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» 2008年08月14日 07時00分 UPDATE

財務で読む気になる数字:移り変わるソフトバンクの事業構造とリスクの関係 (1/2)

企業が利益やキャッシュフローを計画的に生み出せなくなる事業リスク。さまざまな事業を展開してきたソフトバンクの場合、意識的に事業リスクを低減させてきたのだろうか? しかし事業リスクを意識していようと、していまと、ある事業ポートフォリオを組んでいれば事業リスクは低減できるようだ。

[斎藤忠久,GLOBIS.JP]
GLOBIS.JP

斎藤忠久の「財務で読む気になる数字」とは?

グロービス・マネジメント・スクールそしてグロービス経営大学院で教鞭を執る、斎藤忠久氏による新連載。ファイナンスの観点から話題になったニュースを独自の視点で読み解くコラム。

※本記事は、GLOBIS.JPにおいて、2008年6月2日に掲載されたものです。斎藤氏の最新の記事はGLOBIS.JPで読むことができます。


 株価の変動リスクの大きさを表す指標として、「ベータ(β)」がある。これは、株式市場全体(例えば東証株価指数/TOPIX)に対する個別株式の株価の変動幅を相対的な大きさで示すものだ。例えばβが1であれば株式市場全体と同じリスクの大きさ、1より大きいということは市場平均よりもリスクが大きいということを示している。

 では株価は何によって変動するのか。その根幹はバランスシートの左側の資産そのものにある。

 企業が保有する資産が生み出すキャッシュフロー(フリーキャッシュフロー)がバラつくために、株価が変動することは前回のこのコラムでも説明した。つまり、借入金(有利子負債)の提供者と株主とに分配されるフリーキャッシュフローの総額は時の経過と共に変動する。借入金の提供者は株主に優先してキャッシュフローの分配に預かれることから、その分配額の変動幅は小さい。一方、株主は借入金の提供者に分配された後の残り物にしか権利がないことから、株主への配分(配当金+キャピタルゲイン)は大きくバラつくことになる。これが、株価が変動するリスクの根源である。

 また、借入金の提供者に先にキャッシュフローが分配されるため、資本構成(株式時価総額と借入金の構成割合)によっても、株価の変動リスク(β)は変化することになる。

 このように、株式βは資産のリスク(資産β)と資本構成の二つの要素によって決定される。

 この関係を式に表してみよう。資産のリスクの大きさは、借入金と株主資本のそれぞれのリスクの大きさの加重平均であることから、以下のように算出できる。

資産β=有利子負債β×D/(D+E)+株式β×E/(D+E)

D(有利子負債額)、E(株主資本の時価総額)

 ところで借入金は全資産に占める割合が相当に大きくならない限り返済不能となる確率はかなり小さいことから、そのリスク(有利子負債β)は、ほぼゼロとみなすことができる。従って「資産β=株式β×E/(D+E)」となり、ここから、「資産β=株式β/(1+D/E)」という式が導き出されるが、実際には借入金にはその支払い金利の節税効果があることから、最終的には以下の算出式が出来上がる。

資産β=株式β/(1+(1−税率)×D/E)

 ここで、上記で求めた式を使ってソフトバンクの株式βと資産βの推移を見てみよう。

yd_saitou.jpg

 上の表から明確に見て取れるように、ソフトバンクのβは株式β、資産βともに時系列的に趨勢的に減少してきている。このことは、ソフトバンクの資産のリスク、即ち事業リスクが時の経過と共に小さくなってきていることを示している。

 ソフトバンクはPC用のパッケージソフトの流通事業から起業したが、その後、何回か大きく事業構造を変革してきた。

 米国のPC関連出版事業の買収を皮切りに、ベンチャー企業への投資・育成事業、そして1996年1月にはヤフー日本法人を設立してインターネット事業に参入。2001年9月には「Yahoo! BB」によりADSL事業に、 2004年7月には日本テレコムを買収して固定電話事業に、そして2006年1月にはボーダフォンを買収して移動体通信事業にと、通信分野での事業拡大を図ってきた。

 注目すべきは、これに伴ってソフトバンクが保有する資産の中身も大きく変化してきたことである。βの時系列での推移を見ても、リスクの極めて高いベンチャー投資事業から、リスクの低い移動体通信事業(例えばNTTドコモの株式βは0.66※と、かなり低い)へと、ソフトバンクの事業ポートフォリオは、時代とともにリスクが低減する方向に進んできたこと分かる。

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