普通の大学生にとって、ファンドマネージャーに会える機会はなかなかあるものではない。講習後に設けられた質疑応答の場では、学生たちが次々と豊島氏に質問を投げかけた。
「運用が上手い人はどこが違うか」との質問に対し、豊島氏は「柔軟な考え方ができる人」と回答。時代の変化に気付くことができないファンドマネージャーは運用の世界で生き残れないという。「ITバブル時に好成績をあげて、もてはやされたファンドマネージャーがいました。しかしその後のITバブル崩壊後も、IT銘柄を買い続け、もう彼はこの業界にはいません」。比較的銘柄の入れ替えが少ないとされる年金の運用であっても、ポートフォリオの6割は1年で変えていくという。長期間同じ企業の株を保有して成功を収める人もいるが、多くのファンドマネージャーは市場の流れを見極め、「どの企業が有望なのか」を見抜かなければならない。
また、プロとアマの違いはどこにあるのだろうか。きっとアマが入手することができない極秘情報があると思いきや、「昔はプロに優位性があったが、インターネットが普及してきた2000年頃からそうした優位性は薄れてきている」とコメント。しかし「インターネットで誰でも同じ情報が得られる中で大切になってくるのは、何が正しいのかを見抜ける力。そうした力を身に付けるためには、大企業の30年前の決算などをチェックして、他社とどこが違っていたのかを調べてみることが大事」とアドバイス。
確かにインターネットから得られる情報に関しては、大きな違いはないかもしれない。ただプロは1日中、“株の世界”に携わり、「どの株が上がるのか?」といった情報のアンテナを張っている。例えば企業のIR担当者から直接話を聞いたり、アナリストから企業分析などの情報を聞くことなどは、アマではなかなかできないことだ。
講習が終了した後で大学生に話を聞いてみると、「長期的に生き残るためには柔軟に思考できないといけないと感じた」(慶應義塾大学4年生)、「今までは知っている会社しか投資しようと思っていなかったが、いろんな業種を見てみたいと思うようになった」(中央大学3年生)といった感想があった。
日本株を運用するファンドマネージャーの1日
7時30分から8時 出社 海外マーケットの確認や、ブローカーからの情報収集などを行う。
9時 日本株式市場取引開始 ポートフォリオの状況を確認する。
10時 IRミーティングやアナリストミーティング(1日10コマ程度)をこなす。
15時 日本株式市場取引終了 ポートフォリオの状況を確認。
19時から21時 帰社
ファンドマネージャーにとって大事なのは結果を出すことなので、会社での拘束時間はない。極端なことを言えば朝に来なくてもいいし、15時に帰ってもいい。また月に1回は日本にある工場を見学するほか、年1回は海外を視察する。
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