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» 2008年08月27日 08時00分 UPDATE

それゆけ!カナモリさん:もう一度観たい『崖の上のポニョ』――成功のヒミツをちょっぴり解いてみた (1/3)

公開から31日で興行収入が100億円を突破した『崖の上のポニョ』。大ヒット作品の仲間入りとなったわけだが、なぜポニョはこれほどの成功を収めたのだろうか? マーケティングの視点で分析してみた。

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それゆけ! カナモリさんとは?

グロービスで受講生に愛のムチをふるうマーケティング講師、金森努氏が森羅万象を切るコラム。街歩きや膨大な数の雑誌、書籍などから発掘したニュースを、経営理論と豊富な引き出しでひも解き、人情と感性で味付けする。そんな“金森ワールド”をご堪能下さい。

※本記事は、GLOBIS.JPにおいて、2008年8月22日に掲載されたものです。金森氏の最新の記事はGLOBIS.JPで読むことができます。


8月15日 「苦くないビール・酔っぱらわないビール」に学ぶ

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 飲み会での禁句は「とりあえずビールでいいよね?」だそうだ。それだけビールを飲まない人が増えているということなのだ。

 「ビール離れ」と言われて久しい。自他共に認める、ビール党でありビール星人である筆者からすれば、特に夏にビールを飲まずして、「人生何が楽しいんだ!」と思わずにいられないのだが、そもそも、人生の楽しみ方が多様化し、「酒を飲まない若者」が増えているというのだから、もはや「ビール離れ」はどうにもならない。

 であれば、メーカーが頼るべくは筆者のごとき中年族であろうが、メタボという名の十字架を負わされたこの身では、もはや気楽に「プシュッ」とやるわけにもいかなくなっている。酒量は減らす(できるだけ……)。飲む時でも、「えーっと、プリン体が少ないから発泡酒で……」と涙が出るほど情けない行動も否めない。

 ゆえに、先細りの老体となりゆく世代に期待し続けては共倒れになるので、やはり若者に働きかけることは欠かせないのである。しかし、ビールを飲んでもらおうと思っても、なかなか若い世代は手強そうだ。「プシュッ」「グイーッ」「ぷはぁ〜」なぁんて飲まれ方は死滅しつつあることが分かる。

 BusinessMedia誠に転載されたFujiSankei Business i.の記事「 つまみは“甘いお菓子?” 20代でビール離れ」では、キリンビールの調査結果を紹介している。「夜はネイルなどをやりたいので酔いたくない」「ビールを買おうとしたが疲れていたのでアイスにした」など飲酒自体への関心も低落傾向であるといい、350ミリリットル1缶を飲むのに30分程度かけたり、甘い菓子をつまみにするなど新たな飲用スタイルも浮かび上がったという。従来の感覚では考えられないような現象。うーむ、何という若者の生態。

 しかし、それに対してビール会社は生き残りをかけて、若手を起用し、固定概念を打破する製品の開発を行ったのである。アサヒコムの記事「ビール離れを食い止めろ 大手2社、若手開発の新商品」によると、アサヒビールは、ショウガから抽出したジンジャーエキスを配合し、「辛さを出しながら爽快(そうかい)感を楽しめるようにした」といい、キリンビールは、低炭酸で、アルコール度数も従来のビールより低い4%に抑え、「ふわっと軽やかなうまさにした」という。ビールの味ではなく、酔っぱらいもしないビールだ。

 若者をターゲットとした時、気をつけなくてはならないのが、「若者の○○離れ」というフレーズである。単純に「若者」というセグメントでくくってはいけない。確かに、格差問題で収入が少ない人も多いだろう。なかなか購買層として期待できないという論もある。さらに、携帯電話をはじめとしたコミュニケーションコストの負担が重く、可処分所得が圧迫されているとも言われる。どれも、一面の真実はある。しかし、そうした分析に、思考停止していたのでは生き残れない。

 まず、「○○離れ」は、「買えない」からなのか、「買わない」からなのかを見極める必要がある。「買えない」「買わない」は対象となる製品やサービスによって状況は異なるだろうが、ビールにおいては、メーカーは後者であると判断し、従来の固定観念を崩して新たな製品開発に踏み切ったのだ。

 市場のニーズも顧客像も、常に移ろう。変化を捉続け、自らも変わっていくことが生き残りには必要だと、この事例から学べるのではないだろうか……。

 とはいえ、筆者は今夜も風呂上がりには「プシュッ」っとフタを開け、腰に手を当てて「グイーッ」と飲み干し、「ぷはぁ〜」という予定なのだが。

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