インタビュー
» 2008年08月30日 11時25分 UPDATE

あなたの隣のプロフェッショナル:時間と体力の許す限り、1軒でも多くの店に行きたい――ラーメン評論家・大崎裕史氏(後編) (1/3)

広告代理店で営業職にあった大崎氏は、なぜラーメン評論の道へ進んだのか? 多い時には1日10杯以上ラーメンを食べることもあるという氏の健康管理とは? 実食数1万6000杯以上、「日本一ラーメンを食べた男」インタビューの後編をお送りする。

[嶋田淑之,Business Media 誠]

「あなたの隣のプロフェッショナル」とは?:

人生の多くの時間を、私たちは“仕事”に費やしています。でも、自分と異なる業界で働く人がどんな仕事をしているかは意外と知らないもの。「あなたの隣のプロフェッショナル」では、さまざまな仕事を取り上げ、その道で活躍中のプロフェッショナルに登場していただきます。日々、現場でどのように発想し、どう仕事に取り組んでいるのか。どんな試行錯誤を経て今に至っているのか――“プロの仕事”にロングインタビューで迫ります。インタビュアーは、「あの人に逢いたい!」に続き、戦略経営に詳しい嶋田淑之氏。本連載では、知っているようで知らない、さまざまな仕事を取り上げていきます。


 これまでに約8000軒、1万6000杯以上のラーメンを食べてきた「自称・日本一ラーメンを食べた男」大崎裕史氏。暑かった今年の夏も東奔西走の日々を送っている。

 ラーメン評論家の第一人者として知られる大崎氏だが、実家がラーメン店というわけでもなければ、外食産業にいたわけでもない。もともと広告代理店の営業マンだった大崎氏が、なぜラーメン評論の道に入ったのか。インタビュー後編では、彼のこれまでの人生と、今後どこに向かおうとしているのかについて聞いていこう。

 →食べるプロ「ラーメン評論家」に必要な5つの資質――大崎裕史氏(前編)

会津のラーメン好き少年、東京で感動

ay_osaki03.jpg 子どものころの大崎氏にとって、ラーメンとは会津ラーメンだった。大崎氏の会津ラーメン紹介は、All aboutで読むことができる

 大崎氏は、1959年、福島県の会津に生まれた。3人兄弟の末っ子。両親共稼ぎだったので、小さい頃から「鍵っ子」だったという。

 「小・中学校の頃、親から小遣いをもらって、近所の4〜5軒のラーメン屋の食べ歩きをしたのが最初でしたね。出前も頼みました。でも、ラーメン1杯だけだと申し訳ないので、ラーメン+チャーハンみたいな頼み方をしましてね。それで胃が鍛えられましたよ」と笑う。

 高校まで地元・会津で過ごし、その後、一浪して東京の私立大学の理学部・数学科に進学した。

 会津のラーメンは、太麺・平打ちで多加水の麺が特徴で、とんこつと鶏ガラをブレンドした、透明感のあるスープを使う店が多い。ラーメンとはそういうものだと思っていた大崎氏にとって、東京で食べたラーメンは衝撃的だった。「東京にはいろんなラーメンがあるんだと知って愕然としました。東京にはいろんなラーメンがある。東京風のしょうゆラーメンや、とんこつラーメンや……店ごとにまったく違うラーメンが出てくることに驚きました。今までの人生は一体何だったのかって感じでしたよ」。

 ラーメンにはこんなにさまざまな種類があるのか――好奇心をそそられて、氏の“ラーメン食べ歩き”が本格的に始まった。当時は、インターネットなど存在しなかったので、基本的な情報収集手段がなく、ほとんど「飛び込み」でラーメン店に入っていった。

 「博多ラーメンには特に感動しましたね〜。渋谷の『ふくちゃん』、忘れがたいです。醤油ラーメンでは、荻窪の『春木屋』に感動しました」

 毎日一駅ずつ違う駅に降り、順番に食べていったという。年間延べ200軒のラーメン店に行き、そしてパチンコに興じている内に、いつしか大学時代も終わり、大崎氏は、広告代理店の飛竜企画に入社。新しい人生を歩むことになる。

営業の本質は「気持ちはアナログ、答えはデジタル」

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 「飛竜企画は、従業員30〜40人くらいの会社で、私は一貫して営業畑を歩みました。当然外回りですから、ラーメン屋に寄る機会が多いわけですよ。それでまたぞろ、ラーメン店巡りに火がつきましてね」(笑)

 このころから大崎氏は、自分の中で、街ごとのラーメン店ランキングを付けるようになったという。「接客、換気、味など、店に入ってから出るまでの気持ち良さで付けていきました。例えば、新宿西口なら満来、東口なら桂花というように」

 肝心の広告営業の方は、順調だったのだろうか? 「それが、入社後半年間はまったく仕事が取れなくて。“飛竜企画始まって以来最悪の社員”とまで言われたんですよ」と苦笑する。

 ところが1年後、営業成績で社内のトップになったという。何かキッカケがあったのだろうか? 「そうなんです。営業って『気持ちはアナログ、答えはデジタル』ということに気づいたんです」

 “気持ちはアナログ、答えはデジタル”とはこういうことだ。営業の結果は、成約か失敗かの2つだけ。これはデジタルとも言える明確さである。しかし断るにしても、相手の気持ちには幅がある。必ずしもゼロというわけではなく、例えば「0.4くらいはオーケーなのだが、今回は……」ということも多い。それをアナログと呼んでいるわけだが、「だとすれば、相手の気持ちの0.4を例えば0.6にシフトさせることで、成約へと傾けることも可能なのではないか?」このことに気づいてからは、営業マンとして飛躍的に好成績をあげられるようになったという。

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