何のために投資をするのか?――山崎元 VS. 山口揚平の投資対談(後編)分散投資特集(1/3 ページ)

» 2008年08月11日 07時00分 公開
[土肥義則,Business Media 誠]

プロフィール

山崎元(やまざき・はじめ)

経済評論家、楽天証券経済研究所客員研究員、1958年生まれ。東京大学経済学部卒業後、三菱商事入社。住友信託銀行など12回の転職を経験。2005年から楽天証券経済研究所客員研究員。ファンドマネジャー、コンサルタントなどの経験を踏まえ資産運用分野が専門。

雑誌やWebサイトで多数連載を執筆し、テレビのコメンテーターとしても活躍。主な著書に『会社は2年で辞めていい』(幻冬舎)、『「投資バカ」につける薬』(講談社)、『お金をふやす本当の常識』(日本経済新聞社)など。

山口揚平(やまぐち・ようへい)

早稲田大学政治経済学部卒。トーマツコンサルティング、アーサーアンダーセン、デロイト トーマツ コンサルティング、アビームM&Aコンサルティング シニア・ヴァイス・プレジデントを経て現職。

主な著書に『株M&A大化け相場に乗り遅れるな!』(日本実業出版社 2005年)、『世界を変える会社の作り方』(2008年、PDF)など。Business Media 誠では2007年4月〜12月まで連載「時事日想」を執筆


 「この企業に株式投資しよう」と決めるとき、どのような情報をもとに判断するのだろうか? 「日経平均株価が上がってきているから」「企業業績が好調だから」などを挙げる人も多いと思うが、元ファンドマネージャーの山崎元氏は上方修正の情報によって、マーケットに参加している人の動きを観察している。

 一方の山口揚平氏は「株式投資の目的はリターンだけではない」という。それでは山口氏はどのような考え・手法によって、株式投資をしているのだろうか? 投資対談(後編)では、今後してみたい仕事などを語ってもらった。

 →誰もが認める美人より、磨けば光る子を探せ――山崎元 VS. 山口揚平の投資対談(前編)

 →投資をする際の2つのアプローチとは?――山崎元 VS. 山口揚平の投資対談(中編)

 →株式投資でリターンを求める、求めない理由――山崎元 VS. 山口揚平の投資対談(後編:本記事)

注目する情報は企業の上方修正

 ――株式投資をする際、注目している情報はありますか?

山崎元氏

山崎 最も注目しているのは業績予想の修正です。業績予想の修正はインパクトを持っている情報ですが、それがどの程度マーケットに影響を与えるのか? を観察します。例えば経常利益100億円と予想していた企業が、120億円に上方修正したとします。その企業がこれまでに上方修正をしたことが「ある」または「ない」かで情報の価値が大きく違ってきます。もちろんこれまで上方修正をしたことが「ない」企業の方が、マーケットに与える影響は大きい傾向があります。

 ただ上方修正を発表したにも関わらず、その情報に反応しやすい株とそうでない株があります。また反応しにくい株でも、2回目の上方修正によって反応することもあるので、そういった点にも注目する必要があるでしょう。

 企業の上方修正のインパクトに対し、マーケットに参加している人の反応が遅れる株を見つけることができれば、株価が上がる前に購入するチャンスがあるので、リターンを手にする可能性が高くなるでしょう。つまり上方修正に敏感になり、その情報によってマーケットに参加している人はどのような行動をするのか? それを予想したり分析することは、投資をする上で勉強になるでしょう。

――「今の相場はどうですか?」といった質問をよく受けるのではありませんか?

山崎 「日本の経済はどうですか?」「今後、世界経済の見通しは?」といった質問は多い。ただファンドマネージャーの立場からすれば、ファンドの運用がうまくいかないときなどの“言い訳”にマクロの話をすることがあるので、注意してください。ちなみに私の場合は、マクロを分析して運用することはほとんどありません。一般論としても、マクロをベースにしたマーケットタイミングの運用はうまくいかない、と評価されています。

 やはりさきほどお話したとおり、上方修正の情報に対し、マーケットの参加者がどのように反応するかを見ることが重要。たくさん見ていくことで、いろいろなニュースを違った角度から分析することができるようになるでしょう。

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