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» 2008年07月24日 00時00分 UPDATE

保田先生! 600秒でファイナンスを教えてください:第7回 ファイナンスの応用(2) (1/2)

2006年、製紙業界最大手の王子製紙が北越製紙に対し、敵対的買収を仕掛けるという“事件”が起こった。設備投資の代わりにM&Aを試みた王子製紙だが、このほかにも“時間を買う”といった理由で、M&Aを行う企業が増えてきたようだ。

[保田隆明,Business Media 誠]
JMA Management Center Inc.

 →第6回 ファイナンスの応用(1)からの続き

 研究開発費と同様に「規模」が重要となるものに設備投資があります。これはその名のとおり、設備を建築する、または購入するための投資額を意味するものです。

 例えば、最近の大きな設備投資関連のニュースとして半導体事業をめぐる各社の動きが挙げられます。半導体は今やどんな電化製品にも欠かせない重要な部品ですが、次世代の高機能な半導体を作るには多額の設備投資が必要です。逆に言えば、大きな設備投資額に耐えられない企業は、半導体事業を切り盛りしていくことができません。

 そういった背景から、世界的に半導体メーカーの数は集約されています。日本でも2007年にはソニーが半導体製造工場を東芝に売却し、三洋電機も半導体事業の売却を試みました(最終的には見送り)。そして、東芝とシャープは半導体分野で事業提携を行いました。「設備投資が企業のM&Aを誘引する」という一例です。

 また、2006年に製紙業界最大手の王子製紙が北越製紙に対して敵対的買収を仕掛けるという「事件」が起こりました。王子製紙の目的は北越製紙の保有していた最新型の製紙工場の獲得にあった、と言われています。王子製紙にしてみれば自ら設備投資を行って工場を作ることも、工場を持っている企業を買収することも「お金を支払う」という意味では同じ行為です。

大規模設備投資をするためにM&Aを行うだけでなく、王子製紙のように「設備投資の代わりにM&Aを試みる」という企業まで登場するようになったのです。M&Aは一から工場を建設する時間を省略して、買収直後から製品を生産し、売上を立てることができることも買収側企業にとっての魅力です。

 最近になってM&Aが増えてきた背景は、こうした「速く市場に対応するために時間を買う」という独特の考え方が企業に広く浸透してきたことにもあるのです。

設備投資は「見えない」費用

 せっかくですので、設備投資に関してもう少し見ていくことにしましょう。この本を書いている2007年10月の日本経済新聞1面には、「設備投資1兆3000億円 ブリヂストン5年計画 世界各工場能力拡大」という記事があります。

 それによると、大手タイヤメーカーのブリヂストンが日本・ハンガリー・ポーランド・メキシコで新工場を建設し、インド・インドネシアの工場を増強する、とのことです。設備投資とは、まさに文字通り設備に投資することを意味し、このように新商品製造のための工場建設は代表的なものです。

 工場が新たに建設されると生産量が上がり、売上が増加することになります。きちんと費用のコントロールができれば、利益が上がって純資産増加につながり、時価総額も上がり、株主もハッピーになる、という流れが生まれます。

 将来にプラスの可能性があるという意味では、設備投資は研究開発と同じ位置付けです。設備投資増加のニュースは一般的には株価にプラスの影響を与えます。

 さて、そんな設備投資ですが、その費用計上の仕方に注意が必要です。損益計算書を見ても、設備投資費という項目は存在しません。その代わりにあるのが減価償却費という項目です。

 図50をご覧いただきたいのですが、160万円の設備投資を行ったとしましょう。会社からは160万円の現金が出ていきますが、初年度に費用計上されるのは減価償却費としての30万円だけです。

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