徹底的な低コスト設計が自慢です――“長期投資の友”ETF入門分散投資特集(2/2 ページ)

» 2008年09月16日 12時12分 公開
[堀内彰宏,Business Media 誠]
前のページへ 1|2       

国内ETF

 国内ETFは取引の方法自体は、通常の株取引と同じだ。手数料も通常の株式取引と同じように支払う。

 しかし株式取引と異なるのは、信託報酬がかかること。各ETFによって異なるが、年率0.1〜1%程度の信託報酬を支払うことになる。同じ野村アセットマネジメントが運用する場合でも、TOPIX連動型の投資信託「トピックスインデックスオープン」の信託報酬は年率0.651%なのに対して、「TOPIX連動型上場投資信託」の信託報酬は年率0.252%と安い。また、アフリカに投資できる代表的な投資信託「野村アフリカ株投資」の信託報酬は年率2.1%。しかし、ETFの「NEXT FUNDS 南アフリカ株式指数・FTSE/JSE 上場投信」なら信託報酬は年率0.9975%。ETFは総じて通常の投資信託より低コストで運用できるのだ。

 だが、日本ではまだETFが普及していないため、売買がほとんどされていないETFも多く、注文を出しても希望する価格で買えないこともある。従って、そうしたETFを取引するときには、価格を指定して売買するといった注意が必要となる。また、あまりに売買がされていないETFは上場廃止になることもある(その場合、投資金は戻ってくる)。

主な国内ETF
コード ETF名 連動する指数 信託報酬(年率)
1306 TOPIX連動型上場投資信託 TOPIX 0.252%
1314 上場インデックスファンドS&P日本新興株100 S&P日本新興株100指数 0.525%
1322 上場インデックスファンド中国A株CSI300 CSI300指数 0.9975%
1323 NEXT FUNDS 南アフリカ株式指数・FTSE/JSE 上場投信 FTSE/JSE Africa Top40指数 0.9975%
1324 NEXT FUNDS ロシア株式指数・RTS連動型上場投信 RTS指数 0.9975%
1325 NEXT FUNDS ブラジル株式指数・ボベスパ連動型上場投信 ボベスパ指数 0.9975%
1326 金価格連動型上場投資信託 1グラム当たりの円表示の金価格 0.525%

海外ETF

 海外ETFでは、日本の証券取引所に上場していないタイプのETFも売買できる。だが、海外ETFは外国株という扱いになるので、通常の証券口座のほかに、外国証券取引口座を開設しなければならない。

 また、取引が外貨ベースで行われるため、取引するときには円を外貨(米国ETFは米ドル、中国ETFは香港ドル)に両替する必要がある。そのため、売買するときには為替手数料が加わる点に気を付けたい。また、証券会社によって、手数料や取り扱い銘柄が大きく異なっている。

 そして、税金の手続きも煩雑になる。米国ETFの場合、キャピタルゲインに関しては国内での株式取引と同じで売却益の10%(2009年1月からは20%)。しかし、分配金に関しては、米国でまず10%課税され、さらに日本でも10%(2010年1月からは20%)課税されることになる。

主な証券会社の海外ETF取り扱い状況(9月16日現在)
証券会社 取扱銘柄数 国内取次手数料(米国ETF) 現地委託手数料(米国ETF) 為替手数料※(米国ETF) 国内取次手数料(中国ETF) 現地委託手数料(中国ETF) 為替手数料※(中国ETF)
野村證券 37 約定代金75万円未満なら7455円、75万円以上なら最大0.9975% 約定代金1万ドル以下なら0.5%(最低25ドル)、1万ドルから10万ドルなら0.2%+30ドル、10万ドル以上なら0.1%+130ドル 50銭 米国ETFと同じ 約定代金の約0.36%(最低100香港ドル) 15銭
楽天証券 73 1000口まで一律31.5ドル、1000口を超える1口ごとに2.1セント追加 なし 25銭 約定代金の0.525%(最低手数料525円、手数料上限5250円) なし 15銭
マネックス証券 59 1取引当たり25.2ドル なし 25銭 約定代金の0.2999%(最低73.5香港ドル) 約定代金の0.111% 15銭
SBI証券 31 1000口まで一律26.25ドル、1000口を超える1口ごとに2.1セント追加 なし 25銭 約定代金の0.4095%(最低31.5香港ドル、最大315香港ドル) なし 15銭
※為替手数料は1通貨単位あたり

 取り扱っている海外ETFの銘柄数は、一番多い楽天証券でも73しかないが、国内ETFと違って活況な銘柄が多く、売買には支障がないことが多い。

主な海外ETF
コード ETF名 連動する指数 信託報酬(年率) 販売会社
SPY SPDRトラストシリーズ1 S&P500指数 0.095% 野村、大和、日興、楽天、マネックス
QQQQ パワーシェアーズ100トラストシリーズ1 ナスダック100指数 0.20% 野村、大和、日興、SBI、楽天、マネックス
TIP iシェアーズリーマンティップスボンド リーマンブラザーズ物価連動債権指数 0.20% 楽天、マネックス
GSG S&P GSCIコモディティインデックストラスト GSCIコモディティ指数 0.75% 野村、大和、SBI、楽天、マネックス

忙しいビジネスパーソンのために

 多くの海外ETFを扱う楽天証券では、ETFに投資する顧客が2008年初めから8月までで1.6〜1.7倍に増えているという。楽天証券の新井党(かおる)外国株式事業部長によると、「米国のファイナンシャルアドバイザーの7割が『顧客に勧めたい商品』と回答したというアンケート結果があった」という。

 ETFでは株価指数だけでなく原油・金価格やREIT指数にまで投資できる。忙しくて個別株は詳しくチェックすることができないがポートフォリオのバランスは自分で決めたい、といったビジネスパーソンにはうってつけの商品だろう。また、多数の金融商品によって構成されるETFは投資信託と同様にインサイダー取引規制の対象外、「この株を買うとインサイダーになるのではないか」と株式取引を敬遠していた人にもちょうどいいだろう。

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.