外貨預金・外貨MMFで低金利の日本から脱出分散投資特集(2/2 ページ)

» 2008年08月25日 13時00分 公開
[堀内彰宏,Business Media 誠]
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外貨に投資するために

ソニー銀行営業企画部の國津雅央プロダクト・オフィサー

 外貨預金や外貨MMFの仕組みは理解しても、どのように投資していけば良いか分からないという人も多いだろう。そこで、ソニー銀行営業企画部の國津雅央プロダクト・オフィサーに、個人投資家が外貨預金や外貨MMFを利用する時に気をつけることを尋ねてみた。

――外貨預金や外貨MMFはどういう人にオススメの金融商品ですか?

國津 「投資をしたいけど、どの金融商品に投資すればいいのか分からない」という人に向いている金融商品です。外貨預金は為替変動リスクはありますが外貨ベースでの元本は保証されていますし、利回りも確定しているので投資の第1歩として踏み出しやすい。外貨定期預金は中途解約するとペナルティを受けるので、「もしかすると満期前に引き出すかもしれない」という人は外貨MMFにするのがいいでしょうね。

 ただ、為替相場は日々変動するものなので、逆に「円貨ベースで1円たりとも損したくない」という人には向いていないと思います。為替相場は米国の雇用統計や原油価格、各国の政策金利動向の影響を受けて揺れ動きます。そのため、外貨投資を始めると、世界経済を気にするようになり、仕事の役にも立つというメリットもあります。

――取引する金融機関はどのように選べばいいですか?

國津 当たり前のことですが、為替手数料が安く、金利が高い金融機関を選ぶことです。高い金利を設定していても、為替手数料を含めると不利になってしまう金融機関もあるので、その兼ね合いに注意してください。

 また、為替相場は24時間、365日動いています。「買いたい時に買える」「売りたい時に売れる」ようにするため、いつでも取引できるような金融機関を選んだ方がいいと思います。

 そして、取引するときに参考になるようなニュースや為替チャート、分析ツールなどを提供してくれる金融機関がいいでしょうね。

――取引できる通貨の種類が多いのですが、どの通貨を取引すればいいのでしょうか?

ソニー銀行利用者の外貨預金残高通貨別内訳(2007年末時点、出典:ソニー銀行)

國津 まず試しに始められるのであれば、ニュースなどで慣れ親しんでいる米ドルの外貨預金や外貨MMFから取引するのが無難だと思います。最近その地位が揺らいでいるとはいえ、米ドルは世界の基軸通貨ですから。

 ソニー銀行では外貨預金のデータをとっているのですが、預金残高の55%は米ドルが占めています(日本円換算、2007年末時点)。この比率は、ほかの金融機関でも似たようなものでしょう。

 次に考えるのは、オーストラリアドルのような資源国の通貨でしょうか。資源高の影響からオーストラリア経済は好調で、政府も高金利政策を採っています。とはいえ、先行きは不透明なので、その高金利がこれからも続くかは分かりませんが。

 また、資源価格が上がると日本の物価が上昇する一方で、資源国の通貨は高くなる傾向にあります。資源国の通貨を持っていれば、物価上昇による支出を為替差益でヘッジできる可能性がありますね。

 米ドルとともに主要通貨に数えられるユーロですが、ここ数年続くユーロ高で売ってしまった人が多いようです。米ドルが安くなると、ユーロが高くなるといった動きが最近はあるので、金利収入だけを狙うなら米ドルとユーロを同時に持ってみるのも面白いと思います。米ドルがユーロに対して大幅に安くなった、という場合でも為替での損益は相殺できますから。

――預貯金を全部外貨預金や外貨MMFにかえても大丈夫でしょうか。

國津 金利ものの商品はインフレに弱いというデメリットがあります。そのため、物価の上昇率と同じように値上がりする傾向がある株式やコモディティファンドのような金融商品も持っておいたほうがいいでしょう。

 リスクをとりたくないという人でも、金利系の金融商品は資産の8割までに抑えて、残り2割は株式や債券、REIT(不動産投資信託)などにするのがオススメです。

 →分散投資の強みとは? 探し続ける理想のポートフォリオ

FXもあるけれど

 外国の高金利を享受できる金融商品として、ここでは外貨預金と外貨MMFを紹介したが、最近ではFX(外国為替証拠金取引、参照記事)がレバレッジをかけられることや手数料が安いこと、取扱通貨が幅広いことなどから人気を集めている。

 しかし、外貨定期預金には金利が確定しているという利点、外貨MMFには為替差益が課税されないという利点がある。自分の投資方針に応じた金融商品を選んでいくことが大切だ。

 少子高齢化による労働力人口の減少やBRICs諸国の成長などで、日本の世界経済における地位が低下し、円の価値が下落する――という事態も今後想定される。高金利というだけではなく、そうした地殻変動に対応するためにも、外貨資産を保有しておくことは重要だろう。

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