“秋葉原”から“アキバ”、そして……――変化する街を作る方法郷好文の“うふふ”マーケティング(3/3 ページ)

» 2008年09月11日 20時30分 公開
[郷好文,Business Media 誠]
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D・Eブロックの真ん中に“解”を見つけた!

 人いきれの中央通りの歩道を、もみくちゃにされながら“元”家電タウンの中央部、総武線の高架下へ向かう。先ほどの交差点と万世橋交差点のちょうど真ん中。ひらめいた。この信号を取っぱらえば“秋葉原”と“アキバ”がつながる!


 最も横断者が多い場所なのに、2つの交差点にはさまれているため、信号のタイミングによっては自動車の通行量が意外に少なくなる。信号が変わると横断歩道をハミだす人の群れ。旧秋葉原の象徴、家電エリアとマイコンエリアへの人の流れはまだまだすごい。

 秋葉原の再開発の象徴、ダイビルとUDXを“クロスフィールド”と名付けたのは的を射ている。秋葉原が「アキバッパラ(原っぱだったゆえにそう呼ばれた)」から「秋葉原」になり、やがて「アキバ」になった。その名前の変遷はクロスカルチャーの歴史そのものである。

 アキバは商業と欲望のクロスポイントだ。ダイビルとUDXの広場がクロスフィールドの“頭脳”なら、総武線高架下は“下腹部”だ。欲望やオタク丸出しだが生き生きしている。

 散策を終え、研修室に戻って発表資料をまとめた。まず、中央通りは幅が広いので、中央帯に“緩衝地帯”(途中で立ち止まれる島)を置く。そして、自由に横断できることをドライバーに知らせるために、横断歩道の白黒にLEDを埋め込むというアイデアも付け加えた。ブロック間の回遊性(人の流れや動線)を高める趣旨の発表。講師の思惑通りだったようで、褒められました。

街は“flies and comes”で生き生きとする

 米国人から“White flies”というフレーズを聞いたことがある。「白人が飛ぶ」とは、有色人種が街に増えたのを嫌って、白人が郊外などに移り住むことだ。

 それをもじるとBブロックは「オーディオ・フライズ」で「ゲームセンター・カムズ(やってきた)」、Aブロックは「PC・フライズ」で「メイド・カムズ」、Dブロックは「家電・フライズ」で「ジャンクフード・カムズ」、Fブロックは再開発で「ヨドバシ・カムズ」。

 筆者は電気少年でもパーツ少年でもなかったけれど、30年前の秋葉原できらめいていた部品や雑踏が好きだった。闇市的な怪しさが面白かった。今日までの変化で辛酸をなめ、閉めた店も消えた人も多いが、この街への新しい流入パワーは途切れない。

 街作りをするためには“囲い込み”をしてははだめ。アーケードを造るとシャッター商店街と化してしまう、閉鎖空間になるからだ。自分たちだけにお客を呼び込もうなんてヨコシマな考えである。街はオープン系にするべきだ。その方策はただ“信号を取っぱらう”だけ。何かを新しく造る投資は要らない。信号を取り“歩く体験”を真ん中に据えて、街に息を吹きこもう。

 街が変化すると、新たな登場人物も現れる。しかし昔の秋葉原が好きだった筆者は、道端に立つメイドも、練り歩くゴスロリも好きになれない。街歩きMAPの南明奈さんの笑顔とも重なり、かわゆいと振り向くけれど心理は複雑。アキバの次はやはり、アッキーナならぬ“アッキーバ”になるのだろうか?

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