経験効果を発揮するしかない!? ミスタードーナツとモスバーガーの「MOSDO!」それゆけ!カナモリさん(2/3 ページ)

» 2008年07月29日 19時10分 公開
[金森努,GLOBIS.JP]

7月14日 ネスレ・「カロリー見える化」の妙

 メタボメタボとかまびすしい世の中。摂取カロリーの許容範囲で何を摂取するのかコントロールすることが、極めて重要になっている。その時流をうまく捕らえたのがネスレの展開だ。

 日本経済新聞(以下、日経新聞)7月12日付けの朝刊に、「ネスレの菓子全品 カロリー量見やすく」という記事が掲載された。ネスレ日本は9月から「キットカット」など約20品目の菓子全品でカロリーを目立つように表示するとのことだ。今までにもあったような、外箱への総カロリー数表示ではなく個包装フィルムにも印字で、さらに含有量と1日に必要な量に占める割合を出すというところがポイントだ。健康志向の消費者から不安を取り除くのが目的である。ちなみにキットカット1枚は66キロカロリー、3%だという。

 今も昔、某ダイエット食品は「食べた〜い。でも、やせた〜い」というCMで世の話題をさらった。ダイエッターの偽らざる心情を表現した名コピーが共感を呼んだのだ。

 昨今はダイエットを志す、もしくは必要性を自覚する者だけでなく、ある日健康診断で、「あなたはメタボです」と唐突にして何とも残忍な宣言を下される世の中だ。「男性のウエスト85センチ以上はメタボという規定は厳しすぎ」という批判もあるが、宣言されてしまうのだ。

 宣言されないために。もしくは宣言されてしまってからの是正のためには、誰もが「食べた〜い」に我慢しなくてはならないのだが、闇雲に我慢できるものではない。そこで、1日のカロリー摂取量を考慮しながら、「これを食べると何カロリー?」と考えて食べるものを取捨選択するという、いささか細かすぎるような配慮をせざるを得ないのである。そうした時に困るのは、「これを食べると何カロリー?」が分からないことだ。

 マーケティングでいう「ニーズ」とは、理想的な状態と現状の間にあるギャップであると定義できる。「どの程度のカロリー摂取になるのかが分かる」という理想状態に対し、「どれくらい(1つ当り)食べれば何キロカロリーになるか分からない」という現状がある。そこに「明確に知りたい」というニーズが生じている。そして、それに対して提供すべきもの=ウォンツが、「カロリー表示」なのだ。

 ニーズが満たされないとどうなるのか。「君子危うきに近寄らず」である。チョコレート菓子などは、さぞやカロリーたっぷりな凶悪な存在だろうと思って購入が手控えられる。これは「でも食べた〜い」はずの消費者にとっても、売りたいメーカーにとっても不幸なことだ。その解決策となるのがカロリー表示なのだ。明示して判断できるようにすること。つまり「見える化」である。ニーズに適確に応えることは、売れ続けるための絶対条件であることは言うまでもない。その意味からすると、ネスレは一歩先を行く展開を実行したことになる。

 以上のようにカロリー表示の「見える化」は、売る側・買う側の必要性が一致していることから、今後各社にも波及すると思われる。

 しかし、もう一段展開がありそうだ。前述の日経新聞の記事には続きがある。欧米では10キロカロリーなどわかりやすいカロリー量に合わせた菓子が増えているが、国内メーカーの菓子ではまだ珍しい

 菓子ではないが、大塚製薬の「カロリーメイト(ブロック)」は1ブロック100キロカロリー。個包装(2ブロック)200キロカロリー。1箱4ブロックで400キロカロリーと、発売以来ずっと明確な表示と製品作りをしている。もしかすると、今後、菓子や食品全般でそんな製品が増えてくるかもしれない。さらに進んで、昨今の原料高に対応した値上げや量目調整(内容量の加減)でも、「1キロカロリー当りいくら」というような新たな表示まで登場するかもしれない。さしずめ、「カロリー本位主義」とでもいうことになるのだろうか。

 ともあれ、カロリーから、摂取もしくは購入の判断をするニーズが高まっていることは間違いない。消費者のニーズに対応するということは、味・量・価格などを見ていればいいのではない。あらゆる要望をすくい取る必要があることを、このネスレの「カロリー見える化計画」は教えてくれる事例だと解釈できるだろう。

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