20〜30代の利用者が多く、しかも女性比率はずば抜けて高い。さらに記名式のスターnimocaとクレジットnimocaでは、ポイントプログラムが用意されているだけでなく、詳細な個人情報が登録されているのでマーケティング活用が容易であるというポテンシャルもある。
「女性比率が高いことで電子マネー利用も活発で、特にコンビニエンスストアとスーパーマーケットの利用は多いですね。電子マネーの平均利用額も約900円と、(交通系の)他の電子マネーに比べても高い傾向があります」(杉本氏)
交通系をはじめ、FeliCaを用いた決済サービスは数多いが、そこで重要になるのが「女性ユーザーの獲得と利用促進」だった。西鉄のnimocaでは、サービス開始から1カ月で女性ユーザーをしっかりと獲得しているのだ。
「鉄道・バス利用はもちろん、お買い物をしてnimocaポイントを貯める、そして貯めたポイントをSFにチャージして再び使うというスキームがうまく回り出しています。例えば、今のところ(記名式)nimocaを現金ポイントカードとして使っている人も、ポイントが貯まればそれをSFにして交通か電子マネーで使う。nimocaポイントが普及することで、電子マネー利用はさらに増えていくと考えています」(飯田氏)
「nimocaでは、『電子マネーを普及させるためにポイントがある』という戦略をとっていました。これがうまく奏功していまして、電子マネー文化を根付かせて、その先の新ビジネスの素地にもなってきています」(杉本氏)
今後の展望としては、9月までに福岡を中心にローソン50店舗で利用できるようになるほか、さらに将来的には航空会社のマイレージとポイントプログラムとの連携も検討しているという。nimocaポイントの急速な普及と、“女性が多い”というユーザー属性の特徴を鑑みれば、今後の加盟店や提携の拡大はさらに進みそうだ。
電子マネー&ポイントで急速に拡大するnimoca。しかし、足下に目を向けると、交通系ICとしての路線拡大はまだ途上にある。特に西日本鉄道が抱える大規模な路線バス網への展開が、今後の重要な取り組みになっている。
「当面の計画としては、今年9月までに福岡市近郊の11営業所、約570台のバスにnimocaを展開します。nimoca対象路線が拡大することで、カードの発行枚数増や電子マネーの利用促進も、さらに活性化されるでしょう。
その後は2008年度中に福岡都市圏の路線バスすべてとなる約1700台にnimocaを展開、2009年度中には北九州や筑豊、筑後地区に拡げていきます」(飯田氏)
これらの対象路線拡大により、nimocaのカバーエリアは拡がり、電子マネー・ポイントを用いた沿線ビジネスはさらに活性化する。また2010年にはJR東日本、JR九州、福岡市交通局との相互利用化が始まり、福岡全域と首都圏の交通ICネットワークがシームレス化(参照記事)。ここでは電子マネー連携も行われる見込みであり、さらなるビジネス拡大が期待できる。
「また、我々(西日本鉄道)として九州全域の公共交通事業者とも連携していきたい。特に九州各地のバス事業者とは、これまでもビジネス連携や共通利用券の発行などをしてきましたので、そこでnimocaのスキームをご利用いただければと考えています」(飯田氏)
それに向けた布石は、すでにnimocaカードで打ってあるという。
「実はnimocaカードには、『西日本鉄道』という発行会社名が記載されていないのですよ。これはnimocaをASP的に、(九州の)他のバス会社や電鉄会社にお使いいただければという考えからです。西鉄のnimocaではなく、九州の公共交通事業者みんなのnimocaになってもらいたい」(杉本氏)
さらに西日本鉄道では国土交通省が推進するアジア共通の国際非接触ICカードの実験にも年内に参加する方針だ。福岡と地理的・経済的に関わりの深い韓国と、1枚の交通ICカードで電車・バスが利用できる仕組みを作るという。
「国際非接触ICカードの詳細はまだ調整中ですが、イメージとしては、1枚のカード内に2つの交通ICカードの機能が内包されるものになります。ですから、それぞれの地域でチャージした利用分を、それぞれの地域で使うという形になる。(国をまたいだ)事業者間の相互精算は行われない見込みです」(飯田氏)
国際共通ICカードは現在準備が進められているもので、詳細なサービス内容はまだ決定していない。しかし最近は九州だけでなく、日本全国で中国・韓国からの観光客が増えている(参照記事)。交通ICカードの共通利用化は注目の取り組みといえるだろう。
西日本鉄道のnimocaは、交通ICカードとしては最後発であるが、そのサービス内容やビジネスモデルは革新的であり、注目すべきポイントが多い。そして今回、サービス開始後1カ月のデータを見ると、その取り組みの多くが「女性ユーザーの多さ」や「電子マネー・ポイントの急速な普及」という形で成功につながっている。
今後はさらに、nimocaがどのように地域マーケティングに活用されるかも注目になるだろう。レールサイドビジネスのケーススタディとして、nimocaの今後を期待をもって見守りたい。
→にしてつ「nimoca」スタート――写真で見る、福岡・きっぷ&電子マネー最新事情
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