著者プロフィール:郷 好文
マーケティング・リサーチ、新規事業の企画・開発・運営、海外駐在を経て、1999年より某会計系のコンサルティングファームのマネジメント・コンサルタントとして、事業戦略・マーケティング戦略、業務プロセス改革など多数のプロジェクトに参画。著書に「ナレッジ・ダイナミクス」(工業調査会)、「21世紀の医療経営」(薬事日報社)、「顧客視点の成長シナリオ」(ファーストプレス)など。現在、マーケティング・コンサルタントとしてコンサルティング本部に所属。中小企業診断士。ブログ→「マーケティング・ブレイン」
通勤通学のお伴といえばニンテンドーDSで脳トレか、携帯で数独でしょうか? 私には座右の書がある。日々持ち歩き、折に触れて開く。自分の“行き当たりばっ旅”な人生の行方に疲れ、“うふふ”な発想が枯渇したときに、すっとカバンから取り出す。そのワザを上達させたくて、持ち歩く。だが読んでも読んでも、クスクスするだけでスクスク成長しないのですが……。
『軽い機敏な仔猫何匹いるか』は広告界の重鎮、土屋耕一氏の回文集である。タイトルがすべてを表している。「かるい きびんな こねこ なんびき いるか」――これが回文(上から読んでも下から読んでも同じ発音)だとは、まさか思わない。
回文遊びの歴史は古く、実に鎌倉時代から歌人の作にあるそうだ。短歌、連歌、俳句、子どもの歌遊びにまで広がったが、回文集というたぐいの本は多くはない。著者の土屋氏は「君の瞳は1万ボルト」(資生堂)、「おれ、ゴリラ。おれ、景品」(明治製菓)など歴史に残るコピーを生み出してきた。だからこその、ことばマジック満載の本である。
何度も読み返すと「さかさま 仔猫 まさか、さ」とか、いくら「読んでも ニャニ もでんよ」ぐらいの回文作句ができるようにはなる。“数はわずか”だが、私も回文作りに挑戦し、“疲労ご苦労、記録後披露”してみたい(前者は達人、後者はアマ作品、違いが分かるな)。
回文作りは結構難しい。本書は絶版本なので、読者のために土屋氏の傑作をいくつか紹介したい。
1部と2部は短い回文。まず回文という“詩歌を解し”てほしい。
機敏万引(キビンマンビキ)
動物狂(アニマルマニア)
新幹線沿線監視(シンカンセンエンセンカンシ)
ダンディは遺伝だ(ダンデイ ハ イデンダ)
誤診千回いかんせん死後(ゴシン センカイ イカンセン シゴ)
プツリとすたれたストリップ(プツリト ス タレタ ストリツプ)
(広告業界で)すでに地位は1、2です(スデニ チイハ イチ ニデス)
(それならば、)世界一の地位生かせ(セカイ イチノ チイイカセ)
短い回文、機敏やダンディのようなワードを“逆さ化”するのが作句作法のようだ。“ルーマニアのアニマール”や“震撼初期余震監視(しんかんしよき よしんかんし)”が作れると回文師匠の弟子に認定してもらえるでしょうか? いえいえ、3部は長い文章主体で、こんなお手軽にはいかない。
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