半端じゃありません。ウチは販売奨励金も細いんで、主力製品カバーまでが精一杯で新商品に手が回らないし、ブランド力も弱いので、お店の棚取りでもいつも苦労するんです。坂口さんの話だと今回だって店舗搬入まで低温輸送しないと品質低下の可能性があるんでしょ? 個別配送に保冷車を使うとコストが高くつくから困るんですよね。それに保冷倉庫を使える物流センターが限られるのでちょっとやっかいだし、さらに……。

仲居 山口さぁ、さっきから「何々できない」ばかりを並べてるように聞こえるんだけど。この時間にわざわざ販売の愚痴を聞きにきたわけじゃない。だいたい、いつも販売部がこんな調子だから、店に商品を置いてもらえなくなるんじゃないのか? 我々工場の人間がどれだけ鮮度維持と品質向上に苦心してると思ってるんだ!

 あの〜、仲居先輩。もう少しお手柔らかにお願いします。ここは水戸工場じゃないんですから。

仲居 確かにそうだがな、誠! だいたい今日の仕切りは何なんだ。ダラダラと好き勝手な主張ばかりでまとまらないじゃないか。少しはリーダーらしく仕切ったらどうなんだ!

 急にそんなこと言われても、僕は……。

坂口 仲居さん、好き勝手な主張とはどういう意味ですか?

 やや感情的になった坂口が、仲居をにらみつけながら割って入った。

仲居 それはな、自画自賛の試作品なんかじゃ、お客様に売れるちゃんとした製品には程遠いってことだよ。お店は飲料開発部の実験室じゃないんだからな。

浜崎 仲居さん、それはちょっと言い過ぎなんじゃないですか。坂口さんもそんなムキにならないでくださいよ。

小栗 あーあ、中村リーダーさん、いったいどうすんの。こんな討論が続くのなら時間がもったいないんで退席させてもらうけどね。

 小栗が冷めた表情で皮肉っぽく言い放った。

 えっ、あっ、ちょっと待って。どうしよう……。

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