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» 2008年06月16日 18時37分 UPDATE

ロサンゼルスMBA留学日記・特別編:「人工知能は必ずプロを超える」――将棋ソフト「激指」が名人に勝てる日 (2/2)

[新崎幸夫,Business Media 誠]
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コンピュータの弱点とは

 コンピュータは基本的にミスをしないし、終盤のここぞという場面で震えることもない。それなら、人間に勝ち目はないのだろうか。

 横山氏は、カギは序盤にあると話す。「一般論として、将棋ソフトは序盤が弱い。漠然と『形の良さ』を保ちながら、位をとって(将棋の戦術の1つ)押してくるような展開に弱い」

 逆にいうと、派手に駒がぶつかりあって切り合いになる展開はお手のもの。すぐさま詰みを読み切って、攻撃してくる。そうではなく、「争点が見つからないような状況は、ツライ」

 もう1つ、横山氏の指摘で興味深かったのは“不利なときに勝負手を指せない”ということ。これについては少々説明が必要だ。

 一般に人間同士の対局では、不利になった側がなんとか逆転しようと必死の「勝負手」を繰り出してくることがある。それは、「自分も危険だが相手も危険にして、一手間違えれば逆転の状況を作り出すこと」であったり、「局面をやたらと複雑にして、自分も相手もよく分からない、いわば泥沼の状態に引きずり込むこと」であったりする。いずれにせよ、歴戦の勝負師ともなれば形勢が悪いなら悪いなりに、“怪しい手”(判断が難しい手)を指してくることがある。

 「コンピュータはこれができない。不利になれば、相手も最善手を指すものと勝手に判断して、比較的あっさりと負ける」(同氏)。このあたりは、どこか人間に残された可能性であるようにも見える。

コンピュータが人間に勝つのはいつ?

 コンピュータは、人間の名人を倒せるのか。激指が、例えばプロの中でもトップレベルとの呼び声高い羽生二冠を倒すことはできるのだろうか。

 横山氏は「いつかは、コンピュータが勝つに決まっている」と話す。これは技術の進歩を信じる開発者として、当たり前のことのようだ。問題はいつか、という点になる。

 「今はまだ、プロの実力を超えていない。超えるということの定義も難しいが、『プロが本気で戦って恥ずかしくない状況』というのがいつ来るかと考えるなら……おそらく数年。10年はかからないと思う」

 逆にいえば、10年先になれば人間がコンピュータに勝つのは難しくなる、ということか。「コンピュータの棋譜を真面目に研究するとか、工夫しないと勝てなくなるだろう」

 最後に、もし自分の開発したソフトが羽生二冠を倒したらと聞くと、横山氏は間髪いれず「それは嬉しいですよ」と答えた。

 「ただ、自分も『門前の小僧』ではないが、将棋ファンであったりする」。そういう意味では、憧れの存在であるトッププロが自分の作り出した人工知能に負けてしまったときは、「悲喜こもごもになるかもしれないですね」――そういって、横山氏は笑った。

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