OTC医薬品って知ってる? 売れ筋は「漢方薬」

» 2008年07月11日 09時32分 公開
[土肥義則,Business Media 誠]

 一般用医薬品という言葉を聞いたことがあるだろうか。これまで医薬品の中で「その他の医薬品」と分類されていた、いわゆる“大衆薬”。総合感冒薬やドリンク剤といったあたりが代表例だが、これが2006年の改正薬事法で、一般用医薬品(OTC医薬品)として定義されたのだ。

 その他の医薬品からOTC医薬品に名称が変わったことで、消費者にとってはどのような変化があるのだろうか。日本OTC医薬品協会の大江方二広報委員長によると「これまで処方せんを必要としていた薬をドラッグストアなどで購入することができます。そしてOTC医薬品はリスクの程度によって3つのグループに分けられます」とのこと。第一類はリスクの高い薬で、例えば胃酸の分泌を抑える「H2ブロッカー」などが含まれる。これを販売するのには、薬剤師が書面で情報を提供しなければならない。第二類は風邪薬や鎮痛薬などで、薬剤師らが薬の情報を提供する必要がある。第三類はビタミン剤や消化薬などで、薬に関する情報提供の義務は規定されていない

 第一類は薬剤師のいる店でしか販売できないが、第二と第三類は登録販売者さえいれば薬を扱うことができるのだ。登録販売者とは各都道府県で実施される試験に合格した人で、この資格があればドラッグストアなどでOTC医薬品を販売することができる。この新しい仕組みは2009年春頃にスタートする予定で、始まれば薬のパッケージにどの区分かが表示され、スーパーやコンビニなどでも購入できるかもしれない。

区分 情報提供 対応する専門家
第一類医薬品 書面を用いて情報提供を行わなければならない。 薬剤師
第二類医薬品 情報提供に努めなければならない(努力義務) 薬剤師または登録販売者
第三類医薬品 法律上の規定は特になし。 薬剤師または登録販売者
※すべての医薬品では相談に応じて必要な情報を提供しなければならない(義務)。

薬事法を改正した狙いとは?

 そもそもなぜ法律を改正してまで、新しい仕組みを作ったのだろうか。狙いは、国民医療費の増加を抑制することにある。OECD(経済協力開発機構)の調査(2005年度)によると、日本の外来受診回数は年13.8回に対し、ドイツは7.0回、フランスは6.6回、英国5.1回、米国3.8回にとどまる。

 また医療品全体に占めるOTC医薬品のシェア(2006年度)を見ると、英国・ドイツ・フランス・スイスは20%を超えているが、日本は9.2%。「日本ではOTC医薬品の普及が進んでいませんが、改正薬事法がスタートすることによって、OTC医薬品の役割が明確化になります。それによって国民の健康増進に寄与できれば」(大江氏)と話す。

外来受診の回数(国別、OECDの2005年度データより)

売れているOTC医薬品は「漢方薬」

 OTC医薬品を扱う店が増え、サービスの充実を競うようになれば、消費者にとっては利便性が高まるはず。過去5年間では、どのタイプのOTC医薬品がよく売れたのだろうか。市場調査会社インテージによると、最も好調だったのは「漢方薬」で、2003年度と比べ2007年度は66.8%増の464億9000万円を販売、次いで「整腸薬」が同34.1%増の355億9000万円、「滋養強壮剤」が同16.5%増の662億3000万円だった。漢方薬が売れた理由として「お腹の脂肪が気になる人向けの『防風通聖散』がヒットした。メタボ対策の影響があったのでは」(インテージ)と分析している。

 整腸剤では下痢や便秘などの治療薬を、大腸の健康を考え服用している人が多いという。また滋養強壮剤は、ひざの痛みや神経痛など中高年をターゲットにした商品が好調のようだ。

 一方で売れ行きが不調だったOTC医薬品は「胃腸薬」。販売不振の背景には「暴飲暴食をする人が少なくなったことや、飲酒運転の取り締まりが強化されたため、アルコールを飲む人が少なくなった」(同)ことがあるようだ。

 OTC医薬品市場は低迷が続いており、1996年度の販売額は1兆2843億円だったが、2005年度は1兆1455億円にまで落ち込んだ。特定保健用食品(トクホ)や健康食品に押されていたOTC医薬品だが、2006年度と2007年度の販売額は回復基調にある。中でも販売増が見込めるのは「中高年をターゲットにした漢方薬や整腸剤」(同)と予測する。

 「風邪気味だから、病院に行こう」という人は多い。しかし今後OTC医薬品が普及すれば、「風邪気味だから、スーパーで薬を買ってくる」という人が増えるかもしれない。

OTC医薬品の販売額推移(日本OTC医薬品協会データより)

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