インタビュー
新連載・あなたの隣のプロフェッショナル:
天然氷のかき氷店「埜庵」主人――石附浩太郎氏(前編) (1/3)
暑い日に食べる、頭がキーンとするおやつ――そんなイメージを根底から覆すかき氷を提供する店がある。冬の日も常連が、時には噂を聞きつけた海外からのお客もやってくるという、天然氷を使った絶品かき氷の店。その店主は、自ら冬になると山にこもり、天然氷を作る“氷のプロ”だった。
[嶋田淑之,Business Media 誠]
「あなたの隣のプロフェッショナル」とは?:
人生の多くの時間を、私たちは“仕事”に費やしています。でも、自分と異なる業界で働く人がどんな仕事をしているかは意外と知らないもの。「あなたの隣のプロフェッショナル」では、さまざまな仕事を取り上げ、その道で活躍中のプロフェッショナルに登場していただきます。日々、現場でどのように発想し、どう仕事に取り組んでいるのか。どんな試行錯誤を経て今に至っているのか――“プロの仕事”にロングインタビューで迫ります。
インタビュアーは、「あの人に逢いたい!」に続き、戦略経営に詳しい嶋田淑之氏。本連載では、知っているようで知らない、さまざまな仕事を取り上げていきます。
海外にまでファン層を広げる湘南・鵠沼海岸の人気かき氷店
今年もまた暑い夏が訪れようとしている。地球温暖化の影響もあって、ここ数年、夏の不快指数は高まるばかり。そんなとき、ふと懐かしくなるのが、日本の夏の風物詩・かき氷だ。子供の頃、お祭りや花火、海水浴に行った際に食べたという人も多いだろう。
しかし近年、グルメでナチュラルなスイーツが人気を集める中で、赤・青・緑など毒々しい色のシロップがかかり、口に入れた瞬間、脳天にキーンと来るような従来のかき氷からは、いつしか遠ざかってしまったという人も少なくないようだ。
ところが、湘南のサーフィンのメッカ鵠沼海岸に、そんなイメージを根底から覆すかき氷店があった。「埜庵」(のあん)である。
小田急の鵠沼海岸駅から海方向に1〜2分歩いた閑静な住宅街にある2階建ての洒落たお店だ。今では、女性やファミリー客を中心に、国内はもとより海外にまで、そのファン層が広がっているという超人気店である。
ご主人は、石附浩太郎氏(43歳)。大学で商品学を学んだ後、音響機器メーカーなどで営業系の仕事で活躍。5年前に脱サラをして、かき氷のお店を開いた。俳優の西村雅彦さんに何となく雰囲気が似ていて、人を魅了する独特のオーラを漂わせている。
埜庵の3つの強み
初めて訪問した筆者の第一印象を述べるならば、埜庵の美点は次の3点だろう。
第1は、ご主人が手作りするナチュラルで独創的なシロップの数々。一例を挙げると、鬼柚子のシロップ。ふつうの柚子は小ぶりで表面もツルンとしているが、鬼柚子は、2回りくらい大きく表面も凸凹しており、風味はいっそう濃厚だ。しかし、一般市場には出回っていない希少性の高い素材であり、ご主人は、これを地元・神奈川県と静岡県の県境付近から仕入れている。
「鬼柚子氷」のシロップには、果肉と皮の両方が使われている。拡大すると、皮の黄色いつぶつぶが見える(左)。「天然いちごW」は、いちごシロップをかけたかき氷の中に、生のいちごとゼリーを仕込んだ“技あり”のかき氷だ。いちごの旬の間だけ販売され、夏場はお休み(右)埜庵では、このような独自・異質・新規な素材をどんどん導入し、来店客に常に新鮮な感動を与え続けている。
第2は、天然氷の独特の食感。天然氷は、口に入れた瞬間のキーンと脳天に来る不快感がなく、当たりが実にソフトで、優しい感じがする。日本広しといえども、今や天然氷を制作しているのは、全国で3カ所だけであり、石附氏は、自ら職人として、毎年冬になると、その制作に携わっている。
第3は、ご主人のもてなし。十把一絡げではない個客対応が素晴らしい。ちょうど取材に伺った際も、一見・常連の別なく、来店客それぞれに丁寧なコミュニケーションを行っている姿が印象的だった。
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