中古住宅を再生――リノベーションのススメ大出裕之の「まちと住まいにまつわるコラム」(1/2 ページ)

» 2008年09月08日 11時30分 公開
[大出裕之,Business Media 誠]

「まちと住まいにまつわるコラム」とは?

「HOME'Sまちと住まいの研究室」編集長、大出裕之氏が“街とすまい”をテーマに執筆するコラム。気になるニュースや事柄、新商品や新サービスなどを取り上げ、住まいの専門家ならではの視点で語ります。

大出裕之(おおいでひろゆき):情報媒体や、PC・IT系メディアの編集を長年勤める。ついでにボランティアとして、東京商工会議所のプロジェクトXSHIBUYAを手伝い中。途中ネットベンチャーの起業などを経て、現在は住宅・不動産情報ポータルサイトHOME'Sにて、まちと住まいについてのWebメディアの運営や冊子の刊行などを行っている。「「HOME'Sまちと住まいの研究室」」編集長。


 いやー、参りました。

 ここのところ建築・不動産業を営む企業が会社更生法を申請する、というニュースが頻繁に飛び交っていて寂しい限りだ。前回のコラムで紹介した会社の1つも突然会社更生法を申請したようで、お世話になった人もいるだけに驚きを隠せない。

 ビジネス系雑誌メディアなどを読むと、会社更生法を申請した管財人が資産を調べたところ、負債総額を上回る鑑定が出てうまくやれば倒産しないで済んだのでは? という奇妙な結果が出ているという。つまり、直近で返済する現金は都合がつかなかったが、資産さえ売れれば管財人のお世話になる必要はなかったということだ。

 世の大方のアナリストは「米国のサブプライム問題の影響で信用収縮が起こり、貸し渋りや貸しはがしが出てきているから」と分析しているが、建築・不動産業の最大のリスクはやはり資金繰りである。

 とはいえ会社更生法を申請したからといってすぐに会社がなくなったり職を失ったりするわけではない。バブル崩壊後に会社更生法を申請した会社でも、利益が出る体質にまで改善した例がたくさんある、とだけここでは言っておきたい。

こんな時代だからこそ中古物件

 ではこんな時代、不動産はまったく面白くないのか? というとそうではない。あの1990年代のバブル崩壊と今が決定的に異なるのは、金融機関や一般企業が、建築・不動産系企業と共倒れしていないという点だ。また、日本の高齢化がさらに進行し、マーケットが変容しているという点も挙げられるだろう。

 前述の会社更生法申請の件では、新築物件のために土地を仕入れて建設費を払い、その後お客様に買っていただいて資本を回収するわけで、その時間がかかると莫大な資金が焦げ付くことになる。しかし、個人の家主が家を売りに出し、仲介する不動産屋や個人の施主が設計費や工事費を出してリフォームする場合には、業者は自分の資金はそれほど出す必要はないので、倒産のリスクは低くなる。

 国土交通省が2003年(平成15年)に調べたところ、日本の住宅総数が5387万戸。当時の日本の総世帯数は4722万世帯だから、単純に引き算すると665万戸が空き家。率にすると12.2%の家が余っていたことになる。5年後の今、世帯数の伸びを住宅建築数が伸びが上回っているだろうから、さらに空き家は増えているだろう。

 上記の国土交通省の調査では、30%の人が新築にはこだわらないと答えている。またHOME'Sの意識調査では、中古マンション購入希望者の80%以上が購入後に何らかのリフォームを検討しており、さらに中古築浅物件購入希望者の10%も「デザインリフォーム」「フルリフォーム」を検討している。

 中古物件であれば、当然価格は安い。築30年も経てば、市価で1/3〜1/4に下がっているだろう。もちろん単に中古物件を買っただけだと、住宅設備はボロボロで少なくとも水回りは取り替えなくてはいけないだろう。

 でもちょっと待った。単に取り替えるだけのいわゆる「リフォーム」ではなく、「リノベーション」が昨今話題になっているのはご存知だろうか? 立地の良い中古マンションを最新の間取りや設備にリノベーションすると、投資した以上の価値で転売できる(場合もある)のだ。

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