トラックとお手伝いを時間貸し――“レントラ便”に乗ってみた郷好文の“うふふ”マーケティング(1/2 ページ)

» 2008年08月28日 17時06分 公開
[郷好文,Business Media 誠]

著者プロフィール:郷 好文

 マーケティング・リサーチ、新規事業の企画・開発・運営、海外駐在を経て、1999年より某会計系のコンサルティングファームのマネジメント・コンサルタントとして、事業戦略・マーケティング戦略、業務プロセス改革など多数のプロジェクトに参画。著書に「ナレッジ・ダイナミクス」(工業調査会)、「21世紀の医療経営」(薬事日報社)、「顧客視点の成長シナリオ」(ファーストプレス)など。現在、マーケティング・コンサルタントとしてコンサルティング本部に所属。中小企業診断士。ブログ→「マーケティング・ブレイン」


 気象庁によるとその日の最高気温は32.4度。午前中から30度を超えていた。だが軽トラは「いつもと同じように」クーラーを入れず、窓を全開にした。国道1号線を大井町から三田、日本橋、浅草へ。そして6号線を折れて葛飾へと向かう。走っていれば涼しいが、信号待ちの間は暑い。


 私が同乗したのはドライバー付きでトラックを貸してくれるサービス「レントラ便」のトラックで、ドライバーは内海謙佑(うつみけんすけ)さん。向かう先はレントラ便を“2時間発注”したお客さまの養護学校で、運送物は書類や機材など。搬入先は養護学校の近所にある廃校の倉庫だ。

 なぜ助手席に私が同乗し、なぜ私まで汗をかいたのか。それは、ありそうでなかった運送サービスモデルにぐっときて、株式会社ハーツの山口裕詮(ひろあき)社長に、現場への同乗取材とインタビューを申し込んだからだ。

株式会社ハーツ

2時間で6往復のレントラ便サービス

 到着すると養護学校の通用口に、すでに段ボールが山盛り。職員さんが「こっちだよ!」とニコニコして出迎えてくれた。トラックの荷台を職員さんに向けて停車。あいさつもそこそこに、さっそく書類の段ボール(合計104個)を軽トラに積み込む。内海さんはもちろん、職員さんも“よいしょよいしょ”と運んだ。


 初回便、軽トラがぐっと沈み込むほど積み込んだので、思わず「私も乗って大丈夫でしょうか?」と内海さんに聞いてしまった。もちろん大丈夫。3〜4分そろりと走り、隣接する廃校(高校)の倉庫に段ボールを運び入れる。待ち受ける養護学校の職員さん2人と一緒に、台車を使って搬入する。この反復作業が午前中の作業だ。

(左)レントラ便運送中、(右)働く内海さん

 運転に慣れて力持ちと頼りになるお兄さんが付いてくる引越しトラック、と思えば分かりやすいだろう。当初「4回くらいかな」という見積もりだったが、結局2時間で6回も往復した。なぜなら段取りが良くて時間が余り気味になったため、「あれもこれも運んでくれない?」とお願いされたため。

 取材というタテマエがあっても、1人で写真を撮っているわけにもゆかず、私も運搬を手伝った。内海さんは流れる汗をぬぐいつつ、現場ではクーラーを入れた。ハーツでは地球温暖化防止の「チームマイナス6%」に参加しているので、やたらとスイッチは入れられない。搬送途中、2人で自販機で買って飲んだペットボトル、実にうまかった。過ぎし夏のアルバイトの思い出がよみがえってきた。

引越し便とも宅急便とも違うレントラ便

 「“あ〜、終わっちゃった”という寂しさを感じますね」

 終わりがけに内海さんが言う。「引越し便は引越しだけ、宅急便は運ぶだけ。でもレントラ便は違うんですよ」。内海さんはもともとアルバイトとして山口社長の元で働いていた。一時離れたが社員として戻ってきたのは、仕事から得られる充実感と将来性ゆえ。

 2時間の料金は1万1550円。レンタカーなら慣れないトラック運転だし、運搬は自分たちだけ、さらにガソリン満タンで返却する手間もある。レントラ便とどちらが得か? 内海さんが帰りがけに、職員さんから別案件の相談を受けたのが1つの答えだ。私たちは汗をふきながら、葛飾の現場から南大井へと戻った。

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