磁気カードなど、これまでのカードは読み取り部にカードを接触させて利用していた。しかしFeliCaはなぜ“かざす”だけで使えるのか、疑問に思ったことはないだろうか?
その答えは、リーダー/ライター(読み取り部)とFeliCaチップが通信しているためだ。FeliCaカードの中には、ICチップ(FeliCaチップ)のほか、CPU、アンテナなどが内蔵されている。リーダー/ライターが発する電波を、FeliCaカードの中にあるアンテナがキャッチし、リーダー/ライターとFeliCaチップが通信を行う(利用する周波数帯は13.56MHz、通信速度は212kbps)。
カードがリーダー/ライターの電波を受信して(1)カードを検出(2)カードとリーダー/ライターが相互認証(3)データの読み書きを行う。カード内のアンテナが電波を受信できる距離にまでリーダー/ライターに近づければ、カードを接触させなくても通信が行われ、カードの検出・相互認証がされるために、“かざす”だけで使えるのだ。
Suicaの例で見てみよう。自動改札機の、Suicaをかざす部分にはFeliCaのリーダー/ライターが入っている。乗客が改札にカードをかざすと、Suicaカードの期限や残高などを確認し、改札を通っていいカードなのかどうかを判定、フラップを開閉する信号を送る。さらにチャージしてある中から利用した金額を減算し、そのデータをFeliCaチップに書き込む。ここまでの処理が、暗号処理を含めて0.1秒で終わる。
FeliCaの利点としてはもう1つ、高いセキュリティ性能があげられる。ICチップに保存されたデータは暗号化されており、不正な読み取りや改ざん、偽造、変造が非常に難しくなっている。
磁気カードのプリペイド電子マネーは従来もあったが、特定の店でしか使えないものや、一度買ったものを使うたびに減算し、使い切ったら捨てるタイプのものが多かった。EdyやSuicaが多くの店舗で汎用的に使え、しかもチャージして繰り返し使うことができるという、現金に近い使い勝手を実現しているのは、FeliCaのセキュリティの高さがあってこそだ。
しかし上述のように“かざすだけ”という使い方のためだろう、「スキミングで電子マネーが盗まれるのでは」「不正利用が行われるのでは」「FeliCaのセキュリティが破られたのでは」といった憶測記事をこれまで何回か目にしている。
なお2006年12月から2007年10月にかけて、モバイルSuicaが不正利用されるという事件があったが(参照記事)、これは不正に入手したりスキミングしたクレジットカードの情報を使って、モバイルSuicaを不正に利用したというもの。スキミングされたのはクレジットカード(の、おそらく磁気情報)であり、FeliCaではない。2008年7月現在、FeliCaの暗号が破られ、不正に利用されたという事故は起きていない。
人間が作ったものである以上、いつかFeliCaカードの暗号が破られ、不正利用されることもあるかもしれないが、現在電子マネーとして利用できるものの中では、FeliCaカードは極めて高いセキュリティを誇る仕組みといえる。
ここまではカードタイプのFeliCaを中心に紹介してきた。カードのほか、FeliCaチップは携帯電話や、珍しいところでは腕時計やキーホルダーなどにも搭載されている。
FeliCaチップを内蔵した携帯電話を「おサイフケータイ」または「モバイルFeliCa」と呼ぶこともある。おサイフケータイは2004年6月に行われたドコモの新機種発表会で初めて登場し、翌7月には第1号機である「P506iC」が発売された。auからは、それから1年後の2005年8月に「W32H」と「W32S」が、ボーダフォン(現ソフトバンク)からは9月に「703SHf」が発表され、携帯3キャリアからおサイフケータイが出揃うことになった。現在でも多くの端末がFeliCaを搭載している。
次回はカードタイプFeliCaの最新事情を見ていこう。
→FeliCa/モバイルFeliCaの歴史を振り返る(前編/後編)
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