1986年東京大学経済学部卒。1991年MITスローン・スクール・オブ・マネジメント卒業(MBA)。大学卒業後住友信託銀行に入社。その後、留学をはさみ10年にわたって外国債券など運用業務に従事。1997年シュローダー投信投資顧問株式会社に入社。1999年マネックス証券の設立理念に共感し入社。商品開発、資産設計などを担当。2004年個人向け投資商品企画・運営会社であるマネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役就任。現在株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長。著書に『【新版】内藤忍の資産設計塾』(自由国民社)など多数。
前回、分散投資をする上で、資産配分の比率に“正解はない”という話をした。なぜならどの程度のリスクに耐えられるかは人によって違うため、すべての人に適応するアセットアロケーション(資産配分)はないからだ。
ではどのようにして配分比率を決定すればいいのだろうか。マネックス・ユニバーシティの内藤忍氏は「過去は未来を保証することはできないが、まず各金融商品の過去データを分析することが大切だ」という。ちなみに内藤氏は投資をする際、「標準偏差」のデータを参考にしている。標準偏差とは金融商品の過去のデータから計算できるもので、平均値からどれほどブレることがあるかを表す数値。「多少数字のブレはあるが、最大損失は標準偏差の2倍ほど。またすべての金融商品に当てはまることだが、運用期間が長くなるほど標準偏差のブレは小さくなるので、長期で運用する際には参考にした方がいいだろう」
→なぜ人はストレスを抱え、損ばかりするのだろうか? (インタビュー前編)
→お金を殖やすためには、何を知ることが大切?(インタビュー中編)
− | 過去のリターン | 最大上昇率 | 最大損失率 | 標準偏差 | 標準偏差×2 |
---|---|---|---|---|---|
預貯金など流動性資産 | 4.4% | 13.5% | 0.0% | 3.6% | 7.2% |
国内株式 | 10.4% | 107.9% | -41.5% | 23.8% | 47.6% |
国内債券 | 6.4% | 19.3% | -6.2% | 5.3% | 10.6% |
外国株式 | 10.0% | 60.5% | -32.4% | 18.9% | 37.8% |
外国債券 | 4.5% | 39.8% | -25.9% | 12.5% | 25.0% |
標準偏差×2の数字を見ると、最も値動きが激しいのは国内株式の47.5%、次いで外国株式の37.8%。「国内の株式だけに投資している」という人は、自分がリスクを取り過ぎていることが理解できるだろう。
過去のデータから金融商品別に標準偏差を計算することができるわけだが、このデータを基にして内藤氏は年間20%まで損失可能性があるアセットアロケーションを作った。それが前回紹介した「標準的なアセットアロケーション」だ。
標準的なアセットアロケーションについて「もちろん個人によって条件は違ってくるが、50代くらいまでの世代でも耐えられる。比較的リスクを取りやすい20〜30代のビジネスパーソンにも向いているアセットアロケーションだろう」としている。
アセットアロケーションの前提条件として、内藤氏は3つの条件を設定している。(1)国内株式への配分を外国株式への配分より多くする(2)外国株式と外国債券の配分比率を1:1にする(3)流動性資産などへの配分は合わせて20%――。
このような条件の下で過去のデータを使って、シミュレーションしたのが最大変動予想値だ。これはアセットアロケーションによって、1年間で最大どの程度、損失または利益が発生する可能性が高いかを表示したもの。標準的なアセットアロケーションは16.9%と、最大変動予想値が20%以内に収まるという計算だ。
− | 外国資産の組入比率10% | 同20% | 同30% | 同40% | 同50% | 同60% |
---|---|---|---|---|---|---|
株式資産の組入比率10% | − | − | − | − | − | − |
同20% | 10.0% | − | − | − | − | − |
同30% | 13.2% | 11.5% | − | − | − | − |
同40% | 17.0% | 15.0% | 13.9% | − | − | − |
同50% | 21.0% | 19.1% | 17.6% | 16.9% | − | − |
同60% | 25.6% | 23.4% | 21.6% | 20.6% | 20.2% | − |
例えば最大変動予想値が10%以内という「保守的」な条件で算出すると、どのような資産配分になるだろうか。「国内株式10%、国内債券50%、外国株式10%、外国債券10%、流動性資産を20%とすると、最大変動率が10%以内になる。例えば年金生活をしている人は、一般的にリスク許容度は低くなるので、この保守的なアセットアロケーションが向いているかもしれない」
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