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» 2008年06月11日 15時29分 UPDATE

それゆけ! カナモリさん:どうするスタバ! 「買いたいコーヒー」2冠のマック (1/3)

オリコンランキングによると、マクドナルドのコーヒーが1位を獲得した。実は筆者、スタバ派なのだが、このままだと100円玉を握りしめ、PCを持ってマックに通うかもしれない。その理由とは……。

[金森努,GLOBIS.JP]
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それゆけ! カナモリさんとは?

グロービスで受講生に愛のムチをふるうマーケティング講師、金森努氏が森羅万象を切るコラム。街歩きや膨大な数の雑誌、書籍などから発掘したニュースを、経営理論と豊富な引き出しでひも解き、人情と感性で味付けする。そんな“金森ワールド”をご堪能下さい。

※本記事は、GLOBIS.JPにおいて、2008年5月1日に掲載されたものです。金森氏の最新の記事はGLOBIS.JPで読むことができます。


5月8日、上野動物園にパンダは必要なのか?

 上野動物園にジャイアントパンダがやってきたのは1972年10月28日のこと。以来、36年目にして、パンダがついにその姿を消した。リンリン、 2008年4月30日午前1時56分死去。享年、22歳だった。その後、中国からのレンタルをめぐり、石原慎太郎・東京都知事の「パンダいらない」発言や、年間1億円ともいわれる高額なレンタル費をめぐって物議を醸している。果たしてパンダが上野や上野動物園にもたらす意味とは何なのか。

 石原都知事は、以下のように発言した。(日本にはまだ「神戸市立王子動物園」に2頭、和歌山県白浜町の「アドベンチャーワールド」に6頭のパンダが存在していることで)「世界も狭くなったんだから、見たけりゃいるとこに行って見てくりゃいい」。確かに、上野にしかパンダがいない時代、それは貴重なもので、全国から人々はこぞって見に訪れたものだった。しかし、いつの間にやら、白浜にはパンダがうじゃうじゃいる時代になっていたのだ。

 それでも「上野のパンダ」にこだわる人々もいる。スポーツ報知によると、上野でパンダ関連の土産物を商う店主は「上野のシンボルはパンダ」と、都知事の発言に怒り心頭のようだ。

 一般の人はどうなのだろうか。パンダ死去前の調べではあるが、オリコンのランキングニュースの「上野特集」に面白い調査がある。「上野のイメージキーワード」として、「上野動物園」「アメ横」「上野公園」「西郷隆盛」「ABAB」に次いで「パンダ」が6番目にランクインしている。確かに上野の、そして上野動物園のシンボル的な存在であったのは間違いないようだ。

yd_ueno.jpg リンリン(出典:上野動物園)

 そもそも、パンダがやってきた72年当時の動物園は、動物の姿そのものを見せることを主旨とした「形態展示」がほとんどであった。そこに、白黒ツートンカラーで、ふっくらとした愛らしい姿のパンダが登場すれば、いやがうえにも注目される。また、日中友好のシンボルとして贈られた(当時はレンタルではない)パンダは破格の待遇が与えられ、飼育スペースで木に登ったりタイヤにじゃれたりする仕種で人気はさらに高まった。国民的に愛される存在としての地位をパンダは不動のものにしたのである。

 筆者が幼時に目にしたパンダは確かに珍しくも愛らしく、それは衝撃的であった。もっとも、初めて上野動物園に見に行ったときには見物客の頭しか見えなかったけれど。以来、筆者はパンダ好きである。だがしかし、「上野動物園にどうしてもパンダが必要」ということに関しては、疑問が残るのだ。

 パンダの仕種が観察できる展示スタイルは、今日の「行動展示」とも通じるものがある。その最たる例が、北海道の旭山動物園であり、「生き生きとした動物の姿が見られる」という人気から、上野動物園の来場者数を超える月も記録した。しかし、上野動物園も負けてはいない。同様な展示方法を取り入れ、現在ではゾウ、クマなどのポピュラーな動物までが、「ああ、こんな仕種をするのか」という発見を提供してくれている。

 石原都知事はこうも発言している。「何もパンダさまさまで、御神体じゃねえんだから。いてもいなくてもいいじゃない、そんなものはどうでも」。正に慎太郎節の真骨頂という所だが、パンダを「御神体」の如くあがめるのは、先の土産物の店主は売り上げに貢献するから確かだろう。しかし、一般人にとって、なぜ、そんなにありがたい存在となっているのだろうか。

 それは、72年という時代背景を考えてみるといい。当時は翌年のオイルショック前の、高度成長期最後の年だった。誰もが揃いのアーノルド・パーマーの傘マークが入った靴下を嬉しそうに身につけていたように、同じものを手に入れ、同じような行動を取っていた時代。パンダは、同じものに熱狂した当時の日本の残照なのではないだろうか。そして、「パンダを上野に」と望むのは、そんな時代のノスタルジーに感じられるのだ。

 今日、世は多様性の時代である。パンダが好きな人もいれば、パンダに関心がない人もいてもいいだろう。都知事のように。しかし、当の都知事こうも言う。「そりゃまあ、入場の人間が左右されるなら費用対効果を換算して考えればいい」。上野動物園は06年4月1日から指定管理者制度によって東京都建設局から「財団法人東京動物園協会」に管理主体が移行しているが、冷静な判断だと思う。

 日本に現在、パンダは8頭いる。年間1億円払って、中国から借りてくるのが正しいことなのか、もっと論議をした方がいいのではないか。

 最後にもう1つ。パンダ好きとしての立場から。リンリンの死後、パンダ舎に遺影を掲げ、記帳所を設けて死を悼むのはとてもいいことだと思った。しかし、その直後から、「死んでしまったから、代わりを中国から」というような動きは極めて残念だ。教育にもよくないと思う。絶妙のタイミングで中国・胡錦涛国家主席の来日があったから急な動きになったのかもしれないが、これだけは苦言を呈したい。

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