東京・品川のマンションが相場の半値以下――安さの秘密の「定借」とは?キャスター・目黒陽子の「今、これが気になる」

» 2008年08月26日 16時57分 公開
[目黒陽子,Business Media 誠]

著者プロフィール:目黒陽子

フリーアナウンサー(ライムライト所属)。大和証券SMBCを経て、資格ファイナンシャルプランナーを取得後、キャスターへ転向。NHK総合「お元気ですか日本列島」、「BSニュース」、日本テレビ系列「ウェークアップ!ぷらす」などを担当し、政治・経済など、情報を伝えることの大切さと難しさを学ぶ。同じくアナウンサーの滝川クリステルは従姉妹にあたる。ブログ:http://www.fpcaster.com/


 団塊ジュニア世代(1970年代前半生まれ)を中心にマンション需要が高まっているようですが、実際に購入するとなるとネックになるのはやはりお値段。マンション不況が叫ばれていますが、新築マンションの価格は高止まりしているのが現状です(参照リンク、PDF)。しかし、そんな時に知ってもらいたいのが「定期借地権付分譲マンション(定借マンション)」。土地の権利を放棄することで、一般の分譲マンションより安く手に入るのです。

品川のマンションが相場の半値?

シティタワー品川

 今、人気を集めている定借マンションの1つが、JR品川駅から徒歩10分の地に建てられた「シティタワー品川」。地上43階建て、全828戸の大型マンションです。

 どれくらい安いのでしょうか? 例えば、20階南東向き89.18平方メートル(3LDK)の部屋が3328万5000円。これは近隣マンションの相場の半値以下だそうです。そんな優良物件が2247万〜4347万円(最多価格帯3200万円台)の価格帯で購入できるということで、不動産業界でも話題になりました。

 駅がすぐそばにあるだけではなく、学校や病院もすぐ近く、おまけにスーパーが敷地内にあるので利便性が高いのです。新幹線に乗るにも、羽田に行くにも便利で、東京湾で打ち上げられる花火大会も楽しめます。自分たちで住むも良し、賃貸にして家賃収入を得るも良し。ただし、5年間は賃貸、転売ができず自分たちで住むことが条件ですが……。

 シティタワー品川では、販売にあたって一切広告を出さないだけでなく、応募のための登録期間を8月19日〜25日のたった1週間に限定していました。完売する自信がそれだけある、ということでしょう。私も興味を引かれて、モデルルームに足を運びました。すると、口コミだけのはずなのに、遊園地で乗り物待ちしているかのような人だかり。部屋に入ってみると特に奇をてらった内装ではなく、いたってシンプルな作り。価格や立地が売りなので、内装にこだわる必要はないのでしょう。申し込みは郵送のみで、申込者が多ければ抽選になるとのことです。8月26日現在で、すでに倍率が68倍という部屋もあります。

「定借」って何?

 さて、安さの秘密の定借マンションとはどういった制度なのでしょうか。

 通常、マンションを購入すると、土地の権利は購入者に移ります。しかし定借マンションの場合、建物は購入者のものですが、土地は所有者から借りるという形になるのです。土地の所有者(シティタワー品川の場合は東京都)から50年以上の一定期間を定めて土地を借りるかわりに、期間が満了すると借り主は建物を取り壊して土地を返還する必要があるのです。

 「いつかは返さなければいけないというのは不安だ」という方もいるでしょうが、ちょっと待ってください。シティタワー品川の場合、定借の期間が超長期、異例の72年! つまり、30歳で購入すると72年後の102歳の時にマンションを解体、土地を更地にして所有者の東京都に返す、というお話なのです。家を子どもに残すことを考えなければ、なんら「所有権」と変わらないように思いませんか。今回の購入者も、終(つい)の棲家として生涯住み続けようという人が多いのではないでしょうか。ちなみに定借マンションでも、購入の際にはちゃんとローンを組めます。毎月返済額の4倍以上の月収が必要などといった条件はありますが、詳しくは銀行などでご確認ください。

 ただし、一般の分譲マンションと定借マンションとには返済方法で2つの違いがあります。80平方メートルの部屋なら、(1)将来更地にするのに必要な解体積立金が毎月2万7000円、(2)土地の賃料は1平方メートルにつき188円かかるので月1万5000円ほど。これに、一般的な管理費(80平方メートルで月1万3000円)や修繕積立金(80平方メートルで月8000円)が加わった金額が毎月必要になります。

※物価動向によって料金は改定される可能性もあります

土地所有者にもメリット

 今回の土地所有者は東京都ですが、2007年10月には、フランス大使館の敷地の一部を50年の高級定借マンションにして売り出すことが決まったほど(参照リンク)、土地所有者も定借マンションに注目しているようです。一般の分譲マンションよりは安い価格で提供することになりますが、期間後には貸した土地が更地になって確実に返還されますし、建物は借地人が建てるため経費も不要ですからね。

 72年後には立ち退かなければいけませんが、どんなマンションでも50年もすれば老朽化が進み、建て直しの心配がでてきます。しかし、一般の分譲マンションでは、世帯主の方たちの意見がまとまらずにトラブルになることも……。結局、各自500万〜1000万円を追加して修繕もしくは建て直し、なんてこともよくあるそうです。

 一方、定借マンションであれば、更地にして返還する日が最初から決まっているのだから、予算も予定もすべてそれまでに計画的に計算できるのです。みなさん、一般分譲マンションと定借マンション、どちらがお好みですか?

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